
東北最大の経済都市と「学都」、二つの顔を持つ仙台市 | データで見る都市
東北唯一の政令指定都市、宮城県仙台市。伊達政宗ゆかりの地としても有名です。名所や旧跡、レジャー施設も多く、観光地としても人気の都市です。毎年行われ、夏の風物詩となった七夕祭りの他、最近では人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の舞台として各種イベントが行われ、話題を呼びました。
東日本大震災で甚大な被害を受けた地域の一つでもありますが、現在急ピッチで復興が進んでいます。「東日本大震災 仙台復興のあゆみ」を見ると、震災の起こった平成23年には1,621万人にまで落ち込んだ観光客入込数も、平成27年には2,229万人になっています。平成22年が1,979万人だったことを踏まえると、震災前を上回る勢いで回復していることが分かります。
また仙台市は、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が実施する「世界防災キャンペーン『災害に強い都市の構築』」において、日本では兵庫県に続き2例目の「ロール・モデル都市」に認定されています。仙台市が震災前から進めてきた防災への取り組みや、復興事業が世界的に評価されている証拠でしょう。
人口に関しても増加傾向にあり、「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社)で仙台市は「成長力」の項目で全国総合5位と高く評価されています。
緑に囲まれた観光都市
仙台は東北地方における経済や行政の中枢都市であるため、日立製作所や富士通など、様々な企業の東北支社が集中しています。
一方で古くから市が掲げている「杜の都」というキャッチコピーの通り、青葉通りや定禅寺通に代表されるような街路樹が立ち並ぶ道路や緑地公園、森林公園が配置され、緑豊かな都市づくりに力が入れられています。

さらに秋保温泉や大崎八幡宮、ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸溜所や仙台アンパンマンこどもミュージアム&モールなど、幅広い世代が楽しめるレジャー施設が揃っていて、観光地としての魅力も十分。
「三大仙台名物」として有名な牛タン、笹かまぼこ、ずんだ餅以外にもアワビや芋煮会などの山の幸や海の幸、日本酒にウイスキーなど、「ご当地グルメ」も豊富です。
若者が集まる「学都」仙台
仙台市は旧帝国大学である東北大学を中心に、多様な教育機関が集積する「学都」としても知られています。東北大学は半導体工学者として著名な西澤潤一氏や、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏など、日本を代表する研究者を多数輩出しています。
「データ仙台2017」によれば2016年5月1日時点で学校数は427、在学者数は200,014人。本務教員数は14,766人。
人口に対する学生の割合も多く、「仙台市まち・ひと・しごと創生総合戦略(人口ビジョン及び総合戦略)」によれば、人口1,000当たりの学生数は68.3人で、指定都市の中では京都市(106.1人)、福岡市(73.6人)に続いて3番目に多い結果に。市が掲げる「学都仙台」の名に恥じない結果となっています。

さらに人口あたりの若者(15歳〜29歳の)割合は19.1%と、指定都市の中では福岡に次いで2番目に高く、これは東京23区(17.2%)よりも高い数値です。学生の多さがそのまま、若者の多さにつながっているのでしょう。
イノベーションを生む都市づくり
1889年の市制施行以来、仙台市の人口はほぼ一貫して増加傾向にあります(「データ仙台2017」)。また、仙台市の事業者数は49,777で、こちらは全国9位。それに比例して労働力人口も多く、504,146人と全国11位につけています(「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社))。東北内だけでなく、全国的に見ても大都市であることが分かります。

しかし仙台市の「仙台市まち・ひと・しごと創生総合戦略(人口ビジョン及び総合戦略)」によると「東北各地の若者が10代後半に転入し、20代の就職機に転出するという社会動態の中で、本市にとどまった若者によって支えられてきた側面が強い」とされています。増加傾向と言ってもほぼ横ばいな現状を鑑みて、近く大多数の都市と同様、減少に転じる日が来るという予想もあります。
そうした人口減少を防止する対策の一環として、仙台市は地域経済の中心である中小企業を活性化し、企業や創業を促すための取り組みを行っています。仙台市が2020年まで重点的に取り組むとしている3つの施策(「仙台市政策重点化方針2020」)の中でも、「社会のイノベーションを生み人口減少に挑むまちづくり」が掲げられています。
加えて、仙台市は2015年8月28日より国家戦略特区(第2次指定)に指定されていて、「女性活躍・社会起業」のための改革拠点とされています。
それを裏付けるように民間でも「INTILAQ東北イノベーションセンター」など、起業家支援を行う施設の開設やイベント、セミナーなどが盛んに行われており、仙台のIT企業が中心となり全国からIT系著名人を東北大学に集めて「仙台IT文化祭」というユニークな催しも行われました。
既出の通り多くの企業の東北支社が集まる仙台ですが、就業人口構成を見ると80.52%が第3次産業となっており、これは全国で第3位の数字です(「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社))。同地域に学校が多数存在していることからも、仙台には最新の技術や研究が集結していると言うことができるでしょう。
ちなみに、昨今安価で品質の良い「ジェネリック家電」で注目を集めるアイリスオーヤマの本社は1989年12月から今まで仙台市に置かれています。こうした地元に根付く先端企業を生み、育てることができるかどうかが、仙台市の今後を大きく左右しそうです。
世帯数は多いが持家比率は低め
仙台市の人口は、現在1,082,159人で全国11位(「都市データパック2017年版」(東洋経済新報社))。世帯数も多く、488,650世帯で全国11位。
しかしその割に持家世帯比率は低めで、48.0%に留まります。1世帯あたり人員も2.13人と少なく、全国で783位。学生や単身者が多いことが予想できます。さらに住宅地地価は86,700円。都心への距離感が仙台と近い名古屋が174,600円であることを踏まえると、大分安価と言えますね。
これらの数字から、仙台ではマイホーム需要よりは、学生や転勤、長期出張中の単身者などによる賃貸住宅需要が多いことを伺い知ることができます。アパート経営や不動産投資を考えた際も、大変魅力ある都市と言って良いでしょう。
東北最大の経済都市、仙台。今後さらなる発展を遂げられるかどうかは、いかに周辺地域から集まった若者を流出させない仕組みづくりを構築できるかどうかにかかっていそうです。