アパート経営のノウハウ

確定申告の方法。経費になる、ならないものに注意

2022.12.22

 毎年2〜3月は確定申告の時期。不動産経営を行っている人はもちろん、副業などで給与所得以外の定期収入がある人のほとんどは申告の義務があります。書類の作成には手間がかかりますがが、“経費枠”を上手に活用することで節税にもつながります。ただし、業務に使ったすべての費用が経費として計上できるわけではありません。この記事では、経費にできる支出、できない支出について解説します。

そもそも確定申告とは?

 確定申告は、1年間の所得額から税額を計算し、税務署に申告する手続きのことです。会社から支払われる給与所得については本人に代わり会社が申告しますが、それ以外の収入については本人からの申告がなければ、税務署は「いくら所得があったのか」把握することができません。そのため所得額とそれぞれの税率に基づいた課税額を計算し、申告する必要があります。

 事業所得、不動産所得などがある場合、会社勤めでも給与所得が2000万円以上ある場合は、確定申告する義務があります。また、申告する義務がない人(給与所得が2,000万円以下、かつ副業等による所得が20万円以下の人など)でも、各種控除がある場合は申告することで税額を抑えることが可能です。申告の方法は「白色申告」と「青色申告」の2種類。「白色申告」は比較的簡易な記載内容で済むのに対して、「青色申告」は提出しなければいけない書類が多い分、特別控除を受けられる(複式簿記の場合のみ)ほか、前年度の欠損金を翌年度に繰り越すことができる……などのメリットがあります。

 なお、不動産賃貸業で青色申告の特別控除を受けるには、税務署に「事業的規模である」と認められる必要があります。「事業的規模」と認められるには、一般的に「5棟もしくは10室」以上の物件を保有し、貸していることが条件と言われています。

 税務署に提出する書類は定型の「確定申告書」と、収支内訳書(白色申告の場合)または決算書(青色申告の場合)、各種控除に必要な添付書類などです。個人事業での確定申告は、毎年1月1日〜12月31日の期間で発生した所得金額の総額と税額を計算し、翌年の2月16日〜3月15日に税務署に報告、納税するのがルール。各種書類の作成は本人が行っても、税理士などに依頼しても構いません。

経費として認められる支出

 所得税などの課税額は、事業などで得た売上全体の中から各種控除や経費を差し引いた純利益に税率を掛けることで決まります。ただし、事業で使ったすべての費用が経費として認められるわけではありません。経費として計上できる支出には以下のようなものがあります。

・「固定資産税」などの租税公課

 不動産を取得、維持するためには様々な税金がかかります。「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」「固定資産税」「都市計画税」は経費として計上できます。

・減価償却費

 建物や設備の購入費用を一括経費算入するのではなく、法律で定められた使用期間内で分割することを減価償却と言います。不動産などの資産価値は一気に償却されるわけではなく、時間経過とともに少しずつ減少していくもの……という考え方に基づいています。

 減価償却費はその年度に実際に支払った費用ではなく、“架空の経費”であることから、「実際の会計上は黒字でも税務上は赤字」という状態にもなり得ます。つまり、この仕組みをうまく利用することで課税対象となる純利益の金額を圧縮し、節税することができるのです。給与所得など他の所得と損益通算することも可能。「減価償却」については以下の記事も参考にしてください。

参考:不動産経営の3大経費! 節税効果も見込める「減価償却」とは?

・維持管理費など

 不動産会社や管理会社に支払う「管理費」や「修繕費」「仲介手数料」「広告宣伝費」などは、すべて経費計上することができます。

・交通費、通信費

 物件管理のために使った交通費や通信費、宿泊費などは経費計上できますが、あくまで「不動産の維持管理」に使用した支出のみであり、私用でかけた電話代などを含めてはなりません。

・専門家報酬

 登記関連などで司法書士に支払った費用、会計業務で税理士に支払った費用などはすべて経費計上できます。

・保険料

 賃貸物件を対象にした火災保険・地震保険など損害保険料は経費の対象です。また、金融機関からの融資借入時に加入した団体信用生命保険の保険料も、条件によって経費にすることができます。

・水道光熱費

 水道代、電気代、ガス代などは共用部分についてのみ、経費にすることができます。

・交際費、会議費

 打ち合わせなどで食事した場合、一人あたりの飲食代が5000円以下である場合に限り、「会議費」として計上することができます。その場合は誰と会食したのか経理上の記録に残しておきましょう。

 交際費についてはやや複雑です。個人事業の場合、「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」が交際費ということになっています。アパート経営の収益を上げるために不可欠な費用のみ、しかも領収書など証明できる書類が残っている場合のみ、経費として認められます。

 上記のほか、業務遂行のために使った消耗品費や返済金の支払い利息なども経費として計上できます。

経費として認められない支出、家事按分が必要な支出

 一方で、不動産経営のために使った費用でも、経費として認められないものもあります。以下がその代表例です。

・所得税、住民税

 税金の中でも「所得税」や「住民税」は事業でなく個人に対して発生するものなので、経費計上することができません。

・土地取得費用

 不動産の中でも土地の取得費用については、経費でなく資産として計上することになります。建物と違い、資産価値が目減りしないことから減価償却することもできません。

・融資の返済額元本

 不動産購入のために借り入れた融資返済額の元本相当分は、当然ながら経費計上できません。建物の取得費用は上記のとおり、減価償却費として計上します。

・福利厚生費

 事業主本人に対する福利厚生費は認められません。福利厚生はそもそも従業員に対するものだからです。また給与についても、個人事業の場合は事業主本人に支払ったものは給与でなく、所得として計上するため経費にはなりません。

・衣服など

 事業のためだけに必要な制服などであれば経費算入できる可能性もありますが、不動産経営の場合、制服を着用するケースはほとんどないでしょう。スーツなどは業務用なのか、私用なのか判別がつきにくいため、通常は認められません。

・自宅の家賃

 自宅の一部を事務所として利用しているとき、青色申告で「事業的規模である」と認められている場合には、業務相当分の家賃を家事按分して経費計上することができます。家事按分とは支出全体のうち、業務として専有する割合がどれくらいかを計算すること。床面積の割合から求めたり、時間の割合から求めたりする方法があります。

 白色申告の場合は、原則として業務で使う割合が50%以上でないと経費として認められないことが多いようです。

 このように支出の種類によっては、経費として計上できるか否かの判断が難しいものもあります。税務署によって判断が異なるケースもあるため、迷ったときは税理士などのプロに相談するのが良いでしょう。長年にわたってお客様のアパート経営をバックアップしてきたシノケンでは、信頼できる税理士事務所とも提携。難しい確定申告の手続きについても丁寧にサポートいたします。

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最終更新日:2022.12.22

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