若者の東京圏への流出が止まらない神戸市 | データで見る都市

2017.07.24

 横浜、神戸に住んでいる人は、自分の住んでいる場所を神奈川、兵庫とは呼ばず「横浜」、「神戸」と言う——このエピソードは有名ですね。このうち神戸市は兵庫県の県庁所在地で、垂水区、須磨区、長田区、兵庫区、中央区、灘区、東灘区、北区、西区から構成されている政令指定都市です。

 神戸港を有する港町で、2006年には神戸空港が開港し、陸海空で利便性の高い交通網を持っています。2008年にはアジアの都市で初めてデザイン都市としてユネスコにも認定されています。

住みやすい都市にも選ばれた神戸市

 神戸市は2012年に、スイスのECAインターナショナルが発表した「世界で最も住みやすい都市」で日本の都市で唯一トップ10に入り、世界全体で5位、アジア圏ではシンガポールに次ぐ2位に選ばれています。これは、世界400あまりの都市の生活水準について、気候や医療サービス、インフラ、安全性、大気品質などを指標として「最も理想的な居住地」を選出したものです。

 2012年のランキングは以下の通りです。

 

経済都市としても注目が集まる

 神戸市の事業所数は71,009で、全国7位。上場企業本社数は51社と全国で12位です。またそれを支える労働者数は694,563人で全国でも8位の人数を誇ります。(「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社))。企業目線であれば、豊富な労働力と空港などの交通利便性の高さは、大きな魅力になります。

 

 2017年5月には神戸空港の搭乗者数、搭乗率が2カ月連続で過去最高を更新し好調を維持する中、2017年8月の事業者決定を控えている空港運営民営化も着実に進んでおり、明るい話題も増えてきています。

 またこの空港運営民営化に合わせて、神戸空港全体の7割の便数を占めるスカイマーク社が国際線就航を求める動きもあり、これが実現した場合にはビジネス利用だけではなく、近年いわゆる“爆買い”などという言葉と共にその経済的インパクトが取り沙汰される、インバウンドの観光需要にも期待が高まります。

神戸市が抱える課題と取り組み

 神戸市は総合基本計画として2025年まで「新・神戸市基本構想」と「第5次神戸市基本計画」を実施しています。「新・神戸市基本構想」は、神戸の将来像を示すもので、「第5次神戸市基本計画」はその構想実現のために計画されているものです。

 最大の課題は日本全体でも言える人口減少です。神戸市でも2012年に総人口が減少に転じて、高齢化も進んでいます。年齢ごとの動きを見てみると、神戸市では多くの若者が大学入学時に流入し、就職時に転出している状況が見えてきます。

神戸市「神戸2020ビジョン(素案)」平成27年9月より作成

 人口が減少しているとはいえ、神戸大学を始めとした多くの有名校を擁する神戸市は、学生が多く流入していることがわかります。不動産投資の目線で考えると、学生向けのアパートなどの伸びしろがまだまだあるようです。人口減少とひとことで言っても、どういう層がそこに住み、暮らしているのかを分析することは大切です。

 神戸市では、実際「神戸2020ビジョン」のテーマを「若者に選ばれるまち+誰もが活躍するまち」としています。若者をより引きつけて、人口減少を防ごうという狙いが見えてきます。

 神戸市では、大学卒業後の25歳〜29歳の若い世代が東京圏へ流出していることを課題点としていて、創業できる環境づくりや就業機会の創出に積極的です。また、居住する町として神戸市が選ばれるために移住・定住にかかる取り組みも進めています。

 神戸市の全体目標としては、年間12,000の出生数を維持することと、若者の転入を増やし、転出を防ぐことを掲げています。

若い世代が集まる神戸市の将来像

 神戸市の持ち家世帯比率は57.60%と全国で704位と低く、賃貸で暮らしている人が多くいることも、不動産投資という視点では魅力的です。学生が大学に入学するにあたって来ているというだけでなく、働く世代も賃貸暮らしであることが多いといえそうです。

 2020年の神戸の姿は、神戸2020ビジョンの特設サイトでも描かれているように、三宮周辺にITビジネスや神戸を代表とする企業の本社が集積しており、神戸空港の機能拡充でグローバルに活動する人々が集まる——そして、そこから若い起業家達が生まれてくるというものです。

 また、新長田地区や市街地西部地域などの下町エリアを活性化させる取り組みもはじめています。東京でも、北千住が人気を集め始めていますが、若い世代にとって下町エリアというのは「新しいもの」として魅力的に映るのかもしれません。

 2020年までに大きくかわろうとしている兵庫県・神戸市。若い層をターゲットに魅力的な街づくりがどのように行われていくのか、注目していきたいですね。

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最終更新日:2017.07.24

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