23区で唯一スタバがない荒川区、人口増加のふしぎ|データで見る都市

2018.02.27

 「スターバックス」というと、何となく都会的な印象を抱く方も多いと思います。そのイメージ通り、東京都に最も多くの店舗を置くスタ―バックスですが、実は東京23区の中で唯一、荒川区にだけは店舗が存在しません(2018年2月現在)。

 荒川区は、そこかしこに昭和の雰囲気を色濃く残すエリアです。日暮里駅前にはかつて、知る人ぞ知る駄菓子問屋街がありましたし、その名残か、今でも荒川や町屋を中心にもんじゃ焼き屋が多く残っています(もんじゃ焼きは昔、子どものおやつとして駄菓子屋で振る舞われていたそうです)。

 そんな、少し「レトロ」な区なのですが、東洋経済『都市データパック』2017年版によれば、国税調査を基に算出された人口増加率は4.41%。全国でも39位のハイペースで人口が増えているのです。

荒川区は 人口が増加し続ける注目エリア (出典:荒川区HP『荒川区の人口』 より作成)

 なぜ「23区で唯一スタバがない」街に人が集まるのか、その理由を見ていきましょう。

どこへ行くにもアクセス良好、コンパクトな区ならではの魅力

 荒川区の人口密度は19,132.48人/平方キロメートルで、全国3位。総面積10.16平方キロメートルと、23区中最も小さい区であることも、人口密度が高い理由の一つです。

 生産年齢人口比率は64.78%で全国36位。ビジネスマンも多く住んでいることが分かりますね。区内にあるJR山手線西日暮里駅から14分で東京駅に出られる上に、京成スカイライナーを使えば京成日暮里駅から最短36分で成田空港へ行けるアクセスの良さは、働き世代にとって大きな魅力なのでしょう。

 また、同区南千住駅に停車するつくばエクスプレスの沿線には筑波大学をはじめ、東京大学柏キャンパスや千葉大学柏の葉キャンパスなど、大学施設が多数存在しています。

 周辺の再開発がひと段落した同区町屋駅も、京成本線、東京メトロ千代田線、都電荒川線の3路線が乗り入れる、特に使い勝手の良い駅の一つ。お隣の駅は近年「穴場」として人気が集まる北千住です。

 加えて総面積が小さいこともあり、場所によっては電車を使わずとも、自転車で隣接する台東区や足立区の繁華街へ向かうことができます。ちょっと足を伸ばせば上野や北千住、スカイツリーやソラマチといった話題のスポットへ行けるのは、お買い物好きな女性にとってもうれしいポイントですよね。

 この絶妙な距離感はどこへ行くにも便利なため、幅広い層にとって非常に魅力的です。

物価や家賃が安く、若者が住みやすい街

 スーモジャーナルの「意外と住める? 山手線29駅、賃貸一人暮らしが安い駅ランキング」1~10位を見ると4位に西日暮里駅、6位に日暮里駅がランクインしています。比較的物価も安く、あちこちにスーパーや昔ながらの個人商店が点在しています。その上、前述の通り上野や北千住も近いため、日々のお買い物に困ることはまずないでしょう。

  また、つくばエクスプレス沿線のほかにも、荒川区には東京23区で2番目に大学数が多い文京区が隣接していますし、区内にも首都大学東京の荒川キャンパスがあります。学生からの賃貸需要はかなり高いと言えそうです。

 家賃や物価の安さは外国人からも支持されており、荒川区には14,576人(全国21位の人数)の外国人が住んでいる点にも、注目しておきましょう。

要注目、再開発が進む南千住

 2017年9月20日に東京都が発表した都内住宅地の基準地価によれば、上昇率トップは荒川区南千住。この事は新聞やテレビでも取り上げられ、その意外さが話題を呼びました。

 南千住は、古くは日光街道の宿場町「千住宿」として栄えた場所です。一説によると松尾芭蕉の『奥の細道』出発の地としても知られ、南千住駅の西口ロータリーには芭蕉像の姿も。

 かつては戸建て住宅が密集していましたが、再開発によって一帯の様子は大きく変わりました。特に汐入地区、南千住駅前は昔ながらの個人商店を残しつつも、高層マンションや大型ショッピングモールが立ち並び、綺麗に整備された住みよい街へと進化しています。

 

 荒川区は、日経DUALと日本経済新聞社が発表している「共働き子育てしやすい街2017」で総合ランキング全国11位に入るなど、ファミリー層からの評価が高いことでも知られています。

 中でも南千住には区内で一番大きな公園である汐入公園もありますし、駅周辺には子育て層をターゲットとした商業施設が集まっています。人口が増え続ける荒川区の中でも、特に若いファミリー層を中心に人気のエリアなのです。

 さらに、南千住駅に乗り入れる路線はJR常磐線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレスの3路線。交通の便が抜群に良いことも、再評価につながったのだと考えられます。投資を考える際、南千住周辺は一考の余地があると言えるでしょう。

 どこへ行くにもアクセス良好で、物価も安い荒川区。再開発が進み整備された箇所と、どこか昭和の雰囲気を残る懐かしい箇所とが入り混じる、気取らない魅力の街です。

 「都心は何となく冷たい印象がして気が引ける」という地方出身者の方にも住みやすい荒川区は、今後いっそう注目が集まっていくことが予想されます。

 今、最も「アツい」荒川区で収益物件を探す際は、他のエリア以上に注意深く地価の変動を追っていく必要がありそうですね。

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最終更新日:2018.02.27

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