
難しいと思われがちな海外不動産投資キホンの「キ」、メリットとデメリットを解説
経済のグローバル化、インターネットの普及、REITの登場などを背景に、海外不動産に投資するハードルは以前に比べて下がってきました。国内不動産と海外不動産には、どのような違いがあるのでしょうか? メリットやデメリット、注意点について基本的なことから解説します。
不動産投資の中でもハードルが高いイメージ?「海外不動産投資」とは
海外不動産投資は文字通り、海外にある不動産物件に対して投資することを指します。日本の賃貸経営と同じように外国の実物不動産を購入し、運用することでインカムゲイン(家賃収入)やキャピタルゲイン(売却益)を得ることができます。
日本経済は長らく停滞が続き、人口も減少局面に入っていますが、広い世界に目を向けると国ごとに状況が全く異なります。日本国内の常識では考えられないほど地価が上昇している地域、人口が増えている地域も海外には存在します。そうした地域にある不動産をターゲットに投資することで高い利回りを確保することが、海外不動産に投資する主な目的です。
海外不動産投資の対象となる国としてはアメリカやEUなどの西欧諸国をはじめ、シンガポールやインドネシアなど東南アジア諸国も注目されています。全般的に先進国の不動産は日本国内の物件に近い長期安定型、新興国の物件は利回り重視のハイリスク・ハイリターン型となる傾向にありますが、地域、物件によって特性は大きく異なるため一概に言うことはできません。
国内不動産投資と同じように実物不動産購入だけでなく、投資信託のREITや不動産小口化商品で海外不動産に投資することも可能。国内の投資会社が取り扱う外国REITなら、J-REITと同様の感覚で気軽に投資できます。
海外不動産に投資する3大メリット
海外不動産に投資すると以下のような3つのメリットが期待できます。
1.高い売却益と利回り
経済成長している国では、必然的に不動産価格も上昇する傾向にあります。日本の不動産価格は1990年代前半をピークに大きく下降。その後、2010年頃から現在まで緩やかに上昇していますが、アメリカなど他の先進国はより高い上昇傾向にあります。新興国の中には、上昇傾向がさらに顕著な国も。そうした国の不動産に投資することはキャピタルゲインを狙う上で大きなメリットとなります。
またインカムゲインについても、人口増加している国、地域では国内不動産以上の高い利回りが期待できます。たとえばインドネシアではこの40年で人口が約147万人から約275万人へと倍近くにまで増えており、インカムゲインの利回りも日本の2〜3倍を記録する物件がごく普通にあると言われています。
2.リスク分散できる
言うまでもなく、日本は自然災害の多い国。国内の所有物件が自然災害に見舞われ、大きな損失となってしまうリスクもゼロではありません。海外の不動産にも投資することでリスクを分散することができます。また日本では今後、若年層の人口が減少していく中で賃貸ニーズの下がる地域も出てくることが予想されていますが、人口が増えている国の不動産に投資することでリスクを分散できます。人口や経済の変動リスクは、国や地域によって大きく異なるため、広いエリアを投資対象とすることでメリットを得ることができます。
3.為替差益が期待できる
外国の不動産は通常、現地の通貨で取引されます。そのため、円の為替レートが高いときに不動産を購入し、安いときに売却すればキャピタルゲインとして大きな為替差益を得ることができます。これはインカムゲインも同様。円安が進行、あるいは現地の通貨価値が高くなることで、家賃収入は増えます。
円安局面で国内不動産の実質的な価値が目減りしてしまうリスクを考えると、海外不動産に投資することはリスク分散にもつながります。
海外不動産投資のデメリット
海外不動産に投資することは、少なからずデメリットも存在します。以下のようなリスクが考えられるでしょう。
・現地の情報が少ない
国内にある物件なら通常、不動産会社が地域の情報を把握しており、人気の間取りや設備、家賃相場、競合物件の情報などを簡単に集められますが、海外の物件ではそう簡単にいきません。国内の物件なら現地へと見学に行くことも容易ですが、海外となると予算も時間もかかり、機会が限られてしまうことでしょう。
インターネットの普及によって以前よりも情報収集しやすくなりましたが、それでも現地の不動産会社と直接取り引きする場合は、最低限の言語スキル、現地の情報が必要です。言語スキルに自信がない、現地に詳しくない場合は日本国内の不動産会社が扱っている海外の物件や外国REITに投資することをお勧めします。
・融資を受けるのが難しい
海外にある不動産会社を介して不動産を購入する場合、一般的に現地の金融機関に口座を開設する必要があります。海外投資の実績や現地での収入、資産がないと、外国の金融機関から融資を受けることは非常にハードルが高いでしょう。ただ条件は限られるものの、日本政策金融公庫など海外不動産投資向けの融資を行っている国内の金融機関もあります。また民間金融機関の中にも、国内の不動産を担保とすることで、海外不動産を対象とした融資を受けられるケースがあります。
・日本では考えられないリスクも
海外不動産投資の場合、現地の不動産会社や施工会社、管理会社とトラブルになるケースが少なくありません。国内の物件ならオーナーが現地へと赴き、物件の状況を把握したり、委託会社と密接にコミュニケーションを取るのも容易ですが、海外物件となると困難です。また、投資したのに収入が得られない最悪のケースもあり得ます。東南アジアなどの不動産投資では物件施工前に複数の出資者から資金を募る「プレビルド」という手法が一般的に用いられていますが、十分な資金が集まらなかった、不動産会社が倒産した、などの理由で竣工にいたらないこともあります。海外不動産投資に慣れていない方は、まず国内の不動産会社が扱っている海外物件に投資するのが堅実な方法でしょう。
・為替変動、景気変動によるリスク
先ほど、為替変動によって大きなキャピタルゲインが得られる可能性があると書きましたが、このことは逆にリスクにもなり得ます。海外不動産を購入したときよりも円が高く、または現地の通貨価値が安くなったときには、実質的な売却益が目減りしてしまいます。
また景気変動についても、発展途上国などの場合には日本では考えられないほど大きく不動産価値や貨幣価値が大きく変動することがあり得ます。海外不動産投資はあくまで国内不動産がある上での分散投資と考えるとよいかもしれません。
リスクの少ない海外不動産投資を
このように、海外不動産投資にはメリットもあればデメリットもあります。リスク分散を念頭においた上で慎重に検討すべきでしょう。なお、海外不動産で得られた収益も国内不動産と同じように、日本の税制に従って税金を納める必要があります。かつて海外不動産の運用、売却による損益は国内の収益と全額通算することができ、節税対策のひとつとして注目されましたが、2021年以降は減価償却分の赤字を国内の収益と通算することができなくなり、節税面でのメリットは少なくなりました。
日本国内で数多くの賃貸物件提供実績をもつシノケングループは、2006年の中国進出を皮切りに、2014年にシンガポール、2015年にインドネシアと海外にも積極的に進出。インドネシアにおいては、日本クオリティを持ったサービスアパートメント「桜テラス」を展開するとともに不動産ファンドを組成し、インドネシア不動産への投資機会を日本国内の投資家にも提供。桜テラスの保有・運営による収益を計上し、外資系でインドネシア唯一のREITライセンスホルダーとして、REITへの売却という出口シナリオも描くことができます。