投資的観点からも改めて注目される木造建築の良さ

2023.08.17

 伝統的な建築方法である木造。鉄骨造、RC造など他の工法と比べても様々なメリットがあります。実際に、日本の住宅においては多くが木造です。住まう上で利点が多いだけでなく、不動産投資の視点からも木造建築は有利となっています。木造建築に投資するメリットを解説しつつ、木造建築の新たな需要を考えます。

暮らしやすく、建てやすい木造住宅

 日本では古くから建築資材として木が使われてきました。欧米で発展してきたレンガ造り、鉄骨造に比べて木造は日本の住環境に適していたからに違いありません。木造建築は伝統的な工法ですが、近年、その価値が見直され、技術的にも大きな進化を遂げています。2022年4月、大林組が自社研修・宿泊施設として高さ約44.1m、11階建ての「純木造高層ビル」を横浜市で完成させたことをご存知の方は多いでしょう。2025年の大阪万博では、会場のシンボルとなる巨大な大屋根が木造で建築されることも発表されました。さらに海外でも、RC造と鉄骨造を組み合わせることで39階立ての超高層ビルを作るプロジェクトなどが既にスタートしています。

 木造建築には数多くのメリットがありますが、最も代表的なものは資材の軽さと建築コストの安さでしょう。

 木造建築の中にも在来工法(軸組工法)、2×4工法などの種類がありますが、コストの安さは共通するメリットです。木造は鉄骨造やRC造などと比べて構造体が軽く、基礎工事費用、土地改良費用などを低く抑えられる利点があります。また、鉄骨造では建築資材に予め防錆処理などを施さなければなりませんが、木造の場合は必要ありません。

 木材には天然の調湿効果があり、湿度の高い日本の住環境に適していることもメリットのひとつ。さらに設計の自由度が高く、自由な間取りを実現しやすいことも大きな利点です。

 木より鉄の方が頑丈と思われがちですが、実は耐久性においても木造は有利です。同じ重さの資材で比べたとき、圧縮・引っ張り比強度において木は鉄の約2倍もの強度を備えています。だからこそ地震大国・日本で古くから建築資材に木が使われてきたのです。

 一方、木造建築で建物を支えるには多くの柱や梁が必要であり、柱のない大空間を実現しにくいのがデメリットと言われてきました。しかし、最近では建築方法の進化により、そうしたデメリットが解消されつつあります。

 鉄骨造に比べて耐震性などに不安を覚える方がいるかもしれませんが、それは設計と施工方法次第。たとえばシノケンでは全ての建物に対して必ず地盤調査を行い、地盤の性質にあった適切な対策工事を実施。そのうえで土地の底面全体に鉄筋コンクリートを打ち込む「ベタ基礎」構造を採用することで、高い耐震性を実現しました。

 また耐火性においても、ある程度の厚さ・太さがある木材は表面に炭化層ができ、それ以上は燃えにくく強度も低下しにくい、という性質をもっており、鉄骨造よりもむしろ有利です。

不動産経営を考える上でも木造はメリット大

 このように日本の住環境に適している木造建築ですが、不動産投資の観点からはどうでしょうか? 

 前述した建築コストの安さは、不動産投資においても非常に有利です。初期投資が少なくて済むことで、自己資金による支出、融資の借り入れを低く抑えることができるのは、その後のキャッシュフローを健全に保つ上での大きなメリットとなります。アパート経営など実物不動産投資のハードルを下げてくれる効果もあるでしょう。

 また、面積あたりの建築コストを低く抑えられることは、当然ながら家賃設定にも影響します。賃貸経営において最も懸念すべきは空室リスク。投資スタイルにもよりますが、建築コストを抑えることで周囲の物件よりも家賃を低く設定することができれば、空室リスクは自ずと下がるでしょう。特に賃貸需要の高い若年層にアプローチするには、家賃を少しでも下げる努力が求められます。

 そしてもうひとつ、税金面でのメリットも決して軽視できません。一般的に木造建築は鉄骨造、RC造に比べて固定資産税を安く抑えることができます。固定資産税で建物の評価額を計算するには、年数の経過によって生じる価値の減価を表す「経年減点補正率」が用いられますが、木造建物と非木造建物では計算方法が異なります。たとえば施工から10年経過している建物の場合、非木造建物では補正率約74%で計算されますが、木造建物では50%にまで下がります。最大補正率である20%まで低下するのに、非木造建物は45年かかりますが、木造建築物は27年。固定資産税のような毎年の固定費を下げられることは、賃貸経営において大いに有利です。

 また、木造建築は法定耐用年数が22年と、比較的短いこともポイント。同じ建築コストで比較した場合、木造建築は鉄骨造、RC造に比べて一年あたりの減価償却費を多く費用計上することができます。不動産経営の収益を圧縮することで所得税などが低減できるのはもちろん、給与所得がある場合、他事業を行っている場合は損益通算することも可能。減価償却費は帳簿上の支出であるため、実際の収益がプラスになっていたとしても問題ありません。その場合の節税メリットは絶大です。

 反面、鉄骨造、RC造はより長い期間にわたって減価償却費を費用計上できるメリットがありますが、より短い期間でキャッシュフローを黒字にしたいなら木造建築が有利。一棟目のキャッシュフローがプラスになったところで、二棟目に資本投下する……というように、投資に自由度が生まれます。

温暖化対策として木造建築が再評価

 このように日本の住環境に適し、不動産投資においても有利な木造建築ですが、最近では「SDGs」や「ESG投資」といった視点からも注目されるようになりました。鉄やコンクリートは製造する過程において多くのエネルギーを消費し、大量のCO2を排出しますが、木は逆に成長過程で大気中のCO2を吸収し、内部に貯蔵することができます。建物の資材として使用された木材は燃やさない限り、CO2を外部に排出することはありません。木造建物を建てることは、地球環境の改善、循環型社会の実現に貢献していると言えるでしょう。

 日本は国土の約3分の2を森林が占める国。国内産の木材を建築資材として有効活用しよう、という動きもあります。こうした社会的背景から、環境や社会への貢献度を評価する「ESG投資」のひとつとして、環境に優しい木造建築を手掛ける企業や林業に今、注目が集まっています。木造建築は伝統的かつ合理的であるだけでなく、将来性も期待される建築手法なのです。

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最終更新日:2023.08.17

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