文化庁をも動かした、京都市の本当の魅力 | データで見る都市

2017.07.27

 京都府の府庁所在地である政令指定都市、京都市。多くの国宝や重要文化財などを有し、美しい自然と落ち着いた都市景観が魅力の歴史都市です。数度の分区や合併を経て、現在は以下の11の行政区で構成されています。

京都市は11区で構成されている

過去最高を更新し続ける観光客数

 世界に誇れる日本の観光地としても有名で、年間の観光客数がまだ4,000万人だった2000年に「観光客5,000万人構想」を立ち上げ、目標より2年早い2008年に5,000万人を達成しました。翌2009年に世界的な景気低迷と新型インフルエンザ発生の影響を受け観光客数が一時的に落ち込むことがありましたが、その後は順調に回復し、米国の旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー誌」が行う人気都市の読者投票で2014年から2年連続で1位を獲得すると、人気と知名度が一気に上がり、観光客数が過去最高を更新し続けています。

京都市を訪れる観光客数の推移
(出典:京都市「京都観光総合調査」(平成27年)より作成)

産業都市としての側面を持つ京都市

 京都市は794年に日本の首都になった平安京を基礎とする都市で、明治天皇が東京に行幸するまでの約1080年にわたり天皇家と公家が集住していました。今でこそ観光地としての側面が強く感じられますが、江戸時代は工業都市として知られたほか、京セラや島津製作所、任天堂やワコールなどの本社が集まる現代産業を支えている地域の一つでもあります。

 また、新しい産業創出に対しても積極的な風土を持っており、スタートアップ支援施設も数多くあります。中でもMTRL KYOTO(マテリアル京都)は3階建ての古民家をリノベーションしたコワーキングスペースで、レーザーカッターなどのファブ機材のほか、伝統工芸の素材も備えられ、京都らしく歴史と先端技術が混ざり合う場所として新たな魅力を生み出しています。

 現在、「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社)によると、事業所数は74,775で全国5位、上場企業本社数は53社で全国10位、さらに労働力人口は696,917人で全国7位と、どの数値も非常に大きな数になっています。歴史都市は、観光客を呼び込むだけではない、「地力」を持っているとも言えそうです。

 

産学公連携で新しい可能性を見せる学都

 また、京都大学や同志社大学をはじめとする大学・短期大学も多く、大学相互の結びつきを深め、経済界との連携を強める公益財団法人大学コンソーシアム京都を持っているのも特徴です。同法人は全国初となる大学連携組織「京都・大学センター」を起源とし、単位互換やインターンシップなど、先駆的な事業を展開してきました。

 他にも産学連携の動きは活発に見られ、さらに行政を巻き込んだ動きにまで発展しています。1989年に国内初の民間運営リサーチパークとしてオープンした京都リサーチパーク(KRP)は、「産学公連携拠点・新産業創出拠点」を掲げ、地元の大学や研究機関と共に地域産業の発展・活性化に取り組んでいます。先述の大学コンソーシアム京都も産業支援団体として名を連ねる本施設には、インターネットサービス企業のはてなやメールマガジンのプラットフォームとして知られるまぐまぐなど(現在は2社とも移転)、インターネットの発展とともに成長したスタートアップ企業が入居したことで知られています。

 学校、事業所の数が多いことから、交通網も発展しています。京都市内中心部である京都駅周辺はJR・近鉄、四条河原町周辺は阪急・京阪のターミナルと大きく2つに分散しており、京都市内を発着地とする中長距離バスも盛んで、その多くが京都駅をターミナルにしています。さらに、京都駅は京都府内だけでなく、大阪府北東部や滋賀県南部や奈良県北部への新幹線玄関口としての機能も持っています。コンパクトシティでありながら、他地域へのアクセスも良く、極めて利便性の高い土地といえるでしょう。

新産業で人の流入に多様性が

 不動産投資目線でいえば、民泊としても賃貸としても魅力的なエリアと言えそうです。実際、先述の「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社)を見ると、持家世帯比率は53.70%と全国で744位と低く、賃貸暮らしが多いことがわかります。

 現在の京都市は2010年に策定された2020年までの京都市基本計画に沿って行政が成されています。京都市は市民に占める納税義務者の割合や市の面積に占める宅地の割合が他の指定都市と比べて少ない(寺社仏閣などの存在もあり)ため、市民ひとり当たりの市税収入が他の政令指定都市と比べて少ないのが実情です。国からの地方交付税に多くを依存しているため、国からの交付が減少すれば財政は逼迫することになります。京都市では、この状況から脱却しようと動いているのです。

 中でも「新産業創造戦略」として、環境や健康、コンテンツ、観光、農林などの分野で付加価値の高い新産業を創造しようという取り組みは、若手のクリエイターなどを育てる「未来の担い手育成戦略」と共に注力されているようです。

 2017年(平成29年4月)には、文化庁の京都移転へ向けて、「文化庁地域文化創成本部」が京都市東山区にできました。数年のうちに、文化庁は京都へ全面移転をする予定です。

 文化庁の移転については、外交や国会対応、関係省庁との調整や政策企画立案などの業務についても現在と同等以上の機能とすることを前提とした上で、文化による地方創生や文化財の活用等、新たな政策ニーズへの対応などを進めるため、機能強化や抜本的な組織改編を行いつつ、数年のうちに京都に全面的に移転することとされています。
文化庁 「文化庁の京都移転と地域文化創生本部の設置」より

 

 こうなってくると、コンテンツなど文化面におけるクリエイターや企業、スタートアップなどは東京ではなく京都に集中する可能性も高くなってきました。観光都市京都ではなく、新しい人材の流入先としての京都市という姿も見えてきます。こういった背景から考えると投資先としての魅力も高く、多くの資金が集まりさらにこの勢いが増していくことも予想されます。今まで以上に目の離せない都市となっていきそうです。

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最終更新日:2017.07.27

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