資産運用

老後を変えるために、モノの価値とお金の価値を考え直そう

2017.09.27

 物価の上昇は「お金の価値の目減り」を意味します。モノの価値が上昇し続けると、同じ金額で買えるものモノの量が減ってしまうため、実質的にお金の価値が減少したことになるからです。

 たとえば、仮に日銀が目標として掲げている年率2%で物価上昇が進むと、現在1,000万円の価値は5年後に約906万円、10年後に約820万円になります。「リテラシー不足で102兆をタンスに溜め込む日本の残念ぶり」にあるように、ただお金を持っていても、物価が上昇すれば目減りする一方です。

物価上昇率が2%での実質的価値の試算

 老後のためにしっかり貯金と思っていても、物価が上昇していけば、貯めたお金の価値が下がり思ったとおりの老後の資金計画ができなくなってしまいます。

老後の将来設計:フローとストックに分けてみる

 老後、安心した生活を送るために、将来の計画を練ることはとても大切なことです。このとき、役立つのがビジネス用語の「フロー」と「ストック」です。ビジネスのスタイルは大きく分けるとフロービジネスとストックビジネスに分類できます。

 フローは「flow=流れ」という意味です。都度都度の取引で収入をあげていくスタイルのビジネスを指します。例えばコンビニエンスストアなどの小売店が代表的です。コンビニエンスストアで、おにぎりを買う(買ってもらう)。これによりおにぎりの売上げが入ります。

 フロービジネスは取引が一度きりなので、その顧客からの継続的な利益は得られません。常連さんになってくれることはあっても、それは商品を都度都度売って利益を得ているということなので、継続的とは言えません。

 実は会社員として働くこともフロービジネスに近いといえます。会社員は労働を会社に提供する代わりに、給料をもらいます。会社員にとっての商品は労働、そして売上げは給料ということです。

 このように、フロービジネスの「商品」はプロダクトだけではなく労働であったり、マッサージなどのサービスなど広範囲にわたります。

 一方、ストックは「stock=蓄える」という意味で、契約を結ぶなどし、継続的な利益を得るスタイルを指します。例えば、みなさんも持っているであろうスマートフォンは通信事業者との契約によって継続的に利用を可能としています。その対価として、私たちは通信事業者にお金を継続的に支払い続けます。

 部屋を賃貸で借りていれば、その部屋を継続的に利用するために、オーナーに対して賃料を支払い続けます。これも、またストックビジネスです。

 これらはビジネスの観点ですが、これを自分自身の中にはめこんでみましょう。たとえ話としては、株式投資が分かりやすいかもしれません。

 株式投資におけるフロービジネスは、株の売却益などがあてはまります。株を都度売買することで、利益を得ていきます。デイトレーダーなどはその最たる手法といえそうです。

 一方、株式投資におけるストックビジネスは、配当金と言えます。配当金は、企業が出した利益の一部を株主に還元するものですが、株を保有していれば還元を受け続けることができます。

 老後の将来設計を練っていく上で、大切なのは資金計画の何割をフロービジネスとし、何割をストックビジネスとしていくのかなど全体の配分を考えていくことです。

 例えば、仮に手元に1,000万円があったとして、そのうち500万円をオンライントレードで売却益目当てで運用し、残りの500万円を配当金や株主優待目当ての株を購入しておくといったことです。

老後向きの「ストックビジネス」の考え方

 しかし、いま30代や40代の働き盛りであれば、日々株の運用をしたり、会社員で働き、給与をもらったりといったことはできますが、老後にこうしたエネルギーは持てるでしょうか?

 フロービジネスの辛いところは、都度の取引になるので、その取引に対して何かしら細々とした労力が発生するということです。

 そこで、老後に向けた計画では、ストックビジネスを学ぶことがおすすめです。フロービジネスの代表格としてあげたコンビニエンスストアですが、その大もとであるフランチャイズ会社は「仕組み」だけで収益をあげつづけるストックビジネスといえます。お店の建っている土地が賃貸であれば、その土地の所有者は継続的にコンビニエンスストアのオーナーから賃料を受け取ることができます。これもまたストックビジネスです。

コンビニに見るストックとフローの違い

 ストックビジネスの考え方は最初に先行投資をして、あとはじっくり回収していく傾向が多いといえます。回収できるお金は先行投資した額や質によって変わってはきますが、決してすぐに利益がでるようなものではありません。じわじわ、ゆっくりです。

 たとえば、不動産でマンションを一部屋買った場合、その先行投資を家賃で回収するのには時間がかかります。それでも、いずれ投資額よりも回収額が上回ることを期待して、多くの人が投資としてマンションを買います。

 マンションを持っているということは資産があるということなので、いざとなればその資産を売却することもできます。

 アパート経営なども同様です。1〜2年で利益を得るのではなく10年、20年という目線で先行投資し、資産づくりをしていくというのがストックビジネスの考え方といえるでしょう。

 サラリーマンの多くは、このストックビジネスに対する経験値が圧倒的に低いのが実情です。なぜなら、先述した通り、ストックビジネスを行うには当初に相応の投資なり、用意が必要になることがほとんどだからです。その結果、ストックビジネスをしたくても、できないというケースが多いのです。

 裏を返せば、老後に向けた将来設計を練るのであれば、自分たちでもできるストックビジネスに絞って探してみるのも手です。慣れていない分野にこそ、将来を安心にできる材料が眠っているかもしれません。

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最終更新日:2017.09.27

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