アパート経営を引き継ぐ場合の注意点

2024.01.10

 アパートを経営していたオーナーが亡くなった場合、その土地や建物は財産として配偶者や子などに相続されます。賃貸アパートを相続することには多くのメリットがある反面、注意しておきたいポイントもあります。この記事ではアパートを相続し、経営する際の流れやメリット&デメリットを解説します。

アパートを相続するときのフロー

 自身でアパートを購入する場合と異なり、相続する場合は準備期間が十分でないため、戸惑ってしまうことがあるかもしれません。いざという時に備えて、アパートを相続する時のフローを確認しておきましょう。

1.アパートの資産価値、ローンなどの返済状況を確認する

 まずは相続する予定のアパートがどのような財務状況になっているのかを確認しましょう。アパートを相続するとき、被相続人が団体信用保険などに加入していないと、ローンの残債を負債として相続しなければならないケースがあります。アパートの価値に対して残債があまりにも多い場合には、相続放棄する手段もあります。ただし、一度放棄してしまうと二度と相続できないので慎重な判断が求められます。

2.アパートの管理状況などを確認する

 次にアパートの状態を確認し、どの程度の資産価値があるのか、相続した後にどの程度の修繕費用を見積もっておけば良いのかを見積ります。大規模な修繕が必要な箇所がある場合には、その費用を見積もっておかなければなりません。修繕費用などは現金が必要であるため、遺産の中からその費用を捻出できるかも確認しておきます。

3.相続人を決定する

 被相続人の配偶者や自身の兄弟など、相続人が複数いる場合には「遺産分割協議」を行います。アパートは現預金などの金融資産と違い、家賃収入という収益を生み出し続ける財産です。単純に分割することは難しく、早計に判断するとトラブルにつながり兼ねません。そのために現在の資産価値や残債、将来の収支をできるだけ正確に見積もる必要があるのです。「アパートを誰か一人が相続し、他の相続人には相当分の代償金で支払う」「アパートを売却して現金化し、分割する」「複数人の協働名義として家賃収入を都度、分配する」といった方法があります。ただし共同名義にした場合、将来的に売却する際には相続人全員の合意が必要となります。

4.相続登記する

 相続人が決まったら、不動産の登記を被相続人から相続人へと変更する「相続登記」を行います。現段階において相続登記は義務ではありませんが、2024年4月1日から義務化されることになりました。期限は「遺産分割協議の成立日」から3年以内、協議自体の期限は被相続人が亡くなってから10年が限度です。もっとも、相続登記をしなければアパートの家賃収入を受け取ったり、売却したりできないため、現段階でも相続登記の手続きを行うことは必須です。

5.金融機関や保険会社に連絡する

 ローンを支払っている金融機関や契約している保険会社などに、契約者の名義が変わることを通知し、手続きを行います。ローンの名義を変更するには、改めて審査があります。ただし、被相続人が団体信用保険に加入していた場合には残債が保険によって支払われるため、ローンは残りません。

6.相続税の申告・確定申告を行う

 遺産を相続すると、相続税が発生します。不動産は固定資産税と同様、路線価などを元にして評価額が決定され、その金額に応じた相続税を支払います。相続税の申告期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内。ローン残債がある場合は、評価額から残債分を引いて計算されます。

ただし、相続税には基礎控除額があり、相続する財産の総額が 「3,000万円 + 600万円×法定相続人の数」を下回っている場合は支払う必要がありません。さらにアパートの相続税については優遇措置があるので、後ほど詳しく説明します。

また、被相続人が亡くなった日までの確定申告(準確定申告と呼ばれます)も、被相続人に代わって行います。準確定申告の期限は相続が決まってから4か月以内です。

7.不動産会社や入居者に連絡する

 相続の手続きが一通り終わったら、アパート管理に関わっている不動産会社や管理会社、入居者たちにオーナーが変わったことを連絡します。

 家賃の振込先が前オーナーの銀行口座の場合、亡くなった人の口座は凍結されてしまうため、しばらくの間、引き出せなくなってしまう可能性があります。また入居者間のトラブルなどに素早く対応するためにも、関係各所への連絡は早めに行うようにしましょう。

アパートを相続するメリット

 アパートを相続する第一のメリットは、資産価値の高さです。アパートは入居者がいる限り、永続的に家賃収入をもたらしてくれる資産。居住用住居などの不動産を相続しても売却しないと家計へのメリットはありませんが、アパートは毎月の家計に大きなゆとりをもたらしてくれます。被相続人がローンを完済していた場合、または団体信用保険に加入していて相続人が残債を支払う必要がない場合、前述の基礎控除額によって相続税を支払う必要がない場合は、特に収益性の高い資産となるでしょう。

 また、相続税を支払う上でのメリットも決して少なくありません。その理由は不動産の評価方法にあります。現預金などの資産を相続する場合は、金額ごとに定められた税率の相続税を支払いますが、土地や建物などの評価額は実際の価値よりも低く見積もられるケースがあり、節税につながります。

 さらにアパートを相続する場合、「借家権割合」が利用できます。これは居住用住居に比べ、アパートなど賃貸物件は自由に売却しにくいために儲けられている優遇措置。「建物の評価額から30%分を引いた金額」で評価されるため、納める相続税が少なくて済みます。

アパートを相続する際の注意点

 アパートを相続するとき、注意しておきたいポイントもあります。ひとつは法定相続人間のトラブルです。前述の通り、アパートの資産価値を正確に見積もることは難しいため、分割協議する際に誰にどの割合で分割し、どのように運用するかが最大のポイントとなります。不動産価値や現在の家賃収入だけで判断せず、ローン残債や修繕費用、家賃の下落幅など将来のキャッシュフローも想定した上で、各人が不平等を感じないよう分割競技を行うのが望ましいところです。

 アパートの資産価値に対して残債が多いケースや、地域の賃貸ニーズが少なく、空室が目立つケースの場合には売却や相続放棄を検討する必要があるかもしれません。アパートを売却して現金化した後、新たに条件の良い賃貸物件を購入するのも一案です。

 また、仮に前オーナーである被相続人が順調に賃貸経営を行っていたとしても、相続人が同じように経営できるとは限りません。アパートを経営するには不動産の知識やノウハウ、きめ細かな管理が求められます。将来、もしもアパートを相続する可能性があるなら、今から勉強を始めておくべきかもしれません。

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最終更新日:2024.01.10

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