住みにくいのに人気集中・横浜市の魅力 | データで見る都市

2017.11.15

 江戸時代の開国以来、国際貿易港として発展をしてきた横浜市。370万人超の人口を抱え国内に20ある政令指定都市の中で最大の規模を誇ります。「SUUMO住みたい街ランキング 関東版」の<総合>で2015年から3年連続で3位。それ以前も、2014年こそ5位に甘んじましたが、他の年ではトップ3の常連です。

 横浜赤レンガ倉庫をはじめとした歴史的な建築物が多く残る一方、みなとみらい地区など近代的な街並みも存在し、新旧の良さを味わえる魅力的な都市と感じる人も多いのでしょう。

日本のトップブランド都市・横浜

 横浜は住む人が住所を聞かれた際に「神奈川県」ではなく「横浜」と答える人も居るくらい、全国レベルで通用するブランド力を持つ街です。しかし、これは単なるイメージだけの話ではありません。全国1位の人口の他に「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社)によれば事業所数は119,847で全国3位。労働力人口も1,738,600人で全国1位など、国内屈指の大都市と言えるのです。

 

 もともと新幹線停車駅も抱える交通利便性の高い街でしたが、2015年に開通した上野東京ラインによりさらにアクセスが良くなりました。これによって高崎・宇都宮方面からも横浜へ行きやすくなり、今後も訪れる人は減ることがなさそうです。

 人口の推移も平成22年から増加数が1万人を切っているものの、増加傾向が続いています。

実は住みにくい憧れの街

 このように、横浜は日本を代表する大都市のひとつではありますが、実は住みにくい街との評判が根強くあります。特に、子育て支援施策の手薄さが周囲の都市と比べて目立ちます。

 まず、特徴的なのが給食。横浜市では給食は小学校までとなっています。文部科学省の調べによれば、中学校の給食実施率は全国的に90%を超えている地域が多い中、横浜市は0%となっており、子育て世帯にとっては負担となっているようです。

 小児医療費の助成でも、他の地域に比べて手薄と感じる人が多いようです。例えば東京都の23区は中学生までの医療費が無料となっているのに対して、横浜市では小学1年生までが無料。しかも1歳以上の場合は所得制限があり、限度額を超える収入がある家庭は助成が受けられません。

 また、住民税が高いという声もよく聞かれます。住民税は各自治体共通で、以下の計算式により算出されます。

市区町村民税+都道府県民税
=(均等割3,000円+所得割6%)+(均等割1,000円+所得割4%)
※均等割とは所得に関わらず、所得割とは前年の所得に応じる税率。

 

 しかし住民税は「標準税率方式」であるため、財政上特別の必要がある場合は、各自治体で異なる税率を設定可能です。平成29年度の横浜市の市民税率を見てみると、以下のようになっています。

市民税(均等割4,400円+所得割6%)+県民税(均等割1,800円+所得割4.025%)

 

 実際、横浜市では標準税率よりも市民税の均等割が900円高く、県民税の所得割が0.025%高くなっているのです。

 これらのように、育児の自費負担や住民税などが他の地域よりも高いため、経済面において比較的支出が多くなる傾向にあります。この背景には人口第一位の大規模都市が抱える財政の厳しさがあるようです。

単身者が多く賃貸需要が高い

 こうした“住みにくさ”が影響していると考えられるデータがあります。横浜市は「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社)によれば、世帯数が1,700,088世帯で全国1位。世帯構成について国勢調査を基に平成7年と平成27年を比較すると、単独世帯以外の世帯数の推移が約117%であるのに対し、単独世帯数の推移は約167%と著しく増加しています。

 

 ファミリーよりも単身者の増加率が大きいのは、都内に大規模マンションが続々と誕生していることが影響していると考えられます。都内では2020年に向けて再開発プロジェクトが活発になっています。そのためファミリーが住まいの購入を検討する際には、横浜市の“住みにくさ”を避けて都内の物件を選んでいる可能性があります。

 一方で単身者が増えているということは賃貸需要の高まりを期待できるため、単身者向けのアパート経営などを考える際には魅力的な土地だと言えます。

 また、住人の年齢層について見ていくと区によって特徴があり、大きく2つに分けられることがわかります。横浜市統計ポータルサイトの「人口動態(平成28年中)」を見てみましょう。

 65歳以上の高齢者人口が区別人口に占める割合を比較した時、栄区(30.2%)を筆頭に、旭区(28.9%)、金沢区(27.8%)、港南区(27.6%)、泉区(27.7%)、瀬谷区(27.1%)などが、高齢者人口の割合が高い地域となります。これらは団塊世代と言われる人々が現役だった頃にベッドタウンとして開発された街です。そのため、当時から住み続けている人が多いと考えられます。

 一方で、都筑区(16.9%)、青葉区(20.6%)などの若い街は1990年代に開発された地域です。港北区(19.3%)や鶴見区(20.9%)、中区(20.0%)などとあわせて再開発で盛り上がりを見せており、若い人たちの流入が見られるということでしょう。

 賃貸経営や不動産投資を考える際にはこうした住人の傾向を踏まえ、建てる物件を計画する必要があります

再開発で盛り上がる中区

 横浜市では2020年を見据えて「エキサイトよこはま22」という再開発プロジェクトが進められています。横浜駅周辺、ポートサイド、みなとみらい、関内などのエリアに関して、「国際都市の玄関口としてふさわしいまちづくり」を目指した開発を行うとしています。

 これにあわせて、周辺の再開発も進められています。

 JR東日本では横浜駅西口開発ビルを建設し、2020年の開業を目指しています。地上26階建てで商業施設や業務施設が入る予定です。

 また、大規模な開発が進められている地区が、中区の北仲エリアです。横浜市庁舎の新設移転や馬車道駅直結の大規模タワーマンション、超高層ホテルなど、いずれも2020年の開業を目指して建設が進められています。

 これらの再開発によって新しいスポットも生まれるため、さらに人気の街として注目を集め、生産年齢人口の増加も期待できそうです。

 このように大規模な再開発が行われる土地は人が集まり、今後の賃貸需要の高まりなどが期待できます。そのため、アパート経営や不動産投資をしていく上ではこうした都市計画などを含め、都市の状況を観察することが大切です。

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最終更新日:2017.11.15

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