元本を2倍にするのに何年かかるかは「72の法則」を使う

2021.07.22

 不動産、株式など投資で一般的によく使われる計算方法に、「72の法則」というものがあるのをご存知でしょうか? 利回りが分かれば、元本を倍にするのに何年かかるかすぐに分かる、とても便利な法則です。今回はこの「72の法則」について解説します。

元本が2倍になる年数をすぐに導き出せる計算式

 以前掲載したFIRE(経済的自立と早期退職)の記事では、若者の間でFIREムーブメントが起きている背景、FIREの基本的なルールについて解説しました。その中で「生活費を抑え、貯蓄率を上げて生活費25年分の貯金を築き、その資金を元本に資産運用する」ことの意味を説明しましたが、ただ貯蓄するだけよりも、資産運用して元手を増やしていった方が効率的であることは言うまでもありません。

 「72の法則」とは、「元本を2倍に増やしたいとき、特定の年利率なら何年かかるか」、あるいは「特定の年数で元本を2倍にするには、年利率何%である必要があるか」を簡易的に計算するための法則です。以下の式に値を代入して答えを求めます。

 年利率(%)× 年数(年) = 72

 上記の式に特定の年利率を当てはめると、元本を倍にするのにかかる年数が分かります。逆に特定の年数を当てはめると、年利率が導き出されるというわけです。

 たとえば年利率が4%の場合、4×年数=72の式を展開し、72を4で割ると18、つまり元本を倍にするのに18年かかることが分かります。また仮に20年で元本を2倍にしたいと思った場合、年利率×20=72を展開して計算すると、3.6%であることが分かります。

あくまで簡易的に計算するための手段

 貯蓄や投資など利子がつく資産が数年後、いくらになるか? を計算するのは意外に複雑で、1年後は元本に利率を乗じた金額が上乗せされるだけですが、2年後以降は「前年度に利子分加算で増えた元本」に対して利子を掛ける必要があります(利子にも利子がつく「複利」が前提です)。そのため、「年利率○%の場合、元本が倍になるまでに何年かかる?」と聞かれて、計算機なしにすぐに答えられる人は希でしょう。「72の法則」はそれを可能にしてくれるものですが、実はこれ、厳密な計算式ではありません。元本を2倍にするときの年利率と年数を正確に計算するには本来、金利や年数によって異なる数字を用いる必要がありますが、それでは使い勝手が悪いため、約数(割り切れる数字のこと)の多い近似値「72」が使われているのです。

 しかし厳密に計算した数値と比べても、誤差は僅かです(年利8%or年数8年付近で最も正確な数字に近くなりますが、条件によって69や78などの数字を使った方が理論値に近くなるケースもあります)。年利率や年数さえ分かれば、その場で答えが出せる利便性こそ、「72の法則」が重宝されている理由です。

 投資商品の利回りを見たとき、元手が2倍になるタイミングが一瞬で分かれば、その後のライフプランをイメージしやすくなるでしょう。「72の法則」はあくまで簡易な計算方法ですが、投資においてはそうした即時性の高さも、ときに重要な視点となります。

 なお、上述したように「72の法則」は「複利」であることが大前提。複利とは、利回りによって増えた(または減った)元本を、そのまま全額また元本として投資し、雪だるま式に資産を増やしていく方式のことです。株式などの金融投資では一般的ですが、アパート経営など不動産投資においては、一度投資した元本を数年、数十年にわたって運用する「単利」方式が一般的です(仮に一年ごとに不動産を売却、もしくは不動産資産を担保にして融資を受け、次なる投資の元本をするなら複利となります)。

 一見、複利式は効率が良いように見えますが、利回りの変動によって元本割れするリスクがあることも忘れてはいけません。単利である不動産経営にももちろんリスクはありますが、空室対策などをきちんと行えば安定的な収益を得ることが可能です。単利と複利、両者のメリットやデメリットを理解した上でうまく組み合わせ、賢く資産運用するのが賢明な方法でしょう。

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最終更新日:2021.07.22

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