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投資物件の「耐用年数」って何?|不動産投資基本の「キ」

2018.06.25

 不動産投資で収益を得るには、利便性の高い人気の立地に、ニーズのある建物を持つこと、つまり安定した入居率を目指すことが重要です。しかし当然ながら、それだけで不動産投資がうまくいくわけではありません。

 例えば、物件選びの際に忘れてはならないことの一つが「耐用年数」です。耐用年数のことをきちんと理解すれば、収益を上げやすい投資物件を見極める目を養うことができます。さらに、銀行からの融資を上手に引き出すコツや、税務の仕組みを活用してできるだけ多くのキャッシュを手元に残すためのポイントがつかめるかもしれませんよ。

「耐用年数」って何? 銀行も見ている重要ポイント

 耐用年数とは読んで字のごとく「物が使用に耐えられる年数」のことで、一般的に10万円以上かつ、1年以内に消費しない物について定められています。

 例えば車。個人事業主の場合、普通乗用車の耐用年数は定額で6年と決められており、300万円の普通乗用車を購入すると6年間に渡って毎年50万円を経費として計上することが可能です。

 見方を変えれば、購入1年後の普通乗用車の価値は250万円、翌年は200万円、さらにその次の年は150万円……と、毎年車の価値が下がっていくと考えることもできます。このように、年数を追うごとに価値が下がっていく物を「減価償却資産」と言うことも押さえておきましょう。

 耐用年数は素材や製造方法、使用方法などによって税法の財務省令で決められていますが、不動産も同様です。なお、財務省令に定められた耐用年数を「法定耐用期間」と言います。ここでは不動産投資の対象となる機会の多い、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨造、木造の耐用年数を比較してみましょう。

構造別 耐用年数比較表
(出典:国税庁HP「耐用年数(建物・建物附属設備)」より作成)

 ちなみに鉄骨造のうち、使われている鉄骨の厚みが6ミリメートル未満の物は軽量鉄骨造、6ミリメートル以上の物は重量鉄骨造と呼ばれています。

 鉄骨は税務上と建築基準上の境界が異なるため比較が難しいですが、おおむね法定耐用年数は長い順に、鉄筋コンクリート(RC)造>鉄骨造>木造となります。また、金融機関が不動産に融資する際は、耐用年数も審査対象にしています。例として築10年の鉄筋コンクリート(RC)造のマンション購入に対して融資を受けたいと考えた場合、金融機関はマンションを以下のように評価します。

法定耐用年数(47年) − 築年数(10年) = 残存耐用年数(37年)

 この場合、向こう37年は価値のある物件と評価されたことになります。37年が経過した後は、金融機関独自の基準で融資の有無、融資額、融資期間が決定されるのです。特に融資期間は残存耐用年数に比例することが多く、残存耐用年数を超えての長期融資を引き出すことは難しくなります。

 これまでの説明を読んだ後では、不動産投資では耐用年数が長い鉄筋コンクリート(RC)造を選ぶのが良いように感じられるかもしれませんが、実は必ずしもそうではありません。まず鉄筋コンクリート(RC)造は建設コストが高いので、取得費用自体が高額になりがちです。そして修繕も大規模になることが多いので、収益性は低くなる傾向にあります。

 一方、木造物件は建設や修繕、リノベーションも比較的容易かつ安価に抑えられるので、結果的に収益を上げやすいとされています。このように資産性や収益性、融資の引き出しやすさなど、どれに重きを置くのかで耐用年数との向き合い方が変わることも、不動産投資を行う上では知っておく必要があるでしょう。

“法定”耐用年数と“物理的”耐用年数は違う? 法律の落とし穴

 耐用年数についての理解が重要なことは、ここまで述べてきた通りです。しかしその数字だけにとらわれていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。“耐用年数はあくまで法律によって便宜的に定められたもの”と認識しておくことも大切です。

 そもそも「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が公表されたのは、昭和40年にまでさかのぼります。当時と現在とでは建築資材や技術、メンテナンスノウハウなどが比べ物にならないくらい進化しているのは言うまでもありません。

 今は当時に比べて耐震基準や防耐火基準等も非常に厳しくなり、建物の強度や安全性も格段に高くなっているので、使い方次第では耐用年数以上の期間にわたって建物を運用し、価値を保つことも可能です。事実、最近では耐用年数を超えた投資物件をリノベーションで生まれ変わらせ、入居率を上げたという事例も見られるようになってきました。

工夫次第で建物の実質的な寿命を伸ばすことは充分可能(画像はイメージです)

 しかし、逆にメンテナンスを怠れば、耐用年数以内でも人が住めないような建物になってしまうことも。そうした状態から復活させるとなると、大規模修繕が必要となりコストもかさむので、やはり日々の積み重ねが大事です。その点では、初めから耐久性に優れる物件を選んでおくと、後々のメンテナンスにかかるコストや手間を省くことができます

 不動産投資をスムーズに進めて収益を上げるには、物件の購入や入居率アップのための施策など“攻め”のアクションと、耐用年数の仕組みをうまく活用した税務対策やメンテナンスによるコストダウンなど“守り”のアクションのバランスを取っていくことが重要になります。慣れないうちは大変ですが、少しずつ学びながら長期的計画と幅広い視野を持って進めていきましょう。

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最終更新日:2018.06.25

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