資産運用

アパート経営は他人資本で投資ができる

2023.09.21

 「他人資本」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 融資や他者からの借入金などで調達した資本のことで、対義語は「自己資本」です。アパート経営など実物不動産投資では、他人資本を上手に使うことで利益をより大きくできます。他人資本を使うメリットは何か、他人資本を使う上で気を付けたいことを解説します。

他人資本を活用することでレバレッジ効果を大きく

 賃貸物件を購入する際、多くの方は自己資本に加えて、銀行などからの事業用融資やアパートローンを利用するでしょう。自己資本だけでは足りないから……という理由かもしれませんが、実は融資などの他人資本を利用した方が、不動産投資においては有利です。

 たとえば手持ちの資金が2000万円あるとした場合。自己資本だけで2000万円の物件Aを購入した場合と、自己資本に他人資本の3000万円をプラスして5000万円の物件Bを購入した場合では、一般的に後者の方が利益は大きくなります。

 これはどういうことでしょうか? A、Bともに表面利回り10%とした場合、Aの年間収益が200万円なのに対して、Bは500万円とBの方が300万円も多いことになります。融資額3000万円を30年かけて返済すると仮定し、金利は固定で3%、元利均等返済とした場合、毎年の返済額はおよそ152万円なので、融資の返済金額を差し引いたとしてもBの方が圧倒的に有利です。

 自己資金だけで投資するよりも、融資を利用して投資額を増やす方が大きな収益を得られるのです。これは「レバレッジ効果」と呼ばれるもの。「レバレッジ」とは「てこ」のことで、てこを使うと小さな力で大きな物を動かせることから、このように呼ばれています。

 このように他人資本を積極的に活用して利益を一層多くできることが、株式など金融投資と実物不動産投資の大きな違いです。不動産はそれ自体が担保になるため、金融機関などから比較的低利子の融資を取り付けやすいのも特長と言えるでしょう。なお、賃貸物件の購入を目的としている際には通常の住宅ローンではなく、金融機関ごとに用意されているアパートローンや事業用ローンを利用します。

FXで他人資本を使う場合との違いは?

 自己資金拠出額に対する純利益の割合の(当期純利益÷純資産合計×100)ことを、自己資本利益率(ROE)と言います。この数値が高いほど他人資本を上手く活用できていることになり、投資効率が高いと判断されます。不動産投資だけでなく、ビジネス全般においても他人投資の活用は欠かせません。株投資の世界ではこのROEを参考に、投資先を選ぶことがあります。

 一方で、「総資産全体のうち、自己資本の比率が高いほど経営安定性が高い」とも言われます。一見、矛盾していることのようですが、どちらも真実。安定のためには自己資本が、成長、発展のためには他人資本が重要ということです。

 そして他人資本を活用することには、自己資本を温存できる、というメリットもあります。先ほどの例で言うと、5000万円の物件を購入するために2000万円の自己資金すべてを投下してしまうより、フルローンを組んで自己資金を温存しておいた方が安心でしょう。賃貸経営は比較的リスクの少ない投資ですが、それでも火災や自然災害、事故などのトラブルによって一時的にキャッシュフローが悪化してしまうリスクはあり得ます。そんなとき、自己資金がゼロでは対処できません。リスクに備えるためにも、他人資本を活用すべきなのです。

 さて、ここまで不動産投資における他人資本の利点を解説してきましたが、実は金融投資の中にも他人資本を活用できるものがあります。その代表例がFX(外国為替証拠金取引)。FXは「最大で自己資金の25倍まで他人資本を利用してレバレッジを利かせることができます。そのため少額から投資を始められる」という特徴があります。

 しかしFXは価値変動が極めて大きく、一瞬で大きな利益を上げることもできる反面、大きな損失を被ってしまうリスクがあります。そこにレバレッジが加わることで、リスクはさらに拡大する可能性も……だからこそ最大で25倍までという制限が加えられていると考えるべきでしょう。

 さらに、証拠金(取引に必要な自己資金)が4%を下回りそうになったとき、追加の証拠金を入金しないと強制的に決済される「強制決済」や、損失が一定水準を超えそうなときに強制的に取引終了となる「ロスカット」といった独特のルールがあり、取引を面倒なものにしている欠点もあります。

 ご存知のように不動産投資の場合は自己資金比率に制限がなく、フルローンで物件を購入することも可能。リスクは他の投資方法に比べて小さく、ローリスク&ロングリターンな投資と言われています。万一、キャッシュフローが悪化したとしても最終的に建物や土地などの資産が残るため、負債だけが残る……といった事態にまで陥ることはあまりありません。

 資産価値を維持するためには物件のメンテナンスや入居管理が不可欠ですが、外部に委託することが可能。確実に資産形成するにはぴったりの投資方法と言えるでしょう。

他人資本を活用する上での注意点

 ところで、他人資本を利用する上でのデメリットや気を付けるべきことはないのでしょうか? 実は前述のレバレッジ効果が有効に働かない、かえって不利になる状況が存在します。そのひとつが、「利回りが悪化したとき」。利回りが悪くなり売上が少なくなると、融資返済額に圧迫されてレバレッジが機能しません。また「借り入れ金利が上昇したとき」も同様です。つまり、利回りと借り入れ金利の差が少ないと、他人資本をうまく活かせないのです。

 もっとも、日本では低金利が続いているため、一般的な賃貸物件ならレバレッジ効果を打ち消してしまうほど利回りが悪化する状況はあまり考えられません。

 ただし、「デッドクロス」には注意が必要です。「デッドクロス」とは経年によって減価償却費が少なくなることにより、帳簿上では黒字になっているにもかかわらず、実際の経営状況は赤字になってしまう状態のこと。減価償却費が実際にはお金の出入りが発生しない帳簿上のみの金額なのに対して、融資返済額の元金は実際の支出なのに帳簿には記載できない、そのギャップから納税額が上昇するために、このような現象が生じます。

 「デッドクロス」による黒字倒産を避けるためには、融資の返済方法を元金均等返済にする、減価償却を定額法にする、減価償却期間の長い新築物件を選ぶ、などの対処法を講じる必要があります。以下の記事も参考にしてください。

参照:黒字倒産になるアパート賃貸経営のデッドクロスとは

 このようなポイントを押さえながら他人資本を積極的に活用することで、不動産投資の収益性を大きく伸ばせます。自己資金の少ないサラリーマンに適した投資と言われるのは、そうした理由があるからです。

 シノケンはこれまで不動産投資未経験、自己資金の少ない方のアパート経営を数多くサポートしてきました。金融機関からの信頼も厚く、収益性の高い物件として高い評価を得ています。

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最終更新日:2023.09.21

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