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「住みたくない街」からの卒業・池袋の本気|東京大改造

2017.12.15

 新宿、渋谷に続く東京副都心、池袋。皆さんはどんなイメージを持っているでしょうか? ドラマ化もされた人気小説『池袋ウエストゲートパーク』(著・石田衣良)の影響か、あまり治安が良くない街、というイメージの方も多いのではないでしょうか。

 実際のところ、白昼にギャングが闊歩しているなどということはありませんが、池袋は駅のどの出口から出るかでガラリと印象の変わる街。待ち合わせ場所として人気の「いけふくろう」やサンシャインシティがあり、若者が集まる東口エリアと、東京芸術劇場があり件の小説の舞台でもある西口エリア。そして雑居ビルの多い北口エリアではそれぞれ活気や治安、夜の雰囲気に至るまで、まったく異なります。

 

 そんな、場所によっては少し雑然とした印象のある池袋がある豊島区は、実は平成26年5月に日本創成会議・人口減少問題検討分科会の推計による「消滅可能性都市」に選ばれてしまった過去があります。しかしこれを受け、豊島区は早急に対策を講じます。同年8月には女性による区政改革を行うための「としまF1会議」を設置。その後も子育て世代への予算を強化するなど、次々と制度面での改革を行なっています。

 さらに、都市計画の面でもさまざまな改革が行われており、2020年を目処にした再開発が着々と進行中です。具体的には、現存する4つの公園の開発を中心とした「劇場化」計画が豊島区主導で進められており、街の様子も少しずつ変化してきています。

 以前は「住みたくない街」として挙げられることも多かった池袋ですが、今年は「2017年HOME’S住みたい街ランキング」で、恵比寿や吉祥寺などの人気エリアを抑えて1位に輝いたことでも話題となりました。東京でも代表的な街の一つでありながら住みたくない街として挙げられていた池袋が、今改めて住みたい街として注目されるエリアになってきたのはなぜなのでしょうか。

 今回は、上で挙げた4つの公園の改修計画を中心に、池袋がどのような姿に変化していっているのかを見ていきましょう。

「危ない」象徴から本格的な野外劇場へ。生まれ変わる池袋西口公園

 2017年9月6日、豊島区区長は池袋西口公園を大改修し、クラシックコンサートやミュージカル、演劇やバレエなどの公演ができる円形の野外劇場にすることを発表しました。同公園は2019年秋までに約1500人を収容できる大規模劇場として整備され、広場としての日常利用の他、災害時には救援物資の配給拠点として使われる予定とのこと。また、目の前にある東京芸術劇場とも調和のとれたデザインになるようです。

 『池袋ウエストゲートパーク』の舞台としても有名な池袋西口公園。公園というよりはイベント広場といった様子で、小説やドラマのファンからは「聖地」として親しまれていました。しかし裏を返せば、ある意味全国的に有名な池袋の「治安の悪さ」の象徴でもあったということです。ここを劇場へ改修することで従来のイメージを払拭し、街全体の印象を「アート・カルチャーの中心地」にふさわしい形へ整えていく狙いもあるのでしょう。

 この野外劇場は池袋駅西口エリアの再開発においても、豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市」構想においても、要の一つとして非常に重要視されています。

サブカルの中心地として盛り上がりそうな「Hareza池袋」

 一方東口方面では、中池袋公園と豊島区庁舎跡地に豊島公会堂跡地、そして新区民センターが含まれたエリアが「Hareza(ハレザ)池袋」と名付けられ、2020年夏に向けて大規模な再開発が行われようとしています。

 Hareza池袋には10スクリーンを有するシネコンや多目的に使用できる大小のホールを始め、特徴とされる「8つの劇場」がオープンする予定で、豊島区が目指す「誰もが主役になれる劇場都市」を具現化する「文化にぎわい拠点」となる予定です。

 池袋のランドマークであり若者が集うサンシャインシティからも近い同エリアは、近年ではアニメやコスプレファンの女性が集まるサブカルチャーの一拠点として、海外からも注目を集めています。Hareza池袋にも、最新技術やインターネットを駆使したバーチャルキャラクターによるライブパフォーマンスなど、幅広いコンテンツの発信ができる劇場が「8つの劇場」の1つとしてオープンすることになっています。

