活力に満ちた若者が牽引する、継続発展都市としての足立区|データで見る都市

2018.04.23

 昔ながらの商店街を中心に、下町風情が色濃く残る足立区。東京23区内にありつつも、どこか親しみやすさ・人情を感じさせる街です。独特の雰囲気に加え、地理的に埼玉県と隣接していることから、「ほぼ埼玉」と言われることも。れっきとした特別区の一つですが、いまひとつ都内での存在感を示しきれていない区、というイメージが長らく定着していました。

 そんな23区内における控えめな街・足立区は今、11年連続で人口が増加しています。2018年4月1日時点での足立区の人口は686,619人(足立区ホームページ「足立区の年齢別人口最新版」より)。2006年の624,365人(東京都総務局統計部「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」より)から、わずか11年余りで約55,000人も増えたことになります。

(出典:東京都総務局統計部「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」、足立区HP「足立区の年齢別人口最新版」より作成)

 特に増えたのが若い世代。2005年以降に5つの大学の誘致に成功したことを契機として、区内には多くの若者が住むようになりました。

 中でも、旭町商店街に代表される昭和のレトロな雰囲気漂う北千住エリアは、リクルート住まいカンパニーが発表した「みんなが選んだ住みたい街ランキング」2018 年版の「穴場だと思う街ランキング」で4年連続1位。オウチーノ総研が2011年に発表した「ひとり暮らしの働く女性が住みやすい街ランキング」でも1位を獲得しています。

 昔ながらの人情の街は、今まさに若者の熱い注目を集めるスポットに変貌しているのです。その人気の背景にはどのような要因があるのでしょうか。

便利で安全な暮らしを、低家賃で実現できる有望エリア

 数ある都内居住エリアの中でも、特に足立区が若者から支持される要因は主に3つ。

 一つは、家賃の低さです。大田区・世田谷区に次ぐ広大な面積を誇る足立区の土地代は、国土交通省の「平成29年地価公示」結果によると2017年総平均で23区内にいて最も低く、それに応じて賃貸物件の家賃も低い水準に設定されています。

 スーモジャーナルによると、一人暮らしの社会人シングルを対象に行われた「賃貸住宅での暮らし」というアンケート調査で、1人暮らしの20~30代が部屋探しで最重視するポイントは「家賃」であるという結果が出たそうです。まだ比較的収入が少なく、家賃を極力抑えたい若者層の賃貸ニーズを、家賃相場が低い特長を持つ足立区が満たしていると言えるでしょう。

 平成27年国勢調査によると、足立区の人口の約41.3%が単身世帯。また平成20年住宅・土地統計調査の「追加集計」結果によれば、日本の単身世帯の若者(30歳未満)は約90%が賃貸物件に住んでいるそうです。こうした数字からも、足立区が1人暮らしに適したエリアであることがうかがえます。

 二つめは交通面における優れた利便性です。23区最北端に位置する足立区は、地理的に都心各所から離れている印象を受けますが、実は公共交通インフラが充実していて、快適な移動を実現しています。

 鉄道網は東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)・大師線、JR常磐線、京成本線、東京メトロ日比谷線・千代田線、つくばエクスプレス、舎人ライナーの8路線で構成。東京や上野、渋谷といった都内の主要都市に乗り換えなしでアクセスできるので、通勤・プライベートの両面で便利に活用できます。

 加えて北千住駅、西新井駅、竹ノ塚駅、綾瀬駅など区内各駅を起点に8社のバスが運行しているので、区内外問わず快適に移動することが可能です。多様な移動シーンを支える交通網の存在が、若者のハートを掴んでいるのですね。

 そして足立区の人気上昇に大きく貢献しているのが、改善された治安です。冒頭でも触れた通り、かつて足立区は親しみのある人情の街という一方で、「ヤンキーが多い」、「犯罪が多い」といった治安面のネガティブイメージが根強くありました。

 そこで、自治体主導で真摯に治安改善に取り組んだ結果、警視庁の統計によると犯罪数は2011年の10,363件から2015年には6,937件と、およそ33%も減少。人口が増加する中での犯罪数減少という結果は、足立区のクリーン化を強く印象付けました。こうした変化は1人暮らしする上で治安を不安視する女性層への大きなアピール材料となり、「ひとり暮らしの働く女性が住みやすい街ランキング」の首位獲得につながったと言えます。

 このように、「家賃の低さ」「充実した交通手段」「安心できる治安状況」という3つのアピールポイントが、足立区の賃貸物件人気を支えているのです。

若者が集い、地域に活気が生まれ、街が発展する好循環

 10年以上にわたり人口増加を続けてきた足立区では、連動して都市機能も発展し続けています。北千住マルイ、アリオ西新井、ルミネ北千住など店舗面積10,000平方メートルを超える大型商業施設が続々とオープン。2014年には千住大橋駅前の地区整備計画区域内「ポンテグランデTOKYO」エリアに大型複合施設ポンテポルタ千住が開業するなど、区内全域の地域住民にとって買い物がしやすい生活環境が構築されています。

 また、こうした大型施設はファッションやレジャー関連のショップも充実しているので、足立区は居住エリアとしてだけでなく「遊べる街」としても認知度を高めています。

毎年7月に開催される花火大会「足立の花火」は区内外から多くの人が集まる人気イベント

 現時点でも発展目覚ましい状況ですが、今後もさらなる発展が見込まれています。2020年には文教大学の「東京あだちキャンパス(仮称)」が開設予定で、若者の転入により人口はさらに増えることが予想されます。

 交通面でも、2018年に東京メトロ千代田線北綾瀬駅のホーム延伸(10両編成に対応するため)が予定されています。この工事が終われば、北綾瀬駅から赤坂駅や大手町駅といったビジネス街、流行発信エリアの表参道駅まで直通で行けるようになるのです。着実な交通インフラの発展は、区民にとって居住メリットの向上につながることでしょう。

 一昔前の足立区といえば、お手ごろな物件を求める層から支持を集める「低家賃エリア」としての魅力のみが取りざたされてきました。しかし、都市の再開発や自治体による治安改善活動などの地道な魅力向上アクションを通じて、現在では多彩な魅力に富んだ「ブランドシティ・足立区」にまで発展し、賃貸物件に対するニーズも高まっています

 区内7エリアで大規模再開発が進んでおり、将来性も十分。個性豊かなエリアがずらりと並ぶ23区においても、発展著しく高い入居率を維持できそうな足立区は、不動産投資先として最注目株ではないでしょうか。

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最終更新日:2018.04.23

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