アパート探しはSNSから? Z世代の部屋選び

2023.09.15

 アパート経営をする上でメインターゲットとなるのは、主に“Z世代”と呼ばれる若い年齢層です。インターネットが普及して以来、部屋選びには物件検索のできるウェブサイトやアプリが主流となってきましたが、Z世代はSNSこそ最も身近な情報手段。今回はSNSを活用した入居者募集対策について解説します。

部屋選びに動画を活用するユーザーも

 部屋探しの際に内見した物件数の調査では、2000年代初頭、平均5件ほどだったのに対して、今では平均3件以下にまで減っています。(「2018年度賃貸契約者動向調査」株式会社リクルート住まいカンパニー調査 https://www.suumo-research.com/research/2019-9-24)不動産ポータルサイトなどが発展し、現物を見なくても写真で判断できるようになった影響が大きいことは間違いないでしょう。

 ハウスコム株式会社が行った「2023年度“部屋選び”に関する調査」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000029713.html)では、Z世代のユニークな動向が明らかにされました。部屋選びの際に利用したメディアや情報源を尋ねた項目に対して、1位が「物件検索ができるウェブサイト」、2位「物件検索ができるアプリ」、3位「不動産仲介会社などの店舗(相談や内見)」だったのは他の世代と同様ですが、4位「SNSいずれか」と答えた人の割合が他の世代よりもかなり多かったのです。

 「SNSいずれか」の中での内訳では「YouTube」が1位。一般的な不動産ポータルサイトでは見られない、動画からの情報を重視した結果と推測できます。2位は「Instagram」、3位「Twitter(X)」、4位「TikTok」という結果でした。おそらく、部屋選びの際にSNSを重視するユーザーは今後もっと増えていくことでしょう。

SNSで物件情報を発信するメリットは?

 賃貸物件情報をSNSで発信することには、不動産オーナーにとってどのようなメリットがあるのでしょうか? 以下のようなメリットが期待できます。

・潜在顧客にもアピールできる

 不動産情報誌や不動産ポータルサイトは現在、賃貸物件を探している人しか見ませんが、SNSなら不特定多数の人たちに向けて発信できます。「今すぐではないが、将来手的に引っ越しを考えている」「もし今よりも良い物件があれば、引っ越しても良い」と考えている潜在顧客にもアピールできるのです。

・ユーザーとの接点を増やせる

 SNSは通常、個人のアカウントと紐付けられているため、不特定多数のユーザーに向けて広く発信するだけでなく、個人に向けて特定のメッセージを送ることができます。ユーザ−がわざわざウェブサイトを訪れたり、メールを開いたりしなくても情報を受け取れるため、スピーディなやり取りが可能です。「検索していた物件に空室が出ました」などの情報を送る際にはとても便利な機能でしょう。

・ハッシュタグでターゲットを明確にできる

 多くのSNSメディアではハッシュタグを利用できます。ユーザーはハッシュタグ検索することで求める情報を見つけやすくなり、発信側としてはターゲットを絞った情報を発信することができます。

・掲載する情報量に制限がない

 不動産ポータルサイトでは通常、掲載できる写真点数や文章量がある程度決まっていますが、SNSには制限がありません。動画も発信できます。ちなみに前述の調査で、不動産ポータルサイトやアプリについて不満に感じることを尋ねた項目では、「物件の広さがイメージしづらい」、「物件の中身がイメージしづらい」、「物件の周辺環境が分からない」といった声がありました。間取り図や写真に加えて動画を活用すれば、そうした点をカバーすることができます。

 つまり、入居者募集にSNSを利用する最たるメリットは「ユーザーとのつながりを深められる」「ファンを獲得できる」ことです。不動産情報誌や不動産ポータルサイトに掲載される情報は、どの物件も一律で差別化することは困難。しかしSNSなら、物件が持つ魅力をありのままに発信でき、関心を持っているユーザーを囲い込みやすいメリットがあります。

メディアの特性を理解した情報発信を

 ひと口にSNSと言っても、今では数多くのメディアがあります。賃貸物件情報を発信するにあたっては、各メディアの特性を理解した上で、ターゲットや目的に合わせた発信手段を選ぶことがポイントになります。

 たとえば、「YouTube」は比較的長めの動画を発信する際に適任。駅からの道のりや物件周辺の雰囲気を伝えるにはもってこいでしょう。「LINE」は情報交換頻度が高く、スピーディにやりとりする際に便利。「Instagram」や「TikTok」は利用者に女性が多く、ビジュアルを重視したデザイン物件の情報発信、短い動画の発信に適しています。「Facebook」は実名性が高いため、精度の高いターゲッティングが可能。年齢層が比較的高く、ビジネス上の情報交換手段として利用している人も多いため、物件売却を考えている際にも活用できます。イベント情報なども専用ページで告知でき、参加の可否などを取りまとめられるのも魅力です。

 また、多くのSNSは物件専用のページやアカウントを作れるだけでなく、広告にも対応しています。閲覧履歴などから興味関心の高いユーザーがマッチングされるため、ターゲット層に情報を届けやすいのがSNSで広告を掲出する利点。雑誌広告やTVCMよりも広告掲載料が安いのも魅力と言えるでしょう。

 これまで物件情報を発信するには、賃貸情報誌や不動産ポータルサイトに掲載するしか、ほぼ手段がありませんでした。前述のとおり、既存メディアも相変わらず利用率が高いため、そこでの露出を止める必要はもちろんありません。ただ、今後はそれらに加えてSNSでの情報発信がより一層重視されるようになります。所有する物件の魅力を高めるとともに、情報を誰に、どのように伝えるか、そうした魅力の伝え方にも工夫が求められる時代になってきました。

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最終更新日:2023.09.15

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