 開発が進めばサブカルチャーの中心地として、ますます若者に人気のエリアとなりそうですね。

豊島区内最大面積の公園が誕生、造幣局跡地公園

 サンシャインシティに隣接し、現在は更地となっている造幣局地区(造幣局跡地)。全部で3.2ha(ヘクタール)あるこのエリアのうち、西側0.5haは隣接する密集市街地の解消に向けたまちづくり用地として活用されることになっています。

 残りは1haが東京国際大学の池袋国際キャンパス(2023年9月に開校予定)として利用され、全体のほぼ半分を占める1.7haは防災公園として整備される予定です。

 完成したら、区内最大面積の公園が誕生することになります。この広さを活かし、災害時は救援物資の搬入や集配拠点としてだけでなく、ヘリポートとしての利用も想定されています。道路が使えない際はヘリコプターを使って傷病者を搬送したり、物資の搬入をしたりできるという訳です。

 また防災公園の基本的なプランをまとめるに当たっては、様々な視点からの意見を集めるため、計画地の周辺住民や識者によるワークショップが行われていました。そこでの意見をまとめた資料を見ると、平時も単なる「イベント広場」的な公園ではなく、四季折々の緑や花があふれる豊島区のシンボルになるよう、期待を寄せられていることが分かります。

 現在も大変に人通りの多い地域ですが、ここへ広大な緑地公園や大学ができるとなると、行きかう人々にも多少変化が見られそうです。豊島区が目指す、「文化的な街」という印象付けにも一躍買ってくれそうです。

リニューアル完了! 池袋再開発の象徴、南池袋公園

 池袋駅と新庁舎との中間にある、南池袋公園。2016年4月、一足先に再開発が終わっています。以前はお世辞にも居心地が良いとは言い難く、治安もあまり良いとは言えない場所でした。リニューアルオープンにより青々とした芝生広場やお洒落なカフェレストランは大好評で、Free Wi-Fiも完備。「都会のオアシス」との呼び声も高く、既に人気スポットの一つとなっています。

 災害時は帰宅困難者の一時退避場所としての利用など、防災拠点の一つとしても機能するよう作られています。カフェレストランも、災害時は炊き出し支援を行えるよう想定されているそうです。

 また、南池袋公園は「大田楽いけぶくろ絵巻」を皮切りに、日本の伝統芸能を発信する場としても利用されています。再開発の鍵である「劇場」の一つとして数えても良いのかもしれません。

 お洒落で明るく、清潔感があって、人によってはちょっぴり“意識高い”系と感じるかもしれません。いずれにせよ、この公園を見れば、豊島区が思い描く再開発後の池袋の姿が、なんとなくイメージできるような気がします。

豊島区『豊島区広報パンフレット(平成29年3月発行)』より作成

 このようにまだまだ再開発の途上とはいえ、目指す方向性がはっきりしていて、行政による力の入れ具合も伺い知れる池袋エリア。伝統芸能からサブカルチャーまで、あらゆる文化の発信基地として整備されていくのが楽しみですね。

 現状は裏通りや北口方面など、治安に不安が残るエリアも存在します。一方で池袋には、山手線沿線エリアの中では家賃相場が比較的安めという魅力も。交通の便が良く、全国的にネームバリューのある駅であることを考えると、意外に思う方も多いのではないでしょうか。

 この付近は立教大学以外にも学習院大学、学習院女子大学、早稲田大学、日本女子大学といった有名大学の本部キャンパスが密集しており、各学校間の交流も活発に行われています。早稲田、池袋、目白は昔からこうした学生からの賃貸需要が高いエリア。学生需要を狙うなら、池袋はまさに狙い目と言えるでしょう。

 また若い女性から人気なのは、学習院大学や日本女子大学がある雑司が谷方面の南側エリア。目白の高級住宅地に近く、夜の歓楽街からはほどほどに距離があるため、治安や騒音の面を気にする層から支持されています。安全面を売りにした、女性専用の物件などは歓迎されそうですね。

 「住みたい街」ランキング1位に輝き、再開発が進む池袋。これからますます若者人気が高まっていくと予想されます。アパート経営を考える際も、再開発後の姿を見据えて計画を立てる必要がありそうです。

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最終更新日:2017.12.15

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