「利回りの良さ」だけに
目を奪われてはいけない

2017.05.11

 アパート経営で目を奪われがちなのが「利回りの良さ」です。しかし、この利回りには盲点があります。

購入時の利回りは継続的なものか

 アパート経営は、家賃収入を得るために人に借りてもらわなければ始まりません。しかし、入居者を求める住居の供給は多くなってきており、入居希望者はより良い条件を求めて物件を選べるようになっています。

 特に日本の場合、新築物件は人気。それがたとえ「安い立地&建物」の物件でも、新築なら当初入居者を集めやすいのです。初期投資が安く、新築で賃料が相場通りで満室ともなれば、当然、利回りは高くなります。でも、ちょっと待って下さい。

 アパート経営は「継続」していくものです。最初に貸して終わりというわけにはいきません。新築当初、入ってくれた入居者も永続的にいるわけではありません。新築でなくなり、空室が発生、新たに入居者を募集した場合、あまり立地のよくない場所で、安く建てたアパートに人は集まってくるでしょうか?

「利回りがいい」という言葉に騙されずに、上記のような目線でしっかりと考えることが、大切と言えるのではないでしょうか。 継続的に高い入居率を保つことで、利益を生み出し続ける事ができるのです。

必要なのは、立地選定とその立地に合ったアパート

 利回りだけを見れば、部屋の面積が小さいほうが条件は良くなります。同じ延床面積でも部屋が小さければ部屋数を多くできるので、当然利回りが高くなります。

 しかし、部屋の面積と家賃は比例しません。たとえば40m2で家賃相場が8万円のエリアだからといって、20 m2にして家賃は半分の4万円になるかというと、そうはなりません。入居者はそんな計算だけで物件を見ているわけではないからです。

 価格相応の広さだといっても、必要な広さがなければ入居はしてもらえないのです。利回りの高さばかりに目を向けていると、実は延床面積と部屋数で割ると、1部屋あたりの面積が驚くほど狭かったということもあります。

高利回りを見込んだ狭小部屋の失敗例

 大切なのは、「どこに建てるか」という立地選定と、その立地に合った「アパートを建てる」ということです。たとえば、都心で大学などが多くある場合は、比較的狭いアパートでも学生などが入居するケースは多くあります。でも、これが郊外でベッドタウン的な場所だったら? 求められるアパートは違ったものになってくるはずです。

「高利回りにひかれて購入したが、立地が悪くて人が集まらない」では本末転倒です。

継続的に家賃収入を得るために入居者ニーズを捉える

 立地に加えて入居希望者のニーズを捉えるということも忘れてはなりません。ライフスタイルが多様化している現代。特に若者たちが物件に求めるものは、多岐に渡ります。情報が溢れ、選択肢も多い現代の若者たちは、一昔前に比べ優れたデザインを目にする機会も増えています。アパートを選ぶ場面でも、同じようにデザイン性の高いアパートが人気で、中でもデザイナーズアパートは根強い人気があります。

 また、最近は“モノの消費”から“コトの消費”へ移り変わっていると言われ、体験が重視される時代です。目に見えるデザインもさることながら、目に見えない使い勝手などの観点からも、ニーズを検討する必要があるでしょう。

 例えば、日頃持ち歩くスマートフォンも日本ではApple製品が人気で、そのシェアは海外の平均1〜2割程度に比べて5割程度と高い人気を誇っています。Apple製品のシンプルで洗練された製品デザインもそうですが、スマートフォン市場を長らく牽引してきた、Appleならではの使いやすさ、つまり優れた体験デザインが人気を支える大きな理由でもあります。

 これはアパートでいうところの居住性にあたり、充実した設備の物件に人気が集まるのはもちろんのこと、間取りという観点でも、限られた土地の中でも空間の自由があるロフト付きの部屋は、オーソドックスな1Kタイプに比べ人気があり、多様化するニーズに応えられる物件と言えるでしょう。

 今はネットで容易に情報が得られる時代です。他の物件と比較された上で、選んでもらえるような物件にする必要があります。アパート経営を始めるにあたっては、利回りだけでなく、継続的に家賃収入を得られる物件かどうかを見極めなければなりません。

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最終更新日:2017.05.11

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