
インバウンド急増、民泊も意識したアパート経営とは?
膨大な数のサービス提供者と利用者をスマホアプリなどでマッチングさせる……Uber Eatsに代表されるビジネスモデルは、今やすっかり一般的になりました。サービス提供者を専業従事者に限らず、誰でも気軽に参入できるのも特徴です。10年ほど前、日本でも話題になった民泊もそのひとつ。この記事では民泊を視野に含めた不動産投資について解説します。
再び注目度が高まる民泊
民泊とは、本来は住居である建物(アパートやマンションなどの賃貸物件を含む)を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指します。日本には古くから、住まいの一部あるいは全部を宿泊施設として提供する「民宿」がありますが、民宿の多くが食事なども含めた総合的なサービスなのに対して、民泊は空間の提供に特化していることが特徴です。
また、宿泊先を選ぶための検索、予約申込も宿泊先に直接行うのではなく、AirBnBに代表されるインターネット上の仲介システムを利用することにも特徴があります。この仕組みのおかげで、普段は自分が暮らす住居、あるいは別荘として建物を利用しながら、使わない期間だけ、または空室となっている部屋だけを民泊として開放し、収益を得ることが可能になりました。民泊専用として住戸全体を貸し出している戸建て物件も存在します。
民泊は一般の人だけでなく、不動産投資家からも投資対象として注目されています。従来、実物不動産投資における投資対象はアパートやマンションなどの賃貸物件のみ、定期的な収入源は入居者からの家賃収入でした。いっぽう民泊では、宿泊費が収入源となります。賃貸物件では空室となった場合の収入はゼロですが、民泊なら小回りを効かせた運用が可能。一般的には賃貸需要が少ない地域にある物件でも、「観光地やイベント会場に近い」といった条件が揃っていれば、宿泊需要が見込めます。
ここ数年は新型コロナウイルスの感染拡大によってインバウンド需要が縮小し、民泊そのものへの注目度も沈静化してしまったかに見えましたが、今年になってようやく観光需要が復活。昨年末からは全国旅行支援も始まり(現在は、ほとんどの都道府県で終了)、今再び民泊が注目されています。
民泊をはじめる上でのルール
さて、ここで改めて民泊のルールについて確認しておきましょう。民泊需要は2010年頃、日本でのAirBnBサービス開始とともに急拡大しましたが、当時は民泊に関する法令がなかったために旅館業との区別が曖昧であること、周辺住民とのトラブルが多い、といった混乱も生じました。そのため2018年に「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」が施行されます。
民泊新法におけるポイントは、以下の3つです。
1)民泊を営むには「住宅宿泊事業者」として都道府県知事等への届出が必要であること。
2)宿泊施設としての営業日数が年間180日までに制限されること(自治体によってさらに営業日数が制限される場合もあります)。
3)宿泊者一人あたりのスペースが3.3㎡以上であること。
宿泊させる日数が年間180日を超える場合、民泊(住宅宿泊事業者)ではなく旅館業として届出を出し、許可されなければなりません。旅館業を営むには消防設備や衛生管理等の厳しい規定があり、住居と併用することはほぼ不可能です。上記以外にも、近隣住民とのトラブル防止措置などについて細かな規定があります。詳しく知りたい方は以下のサイトを参考にしてください。
・民泊ポータルサイト minpaku
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
民泊は投資対象としても魅力的か?
こうした条件を踏まえた上で、改めて民泊が不動産投資として成立するのか、考えてみましょう。民泊を新たに始めるにあたっては、①新たに物件を購入する、②物件を借りる、③既に個人の住居や賃貸物件として運用している建物の一部を利用する、といった方法が考えられます。必要な初期投資は、一般的に一室あたり10〜100万円程度。非常灯や火災報知器、消火器等の消防設備設置が義務づけられていますが、それらが既に備わっている建物なら兼用可能です。
寝具、掃除道具など宿泊に最低限必要な家具は揃えなければなりません。また届出についても行政書士等に依頼すると費用がかかります。民泊を始めるにあたって修繕、改装等を必要とせず、届出等も自分で行うなら、数万円程度の初期投資で済むケースもあるでしょう。
収入については立地や設備、間取りなどの条件、宿泊費の設定によって大きく異なるところです。営業できる日数は年間180日までと決まっているので、民泊としての稼働率は最大でも50%以下。その点を考慮して投資する必要があります。
たとえば20㎡ほどのアパート一室で、一泊1万円の宿泊費と仮定します。稼働率が仮に40%なら、月の収入は12万円です。そこから経費を差し引いた費用が、物件購入に充てたローンの返済額、もしくは物件オーナーに支払う賃料といった支出額を上回っているなら黒字になります。
もしもアパートなどで空室が目立っている物件なら、その一部を民泊として活用するのも一案でしょう。それまで収入ゼロだったものが僅かでもプラスに転じるのなら、試してみる価値はありそうです。前述のように賃貸ニーズが少ない物件であっても、観光需要がある地域なら民泊として活用できる可能性があります。また伝統的な和風の建物は現代の賃貸ニーズに合わないかもしれませんが、外国人旅行者には好まれる可能性があります。
広い視野からの投資判断を
コロナがある程度、収束しつつある今、多くの外国人観光客が日本へと来ることが予想されます。2025年の大阪万博など大きなイベントも控え、インバウンド需要の拡大、民泊の活用が期待されているところです。
ただし民泊は賃貸と違い、毎月決まった額の収入があるわけではありません。そのため必ずしも民泊への投資をお勧めするわけではありませんが、ひとつの業態にとらわれずに様々な活用方法を検討することで、不動産投資の成功率は確実に高まります。
かしこく資産運用するための初心者向けセミナーは各所で数多く開催しています。不動産投資に興味のある方は、民泊も視野に参加してみるのも良いでしょう。