
不動産投資のシミュレーションについて
不動産投資を成功へと導くためには、綿密な計画を立てることが肝心です。その投資で本当に利益が出せるのか、損益分岐となる空室率はどれくらいか、判断するには事前のシミュレーションが欠かせません。最近ではインターネットやアプリなどで、不動産投資専用の様々なシミュレーターも公開されています。この記事では不動産シミュレーターの便利な使い方や精度を高める方法、注意点について解説します。
シミュレーションすることの意味
どれだけ事前に計算しても、正確に予想することはできないのだからシミュレーションなど意味がない……と考えている人がいるかもしれません。しかし、不動産投資は比較的、予想を立てやすい投資分野のひとつです。主な収益源となる家賃収入(インカムゲイン)は物件の立地や面積、建物の構造、戸数、築年数などの条件によって決まるため、かなり正確に見積もることが可能だからです。もちろん、自然災害など予測できない要素はありますが、株式などの金融投資に比べてリスクは低めと言えるでしょう。
ただし、不動産投資で生じるキャッシュフローをすべて手動で計算するのは大変です。毎月の融資返済額や、固定資産税額等の計算はあまりにも複雑。さらに、投資物件の収支を見積もるには、将来の物件価値減衰や賃貸ニーズの増減といった変化も予測し、計算に盛り込まなければなりません。そうした時間変化も考慮した投資期間全体の収支を見積もるには、シミュレーターを活用するのが便利です。
シミュレーションする大きなメリットのひとつは、実態に近い利回りが分かることです。物件概要書などで示されているのは主に表面利回り(年間家賃収入÷物件価格)ですが、それだけでは実際に利益が出るかどうかは分かりません。表面利回りが高い物件でも、実際には管理費や修繕積立費、保険料や税金などが高く、純利益の少ない=実質利回りが低い場合があるからです。シミュレーターを使うことにより、実質利回りに近い数字を算出することができるのは投資判断において大いに役立つでしょう。
もうひとつのメリットは、投資プランを綿密に立てられること。自己資金と融資可能額から調達できる物件を選び、毎年のキャッシュフローから返済計画を考えたり、売却までの道筋を考えたりするのに有利です。
投資期間全体を見渡せるシミュレーターが便利
インターネットの検索エンジンやスマホのアプリストアで「不動産投資」「シミュレーション」と入力すると、簡易的なものから本格的なものまで、様々なシミュレーターを見つけることができます。簡易的なシミュレーターの多くは単年度のキャッシュフローを計算してくれるもので、以下のような情報を入力します。
■入力項目の例
・物件の取得金額
・満室時の年間想定収入(家賃×戸数×12か月)
・想定空室率(空室数÷戸数)
・諸経費率(諸経費の家賃収入に対する割合)
・自己資金
・借入金額
・借入期間
・借入金利
これらを入力すると、年間支出金額やそれを元に計算された年間収支、表面利回り(家賃収入÷物件価格)、実質利回り((家賃収入-諸経費) ÷ 物件価格)等が導き出されます。計算が難しい融資の返済額などがすぐに分かるため便利です。「AとBの物件における収益性を手早く比較する」といった場面で活用できるでしょう。ただ、諸経費などの項目は概算であり、大まかな予測しか立てることができません。またキャッシュフローは経年によって変化しますが、単年度のシミュレーターでは把握できません。
そのため、より高い精度で予測したいときには、投資期間全体を見渡せるシミュレーターを使います。本格的なシミュレーターでは上記項目に加え、建物の価格や構造、築年数、建物面積などの情報を求められますが、これは固定資産税等の年別税額をより正確に計算するためのものです。管理費や修繕費、入居率、賃料下落率などを細かく設定できるものなら、さらに精度は高まるでしょう。
複数年度の計算ができるシミュレーターでは、純利益から融資返済額を差し引いた「年間キャッシュフロー」がどのように推移するかを素早く、簡単に把握することができます。累積キャッシュフロー(投資開始から当該年度までの純利益累積額)、投資金額の回収時期に目処をつけるのがも容易になります。実質利回りが○%だから、金利○%で融資を受けることができたら投資初期からキャッシュフローがプラスになる……といった判断ができ、最適な融資先を決めるのに役立ちます。融資の借入額や金利、借入期間は任意の数値を入力できるので、たとえば毎月の返済額を多め(借入期間を短く)にした場合と少なめ(借入期間を長く)にした場合で、キャッシュフローはどう変化するのか、比較することもできるでしょう。
もちろん、いくら精度の高いシミュレーターであっても予想どおりに投資計画が進むとは限りません。自然災害や突然の設備故障、事故、金利、物価の変動といった不確定要素があるからです。想定外のトラブルによる被害を最小限に抑えるためには、保険に加入する、リスクに対応できるだけのキャッシュフローを確保しておく、といった手段を講じる必要があります。シミュレーションには、リスク対策にどれだけのコストをかけられるか判断しやすくなるメリットもあります。
出口戦略まで見据えた投資プランを
不動産投資は多くのケースでは、融資返済が終わるまでの期間はキャッシュフローが少なく、それ以降に徐々に増えていきます。また、経年とともに賃料が少しずつ下降し、空室率も増えるため、ある程度の築年数経過以降はキャッシュフローが少なくなっていく傾向もあります。不動産の売却を視野に入れている場合は、キャッシュフローが上げ止まる時期と不動産価値が下降し始める時期を見比べることで、最適な売却タイミングが分かるかもしれません。
場合によっては、毎年のキャッシュフローが少ない、もしくは若干のマイナスであっても、物件の売却益=キャピタルゲインで最終的にプラスへと転じる可能性もあります。インカムゲインはもちろん大切ですが、キャピタルゲインの推移に考慮しながら、最終的な収益を最大化することが不動産投資の最終目標となるでしょう。当てずっぽうや勘で最適解を導き出すことはできません。成功の可能性を上げるために必要なツールがシミュレーターなのです。
不動産投資のシミュレーションは、いわばアパート・マンション経営の仮想体験のようなものです。数多くの投資先候補をシミュレーションし、比較することで、不動産オーナーとしての知識や経験も深まっていくことでしょう。長年にわたって不動産投資をサポートしてきたシノケンなら、物件・土地選びから維持管理、資金調達や投資プランのアドバイスまで、お客様の多様なニーズに応えることができます。