日本人が本当に考えないといけない2022年問題

2017.05.31

 2020年――東京オリンピック開催年でもあるその年は、マイルストーンにしやすいようです。「2020年には」「2020年までには」などという言葉が、様々なところで踊っています。しかし、ポジティブなイメージの強い2020年の2年後、大きな問題があることに目を背けてはいないでしょうか?

 一般に、1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24年)に生まれた戦後世代を「団塊世代」と言います。第一次ベビーブーム世代で、この3年間の年間出生数は260万人を超え、合計出生数は約806万人(厚生労働省「平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況」)にのぼります。

 これがどのくらい多いのかというのは、2016年の年間出生数を見れば一目瞭然です。厚生労働省が公開した「平成28年(2016)人口動態統計の年間推計」によると、2016年の出生数は100万人を割り、98万1000人。半分以下になっています。

2016年の出生数は100万人割れ

 

出生数は100万人を割り、死亡者は増え続けている(厚生労働省「平成28年(2016)人口動態統計の年間推計」より)

 人口の分布図を見ても、1947年〜1949年この3年間に生まれた数が突出しています。その下で伸びているのは、彼らの子供世代である第2次ベビーブーム世代です。

第1次ベビーブーム(団塊世代)のピラミッドと第2次ベビーブームが突出

総務省統計局「日本の統計 2017」より

 今では想像できないかもしれませんが、団塊世代の学生時代、1学年2桁のクラス数で、1クラスあたり60人くらいでぎゅうぎゅうだったと言います。競争も当然激しく、「今でも受験のことを夢で見て飛び起きる」という人がいるくらいです。

他人ごとではない父親世代の「持ち家」をどうするのか?

 

 1970年代になると、団塊世代では結婚する男性や子供を産む女性が増えていきます。お見合いではなく恋愛で結婚することが多かった彼らは、これまでのように両親の家の中で結婚生活をするのではなく、家を出て新たな家庭を作り出します。これが当時の住宅不足で、その対策として大都市の近郊には団地が造成されました。

 家を買う人も多く、たとえば都内に会社のある人は、その近郊に家を建て生活の拠点を作り出します。これがベッドタウンと呼ばれる場所が誕生したきっかけです。団塊世代にとって大都市は働きに行く場所であり、その近郊にある持ち家は専業主婦の妻が守り、子育てをしていく場所でした。

 し烈な競争の中を生き抜いてきた団塊世代は、現在、前期高齢者(65〜74歳)であるのにもかかわらず元気いっぱいです。高級車を買い、海外へ旅行に行くなどおう盛な消費欲で日本の経済を少なからずけん引してきています。しかし、彼らも年齢には勝てません。オリンピックが終わって2年後の2022年、彼らは後期高齢者(75歳以上)になります。これが2022年問題です。

 日本の医療制度で高齢者を前期と後期の2つに分けているのは75歳を境に、身体機能の衰えが著しくなるからです。一般的に65歳に比べ75歳では歩行能力が半分程度になってしまいます。こうなると、彼らのおう盛な消費欲や行動力もさすがに消えていくでしょう。そして、残るのは彼らが築いた「築40年の持ち家」です。

みんなと同じタイミングで動いては、みんなと同じものしか得られない

 団塊世代の子供たちは都市へ住む層です。都心のタワーマンションなどに住むことが多い彼らにとって、両親の住むベッドタウンの一戸建ては「帰省する場所」。暮らす場所ではありません。

 団塊世代がいつか子供が住むからと、ローンを払い続けた「郊外一戸建て」は、誰も住まない家になりかねません。実際、団塊世代が高齢者施設へ入居したあと、こうした無数の「郊外一戸建て」はどうなるのでしょうか?

 戸建て住宅も当然老朽化していきます。マンションのように管理費や修繕積立金を毎月取られるようなことはありませんが、管理や修繕は必要で、当然お金もかかります。建物だけではなく、庭のメンテナンスなどもあります。管理コストはばかになりません。

 2022年、この問題は多発することが容易に想像できます。なにしろ団塊世代の数は多いのです。それだけ「家」の問題も起きます。みんなと同じタイミングで動いていては、みんなと同じようなものしか得られません。投資の神様と言われるウォーレン・バフェットは「みんながどん欲な時に恐怖心を抱き、みんなが恐怖心を抱いている時にどん欲であれ。(Be fearful when others are greedy and greedy when others are fearful.)」と言っています。多くの人が気づくよりも前の今こそ、2022年について考えるべきなのです。

 まだ需要がある今のうちに家を売却してしまうのも手です。仮に需要がそれほどなかったとしても、なんとなく持っているというだけでは先述の管理コストの問題から、損が増え続けていきます。資産だと思っていた不動産が、負債になってしまったなんてことも考えられます。こういう場合は、いっそ手放してしまい、新しい資産計画を立てた方がいいのではないでしょうか。

 また、このような状況を利用し、相続や節税効果についてのみを謳いながら、収益性を度外視したプランで、アパート経営を呼びかける業者が増えているため、資産計画の立て方にも注意が必要です。アパート経営は立地選定や物件の質を高める努力をしながら、高い入居率を維持することで長期的な利益を確保できます。資産計画の選択肢としてアパート経営を検討する場合は、こうした努力を怠らない確かな業者をパートナーとして選ぶ必要があります。

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最終更新日:2017.05.31

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