
世界と東京の「橋渡し役」としての発展を目指す品川|東京大改造
江戸時代の五街道のひとつ、江戸と京都を結んだ東海道。東京都品川区は、街道第一の宿場町「品川宿」を置き、“東海道の玄関口”として多くの人々で賑わった歴史が息づいています。現在は、高層ビルが立ち並ぶ都内有数のビジネス街・商業地として発展し、JR品川駅には東海道新幹線や山手線などが走り、江戸時代から長い年月を経た今でも交通の要所としても機能。再開発地区も多く住環境も整備されており、居住地域としての人気も高まっています。
「仕事」「日常生活」「レジャー」に対応する万能型都市
品川区は品川地区、大崎地区、大井地区、荏原地区、八潮地区の5地区で構成されます。区内には品川駅や臨海部を中心にオフィスビルが並ぶ他、東海道品川宿の街並みや寺社・仏閣が残っており、先進性と伝統を併せ持っている点が特徴です。加えて戸越銀座や武蔵小山、中延などの昔ながらの商店街、大井ふ頭中央海浜公園や京浜運河緑道公園をはじめとした大規模な都立公園など生活するうえで必要な施設・環境も充実しています。歴史スポットや自然が広がる公園だけでなく、しながわ水族館や品川インターシティなどレジャー施設も魅了。先進的な施設の誕生は、子どもから高齢者まで幅広い層が楽しめるエリアへと押し上げました。
交通面では、JR品川駅に東海道新幹線や山手線をはじめ、京浜東北線、総武線などが乗り入れることから都心・副都心、隣接県からのアクセス環境が良好で、さらに羽田空港から東京駅に向かう訪日観光客の動線上にあることから、品川駅に立ち寄る機会にも恵まれています。今後、少子高齢化が進む中で経済発展の一翼を担うのは、外需のインバウンド観光であり、羽田空港からの訪日観光客を取り込みやすい立地は大きなメリット。こうした住環境の利便性の高さや経済面での発展も見込めることもあり、品川区の人口は年々増加(2017年:382,761人)。品川区では今後も人口は増加していくと予測しています。(※)
東京オリンピックやリニア開通などを見据えた、中心地の進化
日本における今後の重要トピックスとして挙げられる「東京オリンピック」や「リニア中央新幹線開通」にも、品川区は東京の主要都市として大きく関わっていきます。2020年の東京オリンピックの開催に合わせて、山手線の田町駅・品川駅の間、品川駅の北に位置するJR東日本・車両基地跡地には「品川新駅(仮称)」が新設予定。山手線の駅としては1971年開業の日暮里駅以来の新駅誕生となります。新駅を中心とした13ヘクタールの広大な土地を活用する計画は、2017年3月に制定された「品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン」で開発概要が定められ工事が着工。新駅は羽田空港につながる都営地下鉄泉岳寺駅にアクセスしやすく、開業後は1日あたり平均2万人、まち完成時には13万人の乗車人数を見込んでおり、品川区を一層活気に満ちたまちへと後押しします。駅舎デザインは新国立競技場を手がけた建築家・隈研吾氏を起用し、日本伝統の建築様式や装飾を施すなど、新たな区内観光の核としても注目を集めています。新駅開業後は隣接してオフィスビルやホテルの建設を進め2024年にまちびらきをする予定です。

さらに、2027年に予定される品川駅・名古屋駅間リニア中央新幹線の開通と同時期に、品川駅周辺を再開発する計画が構想中。国土交通省・東京都が計画する「国道15号・品川駅西口駅前広場整備事業」では、国道15号上の空間に新設する駅前広場を隣接する民間の再開発ビルと接続する他、京急品川駅の改良・駅ビル開発を検討されています。さらに、大規模複合施設「SHINAGAWA GOOS(シナガワ・グース)」の再開発を行い、敷地面積約25,000平方メートルにオフィス、商業施設、ホテル、住宅、そして新たに設置される駅前広場は国際会議などのイベントを開催できる仕様にすることで、羽田空港と東京駅の交通結節点として国際化にも対応していく見込みです。
こうした国際的・歴史的取り組みに大きく関与している品川区に対し、都内の企業もビジネス拠点として注目。現時点でも、品川駅東口からスカイウェイで直結している品川グランドコモンズをはじめ、オフィス棟と飲食・商業棟を併設する複合施設が並ぶ品川駅東口周辺には、仕事に関わる事柄をワンストップで完結できることから国内外の一流企業がオフィスを構えています。
この先10年にわたって新駅の開業、品川駅周辺で再開発が行われることは、都内・都外からのアクセス性向上やオフィスビルの新設によるオフィス開設を希望する企業の増加につながり快適に暮らすうえでの交通・商業施設といった生活インフラが一層充実することで居住希望者も今後増えていくと思われます。現に、2016年から2017年にかけて新規賃借の際の希望エリアとして品川駅周辺を挙げる企業は増加しており、数々の計画が着実に進行することでさらにオフィスの賃貸需要は高まるのではないでしょうか。
築き上げてきた歴史・環境が産み出す、まちへの愛着
現在、品川区では「品川駅南地域まちづくりビジョン」をもとに、将来的なまちづくりが進行しています。品川駅周辺の再開発による恩恵を中心地だけでなく隣接地域にも好況にも波及させるべく、今後は品川駅南地域を拠点として大崎や五反田、天王洲など周辺地域と連携することで広域的なエリアを形成。品川駅の副都心・周辺地域にアクセスする際の利便性の高さを生かし、エリア内を観光客が周遊する仕組みづくりを目指していきます。
同ビジョンでは、品川駅が担う東京の交通拠点としての役割を果たしつつ、地域に息づく伝統文化を生かし賑わいを生み出し、そして子供から高齢者までが安心して生活できる快適なまちづくりにも着手。この活動は自治体だけが推進するのではなく民間企業や商店主、地域住民も関与。多様な考え方が反映される体制は、皆が主導的に活動に取り組む姿勢を醸成し、ビジネス街・観光地としての発展一辺倒ではなく、住民が長く住み続けたいと思えるまちづくりにつながります。
ここで挙がる「長く住み続けたいと思えるまち」とは、生活インフラが充実した環境、歴史文化、自然景観が共存している将来像を指します。東京オリンピックやリニア中央新幹線に関わる品川駅周辺の再開発に注目しがちですが、品川区としては江戸時代から地域のシンボルとして受け継がれる宿場町の街並みや地域住民に親しまれているさまざまな商店街、区内各所に点在する自然豊かな都市型公園など現代の住みよい環境をベースと保ちつつ、地域全体でのさらなる発展を試みています。現時点でも都内の主要都市として高い存在感を示していますが、近い将来、世界と東京を結ぶ重要拠点、そして地域住民が快適に暮らせる環境づくりが実現することで、より誇りと愛着の持てるまちになることでしょう。
※ 出典:品川区の統計 2017(平成29)年 -第56回- 人口 より