
スマートロックが不動産管理業務を効率化する可能性
あらゆる分野において“スマート化”が進む現代。物理的な鍵のかわりにスマートフォンなどでドアを解錠施錠できる、後付けの「スマートロック」は近年、大ヒット商品となりました。このスマートロック、最近ではアパートなど賃貸住宅管理に狙いを定めた製品、サービスが登場し始めています。今回は賃貸住宅向けスマートロックを紹介しつつ、管理業務の効率化といったアパート経営における効果について考えてみます。
賃貸住宅専用のスマートロックも登場
「Qurio Lock」など既存の錠前に後付けできるスマートロックは、スマートフォンの利便性を活かしたIoT時代の新しいツールです。物理キーを持ち歩かずに済み、紛失する心配がないことや、既存の錠前を加工せずに取り付けられるため、賃貸住宅でも利用できること、製品価格がリーズナブルなこと等がヒットの理由でしょう。物理キーを差し込んで回す煩わしさがないので、買い物などで両手がふさがっている時にも便利です。鍵のかけ忘れを防止するオートロック機能や、遠隔地から解錠施錠できるリモート機能など、物理キーにはない機能を備えている製品やオプションサービスもあります。シェアハウス、コワーキングスペースなど複数の人が利用する空間のセキュリティを確保するのも、スマートロックなら簡単です。
また、そうしたセキュリティ目的だけでなく、オフィスでタイムカードのかわりに社員の出退勤を管理するツールとしても使える機能を有しています。こうした拡張性の高さを、賃貸住宅の管理に応用する専用のサービスが登場しました。スマートロック各社のサービスを見てみましょう。
1.NinjaLock M
「NinjaLock M」は、個人ユーザー向けの「NinjaLock」を製造販売するライナフと鍵の総合メーカーである美和ロックが共同開発した賃貸住宅専用スマートロックです。入居者のほか、工事会社、不動産仲介会社、内見等、部屋に立ち入る人の種類、目的ごとに、解錠施錠をコントロールできる「運用モード」を備えているのが特長です。
スマートロック本体のテンキー、専用カード、アプリという3種類の解錠方法が用意されているほか、緊急時には既存の物理キーも利用可能。テンキーにはのぞき見防止機能、フェイクピン機能(先に表示されるフェイクの数字を消去してから暗証番号を入力する方式)が備わっており、セキュリティ対策も万全です。オートロック、タイマーロック、電池残量表示機能は入居者にとって便利な機能でしょう。
「運用モード」では、管理会社用のマスター権限、工事業者や不動産仲介業者用の期間限定権限、入居者用の権限を「工事中」「空室中(退去時)」「入居中」とモードを切り替えて権限をコントロールできます。スマートロック本体はダブルロック、プッシュプル錠など様々な錠前に対応。鍵製造の歴史が長い美和ロックとの共同開発なので、品質や耐久性も安心です。シンプルなデザインで建物外観の雰囲気にマッチしやすいのも長所でしょう。
2.ライナフの各種スマートサービス
不動産管理用システムを開発するベンチャー企業ライナフは、「NinjaLock M」以外にも様々なサービスを提供しています。たとえば、建物の共用部分となるエントランスの解錠をスマートフォンや遠隔地からの操作で可能にする「NinjaEntrance」。既存のオートエントランスに取りつけるだけで使え、大規模な工事は不要。各戸玄関のスマートロック、共用部のスマートエントランスを一元管理する「スマートブッキング」というサービスもあります。
他にも、内覧希望者にインターネット上で電子キーを発行し、鍵の受け渡し、業者の立ち会いを不要にする「スマート内覧」など、ライナフでは不動産管理にまつわる煩雑な業務を効率化する、様々なサービスを展開しています。
3.カギカン
「カギカン」は、個人ユーザー向け製品として大人気となっている「Qrio Lock」の法人向けサービス。オフィスやレンタルスペース等、複数人が利用する空間の合鍵を、PCなどから一元管理することができます。
「Qrio Lock」は、ソニーの100%子会社であるQrioが製造販売するもので、スマートフォンに触れなくても持っているだけで解錠できるハンズフリー機能が特徴。専用キーの他、スマートスピーカーやApple Watch、スマートリモコン等、様々なデバイスでの操作に対応しています。
「カギカン」のサービスを利用すると、管理者がPCやスマートフォン、タブレットから「Qrio Lock」の合カギを作成したり、解錠施錠したりすることが可能になります。また入退室の履歴も残るので、誰が利用したのかを把握できるのも特長。月額7,980円というリーズナブルな料金で利用できるのも魅力です。
スマートロック導入は不動産管理者にとってもメリット大
スマートロックを導入することで、入居者は利便性、セキュリティ性が向上するメリットを享受できます。これは競争熾烈な賃貸住宅において、大きな付加価値となるでしょう。
また、合鍵の作成や内覧、内見時の手間が省けることは、不動産管理会社、オーナーにとってもメリットがあります。物理キーと違って鍵を紛失する心配がなく、錠前を交換するコストがかからないのも魅力です。さらに、入退室や入居、空室の状況、共用設備の利用等を一元管理してデータを蓄積することが、不動産経営上のメリットになる可能性もあります。こうした賃貸住宅のスマート化は、今後ますます進んでいくことでしょう。