
レントロールからアパートの収益性や将来性を読み解く
「レントロール」という言葉をご存知でしょうか? 「レントロール」は、アパートなど不動産投資の対象となる賃貸物件について、部屋ごとの間取りや面積、家賃等を記した資料のことです。集合住宅における契約状況等の明細書と思えば分かりやすいでしょう。この記事では「レントロール」の見方や注意したいポイント、物件の収益性や将来性を判断する方法をガイドします。
レントロールは賃貸物件の良否を判断する材料
アパートなど集合住宅に投資、あるいは中古物件として購入しようとする場合、表面利回りなどの概要を見るだけでは十分とは言えません。レントロールは部屋ごとの賃貸借契約状況を、誰もがぱっと見て分かるようにまとめた表のことです。しかし、決まった書式があるわけではありません。従って記載されている項目もレントロールを担当する不動産会社ごとにバラバラなので、ここでは一般的な例で解説します。
まずは、「階数」と「部屋番号(号室)」から何階に何室あるのか確認します。部屋番号はオーナーの好みで決められるため、必ずしも順番になっているとは限りません。「4」のつく部屋番号は縁起が悪い、と抜けていることもあります。次に、部屋ごとの「専有面積」「間取り」を確認。専有面積については、検索にヒットしやすいかが大事なチェックポイント。たとえば、ポータルサイトでの検索では10㎡単位になっていることが多く、19㎡の部屋より20㎡の部屋の方が検索に引っかかる可能性が高まります。間取りは、物件の商品性、魅力と言える部分です。単身者が多い地域なのに、ファミリー向け物件が多く配分されていないか、といったマーケティング視点での適合性をチェックします。一般的に単身者向け物件は入居者の入れ替わりが早く、空室になっても比較的早い段階で入居が決まりやすい反面、募集広告費など高くなりがち。ファミリー向け物件は入居期間が長い傾向があるものの、一旦空室になると次がなかなか決まらないリスクがあることを理解しておきましょう。仮に築年数が経っている物件であっても、間取りや面積が地域特性に合っていれば、リフォームすることで商品力をアップできるかもしれません。
部屋ごとの「賃料」と「共益費」「敷金」は、最も重要なチェックポイントです。賃料が地域の平均的な水準に合っているか、大きく異なっている場合、その理由は何かを確認します。レントロールでは、下記の「契約状況(現況)」で空室となっている部屋も、想定される賃料が記載されていることがあります。その場合、あくまで見込みなので、想定賃料で入居が決まるとは限りません。同タイプの部屋と比べて高い賃料となっているなら、なぜその価格に設定されているのか(リフォームしたなど)、現オーナーや不動産業者への確認が必要です。共益費は、建物の適切な維持管理に見合っているかをチェック。物件によって、共用部分のかかるコストは異なります。レントロールには通常、記載されていませんが、共用設備などの維持費用とあわせて確認する必要があるでしょう。ちなみに共益費は、必ずしも賃料と別個に設定しないという決まりはなく、物件によっては賃料に含まれていることもあります。逆に、見た目の賃料を下げるために、共益費が高めに設定されている物件も。その場合、「家賃○か月分」とされる敷金や礼金、契約手数料が少なくなることも考えられます。賃料と共益費はひと括りの収入として捉え、敷金礼金など入退居時の費用とあわせて綿密に計算すべきでしょう。
なお「敷金」については退居時に、居住者負担分の原状回復費などを差し引いて返還しなくてはなりません。当該物件を購入する場合、預かっている敷金は承継されるのか、それとも予め購入費用から差し引かれているのか、確認が必要です。
現況からアパートの将来性を予測
「契約開始日(更新日)」が記載されている場合は、それもチェック。2年ごとの更新日だけが記載されている場合もありますが、できれば契約開始日を確認したいところです。たとえば長い期間にわたって入居している部屋だけ、賃料が契約開始当時のまま高めの水準になっていることがあります。その場合、古くからいる入居者が退居してしまうと、家賃を低く設定し直して募集する必要があるかもしれません。契約開始日が古い部屋より、新しい部屋の賃料が大きく下がっている場合は、物件としての価値が急激に落ちているということであり、今後もそのペースで収入が減り続けると考えられます。現時点だけでなく、将来の収益を予測することが大切です。
「契約状況(現況)」には通常、入居、空室の状況が記載されています。空室が多い物件を避けた方が良いのはもちろんですが、空室となっている理由が退居による一時的なものなのか、立地や建物などに起因する恒常的なものなのかを判断します。家賃設定が、市場価格と合っていないことが原因なら見直しが必要となり、見込みより収益が減ってしまうかもしれないので注意します。入居年月の長い部屋は、退居時の原状回復費用(オーナー負担分)が多くかかることも想定しておきましょう。
レントロールには、個人、同居人数、法人など「入居者の属性」が記載されていることもあります。法人による一括or複数室借り上げは家賃滞納が少ない等のメリットがありますが、いっときに多くの入居者が退居してしまうリスクや個人向け物件よりも家賃設定が低い=収益性が悪くなっている可能性もあります。いざ、当該物件に投資しようという段階では、借り上げている会社の経営状態や移転予定なども念のため確認した方が良いでしょう。
「備考」欄には通常、事故などの告知事項やリフォームした時期、フリーレントなどの入居条件が記されています。レントロール内では省略されてしまう項目もたくさんあるため、気になる点があれば現オーナーや不動産会社に確認します。
その他の資料とあわせて総合的な判断を
レントロールに記載される一般的な項目は以上ですが、他にも確認しておきたいことはたくさんあります。たとえば、駐輪場や駐車場があるなら、その利用料金はどうなっているか? また無料インターネット等、共益費で賄えない支出が発生していないか、滞納が続いている入居者がいないか等です。レントロールはその言葉どおり、賃貸に関する内容しか記載されていないことが多いため、その他の収支は別個に確認する必要があります。
レントロールは物件概要書、謄本、大規模修繕履歴書などとともに、確認しておきたい資料のひとつに過ぎませんが、投資物件としての良し悪しを見極める上で重要な情報源であることは確かです。レントロールを見る上で大切なのは記載されている数字だけを鵜呑みにするのでなく、他の資料とあわせて総合的に判断すること。そして将来の利回りをシミュレートすることです。中古賃貸物件の購入を検討しているならできるだけ多くの資料を入手し、さらに現地確認もした上で投資すべきか否かを判断しましょう。
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