
アパート経営の夏季メンテナンス、節約と省エネで収益アップ
春の繁忙期も落ち着いて、平常運転を取り戻すこの時期。ひと息つく前に、夏に向けての準備を始めておきましょう。かつて夏は賃貸需要の閑散期と言われていましたが、最近はその傾向が弱まり、7月に再び需要の高まりを迎えることが知られています。今回は、夏に向けて賃貸オーナーとしてどのような準備をすべきかを考えてみます。
今や付いていて当たり前のエアコン
賃貸物件に求められる生活レベルは、時代の変化とともに高まりつつあります。立地や部屋の広さ、間取りなどの物件そのものの魅力に加えて、設備の内容がより一層重視されるようになってきました。夏に存在感を増す設備と言えば、第一位は間違いなくエアコンでしょう。
不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」の調査「一人暮らしのシングルに聞いた設備ランキング2021」によると、エアコンは「付いていて当たり前・付いていない家は借りないと思う設備・仕様」の第2位(第1位は「バス・トイレ別」、第3位は「クローゼット」)、「家で使っている便利な住宅設備」の第1位でした。
また、内閣府の「消費者動向調査」(2022年4月8日発表)でも、賃貸住宅でのエアコン普及率は単身世帯で77.4%、二人以上世帯84.1%に上っています。最近は北海道など寒冷地でのエアコン需要も高まっており、エアコンは今や生活に必須の設備になっています。
その背景には、国民全体の生活水準が上昇したことに加えて、地球温暖化による夏の猛暑日の増加と熱射病のリスクが関係しているようです。コスト面からエアコンを設置しない、という判断もありますが、そのために空室が増えてしまっては元も子もありません。また、入居者が熱射病や脱水症にかかるリスクにもつながるため、特段の事情がない限り、エアコンは備え付け設備として用意するもの、と考えるべきでしょう。
修理費の負担は入居者とオーナーのどちら?
そんなエアコンについて、ちょっと注意しておきたいポイントも。それは備え付けエアコンが故障した場合、その修理費は一般的にオーナー負担になるということ。民法では「賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められており、備え付けエアコンも例外ではありません。
ただし、入居者が故意に故障させた場合、誤った操作をした場合、そのエアコンが残置物(前入居者が置いていったもの)や入居者が自ら設備したものの場合は、オーナーに修理の義務はありません。故障の原因が何なのか、責任の所在をはっきりさせるためにも、入居者の入れ替わり時にエアコンが正しく作動するか必ず確認しましょう。
入居者から故障の報告があった場合には、できるだけ速やかに修理業者を手配します。というのも、故障したままにしておくと入居者が不便であるだけでなく、オーナーの収益も減ってしまうためです。
民法では、貸室・設備等の滅失によって、通常の居住ができなくなった場合、賃借人に責任がある場合を除き、賃料はその滅失部分の割合に応じて当然に減額される、と定めています。従来は「減額請求できる」とされていましたが、2020年4月に施行された改正民法では「減額される」としたのがポイント。エアコンが故障した場合も「通常の居住ができなくなった」と判断されるため、賃料減額が適用されます。
どの程度の額を減額すべきかについては民法に明記されていませんが、公益財団法人「日本賃貸住宅管理協会」が「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を定めています。それによると、エアコン故障による賃料減額は1か月あたり5000円、免責日数は3日とされています。減額の算出方法は日割り計算で行うものとされており、できるだけ早く修理業者を手配するのが得策、できれば免責日数内に修理を終えたいところです。エアコンがフル稼働する本格夏シーズン前には業者への依頼が殺到するので、この時期にエアコンが故障していないか、入居者に予めリサーチしておくのも良いでしょう。
エアコン故障を未然に防ぐための対策として、退居時に思い切って新品へと交換してしまうのも一案かもしれません。住居用エアコンの耐用年数は一般的に6〜10年(法定耐用年数は6年)。意外に短いことに驚かれるかもしれません。エアコンを含めた備え付け設備の交換は、もちろん経費計上できます。
家電製品における技術革新は凄まじく、新しい製品に交換することは節電にもつながります。電気料金の値上げが報じられている昨今、電気代が安くて済むエアコンが予め設置されていることは入居者にとって大きな魅力となることでしょう。管理人室やエレベーターなど共用部分にエアコンを設置している場合も同様。定期的に点検し、必要なら修理や交換を。消費電力の少ない製品に交換すれば、月々の出費を抑えられます。
節水対策で入居希望者にアピール
夏はエアコン使用によって電気代が増えるだけでなく、水道代がかさむ時期でもあります。シャワーを浴びる頻度など、水を使う機会が増えるためでしょう。物件新築時、あるいはリフォームなどのタイミングで、節水アイテムを導入し、水道代が少なくて済む物件であることをアピールするのもアイデアのひとつです。節水アイテムには、蛇口に付けるだけで節水できる「節水コマ」や、既存のシャワーヘッドと交換する「節水シャワーヘッド」などがあります。
「節水コマ」は水道局推奨の節水アイテムでもあり、既存の蛇口(レバータイプの蛇口には装着不可)に装着するだけで最大で50%もの節水効果があるとされています。ただ、こうした節水アイテムはどうしても水の流出量が少なくなってしまうので、利便性との兼ね合いを考えなければなりません。入居者の中から希望者にのみ設置するのがベストな方法でしょう。なお、「節水コマ」は水道局の営業所で無料配布されていることが多く、工具さえあれば誰でも簡単に取り付けできます。
エアコンや水道など、設備の定期的なメンテナンス、修理、新品への交換については、オーナー自身で判断するのではなく管理会社や不動産会社ともよく相談し、コストや導入効果、適切なタイミングなどを見計らうことが大切です。長年にわたってオーナー様のアパート経営を強力にバックアップしてきたシノケンなら安心。設備の維持管理や修繕などについても、グループ内の管理会社に一任いただくことが可能です。オーナー様の負担を抑えつつ、費用対効果を最大限にする方法をご提案できます。