制度・税制

住宅ローン控除の控除率変更、期間延長について解説

2022.07.21

 令和4年度の税制改正により、住宅ローン控除制度の適用期限が4年延長(令和7年12月31日までに入居した者が対象)されるとともに、内容が一部改正されました。賃貸住宅で住宅ローン控除を適用することはできませんが、賃貸併用住宅なら使えます。この記事では、住宅ローン控除制度とは、そもそもどのような内容なのか? また令和4年度税制改正でどのように変わったのかを解説します。

マイホーム派の家計を助けてきた住宅ローン控除

 住宅ローン控除制度は、家計の中でも大きな出費となる住宅ローンの金利負担を軽減するために所得税額から一定割合の金額を控除する制度で、正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言います。その歴史は古く、1970年代に初導入。新築や中古の居住用住戸を購入、あるいは増改築した場合など一定の要件を満たしたときに、「年末の住宅ローン残高×1%を10年間、毎年の所得税額から控除するもの」として長らく適用されてきました。たとえば新築住宅を購入してローンを組み、年末のローン残高が3000万円の場合、3000万円×1%=30万円(もしくは最大控除額)を10年にわたって所得税額から差し引くことができたのです。所得金額によっては源泉徴収で納めた所得税のほぼ全額が控除される制度とあって、住宅ローンを組む人にとってインパクトは絶大。住宅の購入を促し、経済対策としての効果も少なくありませんでした。

住宅ローン控除、令和4年度税制改正のポイント

 これまでも最大控除額の変更などが繰り返されてきましたが、令和4年度の税制改正では従来にないほど内容が大きく、多岐にわたって変わりました。2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた措置、および会計検査院の指摘に対する対応、経済状況を踏まえた措置が理由です。改正された主な内容は下記のとおりです。

・適用期限を4年延長し、「令和7年12月31日までに入居した者が対象」に(改正前は令和3年12月31日まで)。
・控除率が0.7%に(改正前は1%)。
・新築住宅等(認定住宅は令和4〜7年入居、その他の住宅は令和4・5年入居が条件)については控除期間を13年に上乗せ(改正前は10年)。ただし、中古住宅や認定住宅以外の新築住宅で令和6・7年入居は10年のまま。
・新築の住宅の借入限度額を「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」「その他の住宅」の4種類に応じた金額に変更(詳細は下記表)。

出典:財務省「令和4年度税制改正」

 

・令和6年以降に建築確認を受けた新築住宅について、省エネ基準への適合を要件化。
・住宅ローン控除の適用対象者の所得要件を合計所得金額2000万円以下に(改正前は3,000万円以下)。
・合計所得金額1000万円以下の人で、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積要件を40㎡以上に緩和(合計所得金額が1000万円より多い人は従来と同じ50㎡以上が要件)。

 上記のように令和4年度以降の住宅ローン控除では、控除率から適用期限、控除期間、借入限度額にいたるまで全般的に内容が見直されました。控除率が従来の1%から0.7%へと低くなるかわりに、控除期間を10年間から13年間に延長したのがトピックです。この背景には、会計検査院から「現在の低金利下において、住宅ローン控除適用者の約8割が1.0%未満の利率でローンを組んでおり、控除によって利益が生じてしまっている」という従来の税制下における指摘がありました。ただ、現在の経済状況も鑑みなければならないことから、新築住宅等の控除期間が10年から13年へと延長されたのです。

 また、カーボンニュートラル時代への対応も課題でした。そのため従来は「認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)」と「一般住宅」にざっくり分けられていた区分を「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」「その他の住宅」に細かく分け、省エネ性能の高い住宅ほど借入限度額を高く設定。エコな住宅の普及を促す内容となりました。

住宅ローン控除、改正によって得する? 損する?

 全般的に見て、「税制改正前よりも控除される総額が増える」というケースは希でしょう。控除期間は13年間に延長されましたが、それでも控除率が0.3%下がった影響を覆すほどではないからです。仮に、住宅の取得から控除期間の終了まで3000万円のローンが丸々残っているとして計算した場合、従来の税制では3000万円×1%×10年で計300万円の控除額ですが、新税制下では3000万円×0.7%×13年で273万円の控除となり、27万円減ってしまいます(実際には年末のローン残高を基準に計算するので、控除額は年々減っていきます)。そうした意味では、これから住宅を購入しようと思っている人にとって厳しい内容の税制改正と言えるでしょう。

 ただ、「ZEH水準省エネ住宅」など省エネ性能の高い住宅を購入しようと考えている人には有利に働く可能性もあります。電力消費量の節約、CO2排出量低減につながるエコな住宅の普及には効果を発揮するかもしれません。

賃貸併用住宅なら住宅ローン控除が条件付きながら適用される

 住宅ローン控除は基本的に居住用の住居を対象としたもので、賃貸物件には適用されません。しかしながら、同じ建物で賃貸と所有者自身の住居を共用する「賃貸併用住宅」なら、居住部分についてのみ住宅ローン控除を受けることができます。ただし「床面積全体の2分の1以上が自己居住用になっていること」が条件。賃貸部分は控除の対象にはならないため、住宅ローンの借入金から自宅部分の床面積を按分した金額……たとえば床面積100㎡の賃貸併用住宅を取得し、半分の50㎡分を自宅とする場合、年末のローン残高が5000万円なら、そのうち2500万円×0.7%=175千円が当該年度における控除の対象となります。その他、所得金額、借入限度額などについては、通常の住宅ローン控除と要件は一緒。「アパートの一室にオーナーが住む」といったケースでは、残念ながら面積要件を満たすことはできません。また、転勤などで長期間にわたって自宅を空けるため、賃貸として運用する場合も、その期間は住宅ローン控除を受けることができないので注意が必要です。

 賃貸併用住宅を建てる際には、住宅ローン控除の対象になるか、あらかじめ専門家に確認しておくとよいでしょう。シノケンには不動産取引に関する専門資格を有したアドバイザーが数多く在籍。お客様の状況に合わせて最適な資金計画をご提案させていただきます。

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最終更新日:2022.07.21

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