アパート経営のノウハウ

「空室率」って何?|不動産投資基本の「キ」

2018.03.30

 不動産投資において何より大切なのは、空室率を低く抑えて高い入居率を維持すること。不動産投資の醍醐味でもある月々の家賃収入を確保するには、人に住んでいてもらわなくてはいけませんからね。

 ところで、この「空室率」。不動産投資について調べていると頻出する言葉の一つですが、その意味を正しく理解していらっしゃいますか?

 もちろん、字面からおおよその意味や計算式は察せられると思います。ですが、不動産投資初心者の方の中には、より正確に物件の状況を把握するための計算方法や、地域ごとの平均空室率の調べ方をご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回は、簡単そうに見えて意外と奥深い「空室率」について見ていきましょう。理解を深めていけば、ご自身でこれから人気が出そうなエリアの“アタリ”を付けられるようになるかもしれませんよ。

「空室率」ってなに? より正確な分析をするには

 まずは言葉のおさらいをしておきましょう。「空室率」とは読んで字のごとく、全体の部屋数に対し、建物内で人が住んでいない部屋(=空室)が占める割合です。

 ちなみに、こちらもよく使われる言葉である「入居率」はその反対。全部屋数のうち、人が住んでいる部屋数の割合のことです。

 一般的に、空室率とは以下の計算式で算出された数値を指します。

一般的な空室率の計算方法

 ですが、この式で分かるのは調査した「その時」の空室率、言わば瞬間的な数値でしかありません。例えば、2月は6部屋全てに人が住んでいたのに、3月になったら3人出て行ってしまった……という場合、2月の空室率は0%。翌月3人が退去した後の空室率は50%になりますよね。調べるタイミングが少し異なるだけで、50%もの違いが生じてしまうのです。

 より正確にその物件の状況が知りたいときは、もう少し長いスパンでの空室率を調べる必要があります。方法はいくつかありますが、以下の計算式で全部屋の年間稼働状況に対する空室率を調べてみると良いでしょう。

年間稼働に対する空室率(%)=(空室数×空室月数)÷(全室数×12)×100

 例えば全6部屋中の2部屋が1年(12カ月)の中で2カ月間、1部屋が1カ月間空室だった場合、年間の稼働に対する空室率は次のように求めます。

(2部屋×2カ月+1部屋×1カ月)÷(6部屋×12カ月)×100=約6.9%

 この場合、入居率は93.1%になりますね。先に紹介した式で求められる瞬間的な空室率よりも、その物件の実情に即した数字を知ることができます。

 また、雑誌や新聞では空室率として「TAS空室インデックス」というものを採用していることがあります。

 TAS空室インデックスは少し特殊な計算方法で算出されているため、ここまでお話ししてきたような一般的な空室率と同列に比べることはできないので、注意してくださいね。気になる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

エリアごとの平均空室率、参考にする場合の注意点は?

 投資物件を選ぶ際、部屋の広さや設備の充実具合よりも先に注目しなくてはいけないのが、建物の立地。エリアを選ぶ際も、空室率が参考になります。

 エリア選びの参考になるのは、その地域のアパートやマンションの全戸数に対する平均空室率。総務省統計局のサイトで公表されている「住宅・土地統計調査報告」から求めることができます。収益物件を検索できるサイトの中にはこの統計結果を引用し、各地域の空室率を一覧で掲載しているものもあるので、こうしたサイトを参考にするのも良いでしょう。

 ただし注意しておきたいのが、この統計が更新されるのは「5年ごと」だということ。頻繁に更新されているわけではないので、「最新の情報ではない」ことを念頭に置いておきましょうね。

 エリア単体の数字を見るというよりは、全国平均や隣接エリアの数値と併せて参照し、相対的にお目当てのエリアの現状や将来性を判断するために用いるのがベストです。

空室率を見て、“掘り出し物”物件を見つける「目」を養おう

 都心をはじめ、人が集まる人気エリアほど空室率が低くなる傾向にあります。地域によって10%や20%も差が生じることはありませんが、その分、比較する際は数%の差も見逃せません。

 投資を検討しているエリアの空室率と全国平均を比べてみて、少しでも検討エリアの方が高かった場合は要注意。隣接する地域の空室率も含めて、再調査した方が良いでしょう。

 人気がありそうなエリアにもかかわらず空室率が高いということは、そこはもう既にニーズ以上のライバル物件が存在する“激戦区”である可能性があります。ライバルだらけの中でも着実に人を集められる勝算がある場合は別ですが、いずれにせよ極端に「供給過多」な地域は避けた方が無難でしょうね。

 このように、エリアごとの空室率を比較することで、おおよその需要と供給のバランスを予測することもできるのです。

 土地の価値や人気は様々な要因から決まります。空室率から全てが分かるわけではありませんが、頼りにできる指標は多いに越したことはありません。本当に価値あるエリアを探し出し、確保するのはプロの投資家でも難しいと言われますが、知識を身に付けることはプロへの第一歩です。

 まずは「駅から徒歩10分以内」、「再開発が進んでいる」、「大学や専門学校が多い」、「複数路線が交わるターミナル駅がある」などの高評価ポイントをチェックしつつ、自分なりに“狙い目”エリアを探してみてはいかがでしょうか。おおよその目星がついたら、そのエリアの空室率を全国平均と比較して「答え合わせ」をしてみるのがおすすめです。空室率への理解を深めると同時に、自分だけの“掘り出し物”エリアを見つける練習ができるはずですよ。

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最終更新日:2018.03.30

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