2023年、東急電鉄と相模鉄道による「相鉄・東急直通線」開業による不動産投資の可能性を考える

2022.06.16

  不動産の価値を大きく左右する立地条件の中でも、電車利用の利便性は特に重要視されます。鉄道の新路線や延伸が地域を発展させ、ひいては住宅需要、賃貸需要の増大をもたらすことは、不動産投資家ならよくご存知でしょう。首都圏でも複数の新路線が延伸・新線の計画を立てていますが、特に2023年3月に開業予定の相鉄・東急直通線が注目されています。今記事では相鉄・東急直通線の開通で沿線の街がどう変わるのか? 不動産投資の視点から予想します。

相鉄沿線の住宅事情は?

 相鉄線(相鉄本線)は、神奈川県の横浜駅と海老名駅を結ぶ相模鉄道(相鉄)の鉄道路線です。もともとは貨物輸送を主目的として1920年代に開業しましたが、戦後になって周辺地域の宅地化が急速に進み、旅客輸送にシフトしていきました。県の運転免許センターがある二俣川駅、近年、商業施設などの開発が目覚ましい海老名駅など神奈川県民にとっては馴染み深い路線ですが、他路線の乗り入れが一切なく、都心への直通運行がない……というウィークポイントも抱えていました。都心に乗り換えなく行ける東急線などに比べると利便性が低く、不動産投資ではあまり注目されてきませんでした。ただ、その分、沿線地域は横浜市内であっても豊かな自然環境が残る場所が多く、地価も相対的に安いため、広々とした戸建て物件を建てられるというメリットもありました。

 その状況が大きく変わったのは2019年11月。相鉄線西谷駅から分岐し、新設された羽沢横浜国大駅からJR武蔵小杉駅に連絡、そこからJR湘南新宿ラインに直通する路線が新たに作られたのです。相鉄としては初の都心直通線で、相鉄沿線から新宿や渋谷、さらに埼玉方面へのアクセスが今までよりもずっとスピーディになりました。

神奈川から都心、埼玉への移動が便利に

 相鉄線の拡張計画は、これだけに留まりません。2023年3月には、東急線との相互直通運転が開始される予定となっています。羽沢横浜国大駅から新横浜駅までの路線を相鉄新横浜線として、新横浜駅から日吉駅までの路線を東急新横浜線として新設し、相鉄沿線と他の様々な路線を接続。東急線を経由して、東京メトロ南北線・副都心線、都営三田線、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線、東武東上線との直通運転も予定される壮大な計画です。これが実現すると相鉄沿線から渋谷や目黒、さらに埼玉県にまでつながる広域鉄道ネットワークとなり、神奈川県から他エリアへのアクセスが抜群に良くなるでしょう。一例を挙げると現在、二俣川駅から目黒駅まで行くには横浜駅と大崎駅で乗り換えなければならず、54分ほどの所要時間がかかりますが、相鉄東急の直通運転が実現されると所要時間約38分に。海老名駅から渋谷駅までも約36分で行けるようになり、相鉄沿線から都心に無理なく通勤できるようになるはずです。

 また、新横浜駅が他の路線とつながるメリットも見逃せません。新横浜駅は1日の乗車人員(JR東日本)が4万人を超える東海道新幹線の駅ですが、現状ではJR横浜線と横浜市営地下鉄ブルーラインしか乗り入れておらず、新幹線に乗るためには多くの利用客が途中で乗り換えなければならない不便さがありました。相鉄線、東急線が乗り入れることで、こうした不便さが大幅に改善されると見込まれます。

相鉄線沿線の住宅ニーズも上昇の兆し

 さて、相鉄沿線の利便性が良くなると、不動産にはどのような影響があるでしょうか? 二俣川、大和、海老名といったベッドダウンに神奈川県内、都内から移住してくる人がさらに増えることが予想できます。事実、相鉄とJR直通路線が開業する直前の2016年、二俣川駅前に建てられた駅直結の高層マンションは、販売開始から半年ほどで完売。二俣川駅周辺の家賃相場も、直近の3年で7.18%ほど上昇しています。(出典:「不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME’S 住まいインデックス」https://lifullhomes-index.jp/info/areas/kanagawa-pref/05211-st/rent/mansion/  ※執筆時点の数字で計算)。こうした住宅ニーズ高まりの背景に、相鉄線直通運転による利便性向上の影響があることは間違いないでしょう。

 また、相鉄グループは自ら駅周辺地域の住宅地開発を進め、南万騎が原駅周辺にも新築マンションを建設。現在はまだ開発途上にある地域も多い相鉄沿線ですが、今後、住宅供給量が増えていけば流入者数も増えてくると予想されます。これまで緑豊かで戸建て中心の閑静な住宅地といったイメージだった南万騎が原駅や西谷駅周辺なども今後、住宅ニーズの高まりに合わせて再開発の対象となる可能性があるでしょう。また、新設された羽沢横浜国大駅についても、2023年度中の完成を目指して駅前の再開発工事が行われています。住居と商業地区を一体化したタワーマンションの建設も予定されており、これからの発展が楽しみな地域です。

 流入が期待されるのは、ファミリー層ばかりではありません。渋谷や目黒などの都心に通うサラリーマンも二俣川や海老名から通勤圏内となり、単身世帯による賃貸ニーズの拡大が期待されます。さらに新幹線を利用して移動する機会が多いビジネスマンも、周辺から移住してくる可能性があるでしょう。現在、相鉄線沿線の家賃相場は東急線などと比べて若干低い傾向にありますが、前述したように二俣川駅周辺など一部地域では家賃上昇の兆候が既に顕れており、この傾向が今後、拡大していく理由はあっても、縮小していく要因はあまり見当たりません。

 相鉄沿線は、ゆったりとした雰囲気の住宅環境と豊かな自然環境、駅周辺に集中した便利な商業施設などが魅力。みなとみらいや鎌倉、湘南、箱根など神奈川県内の人気観光スポットに行きやすいのも利点です。こうした魅力を残したまま、都心への利便性が向上すれば、より魅力的な住宅地へと変貌するに違いありません。不動産投資の観点で見ると、周辺地域に比べて地価が低めであり、かつ今後の賃貸ニーズ上昇が期待できる地域でもあります。ただし、神奈川県、特に横浜市周辺はもともと賃貸物件の競争が激しいエリアであり、早計な判断は禁物。不動産投資における立地、物件の選定は自身だけで判断せず、経験豊富なプロに相談するのが賢い方法です。シノケンには土地選定などアパート経営にまつわる専門知識をもつスタッフが豊富に揃っています。

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最終更新日:2022.06.16

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