
アパート経営は10年後、黒字になるのか?
長期間にわたって、安定した収入が期待できるアパート経営。会社員の副業としても人気です。銀行などからの融資を利用して不動産を購入した場合、取得から10年が黒字化するひとつの目安とよく言われています。それは本当でしょうか? シミュレーターを使って検証していきます。
インカムゲインだけで早期黒字化は可能?
不動産経営における収入源には、大きくインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があることは以前の記事でも解説しました。インカムゲインは平たく言うと家賃収入のこと。キャピタルゲインは不動産を売却した時の売値です。
どちらも確固たる収益ですが、長期的に安定した収入となるのはインカムゲインです。家賃収入は経年によって少しずつ目減りしていくにしても、賃貸物件を所有している限り利益をもたらしてくれます。キャピタルゲインは一時的な大きな金額が手に入るメリットがありますが、取得価格を上回る利益を確実に上げるためには、地価上昇を正確に予想する、地価の高い都市にある物件を選ぶ、といった不動産投資の高度な知識と経験、センスが必要になります。キャピタルゲインに期待した投資スタイルはリスクも高く、会社員やビギナーには不向きでしょう。今回は安定的なインカムゲインを狙った投資スタイルを前提として考えていきます。
インカムゲインの場合、最初に投じた自己資金がいつの時点で回収できるのか、また融資額を含めた不動産取得価格を上回るのはいつなのかは、最も気になるところです。何をもって“黒字化”とするかは考え方によりますが、ここでは「自己資金額を累積キャッシュフローが上回った時点」とします。端的にいうと、投資開始前よりも所有するキャッシュの量が増えた時点……ということなります。手持ちのキャッシュが以前よりも増えたなら最低限の目的は達成できたことになり、改めて再投資にもチャレンジできる状況となるためです。
新築アパートのキャッシュフローを投資期間ごとに試算
キャッシュフローをシミュレートするには、収入と支出をできるだけ正確に設定しなければなりません。不動産取得時には、購入費用のほかに登記費用や各種税金、専門家への報酬や不動産会社の仲介手数料などを支払う必要があります。また運用し始めてからも、融資返済額や不動産価値に応じた固定資産税などの税額、減価償却費、維持管理に必要な経費などがランニングコストとして支出されていきます。
さらに収入においても、入居率や経年による家賃減を想定しておかなければならないでしょう。これらの計算は大変複雑になるので、実物不動産投資専用のキャッシュフロー・シミュレーターを使うのが便利です。前提条件を入力するだけで、経過年ごとのキャッシュフローや累積キャッシュフローを自動的に計算してくれます。
今回は新築一棟アパートを前提として、以下の条件でシミュレートしてみました。物件価格(不動産取得価格)などはアパート一棟を購入する平均的な金額としています。表面利回りについては地域差があるので、全国平均に近い数値としました。年間経費には、固定資産税などの各種税金、管理費、維持費、修繕費、その他経費が含まれています。大規模修繕費は含まれていません。

上記設定の場合、一戸あたりの家賃は6万2500円。入居率は90%、賃料下落率は1年毎に0.5%に設定してあります。それでは早速シミュレートしてみましょう。
【投資1〜3年目】
1年目の年間キャッシュフローは234万円と投資期間全体の中でもかなり多めの金額となります。ただ、不動産購入時諸費用(経費算入できる)として最初に525万円を支出(自己資金から計上)しているので、帳簿的には赤字となるのが通例です。不動産投資以外の収入がある場合には、このことを逆に利用して損益通算し、節税するのも良いでしょう。
投資3年目の時点では累積キャッシュフローが約693万円となり、自己資金の約46%を回収できることになります。
【投資4〜6年目】
4〜6年目はキャッシュフローが安定し始める時期です。年間220万円前後のキャッシュが手元に残る計算となります。ただ6年目時点での累積キャッシュフローはまだ約1359万円であり、最初に投じた自己資金額を上回ってはいません。
【投資7〜10年目】
今回の条件設定の場合、7年目の時点で累積キャッシュフローは約1575万円となり、早くも黒字となりました。ローンの返済は引き続き残っていきますが、ひとまず7年目で自己資金分を回収できることになります。
ちなみにその後は経年により家賃収入が少しずつ減っていくのに対して、ローン返済額は毎年同じ額に設定しているので年間キャッシュフローは目減りしていきます。また22年目以降は減価償却を終えますので、納める税額が高くなり、その傾向はより顕著になります。
状況が大きく変わるのはローン返済を終える30年目以降。30年目の時点で毎年約345万円のキャッシュが残る計算です。ちなみに、今回の想定で融資分を合わせた投資金額全体を累積キャッシュフローが上回るのは38年目、10〜15年単位での大規模修繕を想定しても40年目前後という結果になりました。
賃貸経営は長いスパンを想定すれば、インカムゲインだけで十分に元が取れる投資であることが分かります。また黒字化を目標とするなら10年を待たず、意外に早い段階で達成できそうなことも分かりました。建物を所有している限りは継続的に家賃収入があり、さらに不動産が資産として手元に残ります。建物の価値が高いうちに売却し、より早い段階での原資回収を狙うのも一案でしょう。
土地選びや入居管理が結果を大きく左右する
今回の想定では入居率90%に設定しましたが、この数値が少し変わるだけで結果に大きな影響があります。たとえば入居率が80%だった場合、黒字化するのは10年目。90%想定より3年も遅いことが分かります。不動産経営において、賃貸ニーズの高い土地を選ぶこと、適切な維持管理をして高い入居率をキープすることが、いかに大切かよく分かります。
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