制度・税制

一括借り上げに新たなルールを定めた「サブリース新法」とは?

2022.06.23

 オーナーが所有する物件を不動産会社などが借り上げ、それを貸借人(入居者)に転貸する契約が「サブリース契約」です。オーナーは空室リスクの心配がなくなり、安定した家賃収入を得られることがメリットですが、途中で家賃減額を求められた……などのトラブルも多く発生していました。そのため、2020年12月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」通称サブリース新法が施行されました。ここでは、サブリース新法のあらましや法律施行後の変化について解説します。

条件によってメリットも多いサブリース

 サブリースでは、業者がオーナーから複数の物件を同時に借り上げる「一括借り上げ」が一般的です。サブリース業者は独自に入居者を募集し、貸借人と契約を結びます。厳密に言うと、オーナーとサブリース業者で結ぶ契約を「マスターリース契約」、サブリース業者と貸借人で結ぶ契約を「サブリース契約」と言いますが、両者をあわせて「サブリース契約」と呼ぶのが通例です。

 サブリース(マスターリース)には、主に物件を賃借したサブリース業者が入居状況にかかわらず、一定の賃料をオーナーに支払う「賃料保証型」と、賃料保証がなく、空室率に応じた家賃が支払われる「パススルー型」の2種類があります。「賃料保証型」の場合、オーナーにとっては空室リスクの悩みから解放されて安定収入が見込め、しかも入居者の募集や建物、設備の管理も含めて一括で任せられるので、手間がかからない……という大きなメリットがあります。

 ただし、不動産会社から支払われる賃料は、空室のリスクや入居者募集、管理業務のコストをふまえたものとなるため、「賃料保証型」でサブリース業者から支払われる賃料は通常の月額家賃よりも低くなります。サブリース契約を結ぶ場合は、将来見込めそうな家賃収入、空室リスクをよく考慮した上で、「一括借り上げ」で貸した場合の賃料が妥当か否かを判断しましょう。

トラブルの多くは説明不足に起因

 条件によってはメリットも少なくないサブリース契約ですが、これまでは規定がなかったためにトラブルにつながる事例もありました。2019年に公表された国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)(https://www.mlit.go.jp/common/001320849.pdf)」によると、「十分な説明がないまま契約を求められた」「契約の途中での大幅な賃料減額等の予期せぬ条件変更を求められた」「想定していなかった修繕費用などの請求を受けた」「一方的に契約解除を求められた」といった契約、賃料に関するトラブルが目立っています。また、契約の途中で解約をさせてもらえなかった、解約時に違約金を請求された等、解約時のトラブル事例も少なくありません。

 こうしたトラブルのほとんどは、事実に反する広告内容や、賃料や解約など重要な事柄がサブリース業者から契約時にきちんと説明されなかったこと、あるいはオーナーが契約内容をよく理解していなかったことに起因して発生しています。前述のアンケートでも「将来の家賃変動の条件」、「賃料の固定期間・改定時期」、「空室のリスク」、「賃料減額のリスク」などについて説明していると答えたサブリース業者は6割程度しかありませんでした。オーナーに対するアンケートでも同様の結果が出ています。なお、サブリース業者は契約関係においてあくまで貸借人であるため、借地借家法によって賃料の増減を請求する権利や、解約および更新拒絶に対してオーナーに正当事由を求める権利がもともと保証されています。従来の法律では、サブリース業者の存在を前提としていなかったところに問題がありました。

表現方法にまで言及する詳細な規定

 「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下、サブリース新法)はそうした背景をもとに、2020年6月に国会で可決承認、同年12月に施行されました。この法律では「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約(特定賃貸借契約)の適正化に係る措置」として、以下の規定が新たに盛り込まれています。

 ①「誇大広告の禁止」
 ②「不当な勧誘行為の禁止」
 ③「特定賃貸借契約締結前の重要事項説明」
 ④「契約締結時の紙面交付」

 ①「誇大広告の禁止」では、家賃の変動や管理業務の実施方法、解約などについて、事実に相違する表示をしてはならず、実際よりも著しく優良であると誤認させる広告もしてはいけないと規定しています。注意書きをわざと小さな文字にして読みにくくする行為等もNGです。
 ②「不当な勧誘行為の禁止」では、重要な事柄を告げなかったり、事実と異なることを告げたりして、サブリース契約の勧誘をすることを禁止。以前はサブリースを前提として不動産投資を迫る強引な勧誘が多かったことから、この条項が盛り込まれました。
 ③「特定賃貸借契約締結前の重要事項説明」は、この法律の中でも最も重要な箇所。サブリース契約するときにはサブリース業者からオーナーに対して、支払う家賃や家賃改定のタイミング、契約期間、管理業務の内容とその分担割合など、契約に重要な14項目の事柄について契約前に必ず説明しなければならない、と定められました。
 ④「契約締結時の紙面交付」ではさらに、③と同様の内容を紙面でも交付しなければならないとしています。重要事項については文字の大きさ、説明から契約までの時間など、非常に細かな内容にまで言及されているのが印象的です。契約締結時の書類とも電磁的方法(IT)を用いることが可能としていますが、その際にも事前に重要事項説明を読んでおくことが推奨され、送付方法などについても細かく定められています。なお、サブリース新法に違反した事業者に対しては罰則が設けられており、違反の内容によっては最大で「6月以下の懲役若しくは 50 万円以下の罰金」が課せられます。

 サブリース新法についてさらに詳しく知りたい方は、以下のガイドラインをご覧ください。

 ・国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001368270.pdf

トラブル防止に効果を発揮したサブリース新法

 新法施行後は、サブリースを業務とする会社は契約内容などについてより慎重に、丁寧に説明する必要が生じました。契約内容をわざと誤認させ、利益を得ることを目的とした悪徳サブリース業者は確実に減り、以前よく見かけた誇大広告も姿を消しました。トラブル防止に大きな効果があった……と考えて良いでしょう。

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最終更新日:2022.06.23

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