アパート経営のノウハウ

旗竿地・狭小地、変形地のメリット・デメリットとは?

2021.03.04

 土地の形はさまざま。中には旗竿地や狭小地、変形地など、通常の長方形とは異なる形の土地も存在します。アパートなどの住居を建てるには、四角い土地が良く、変形した敷地は敬遠されると思われがちかもしれませんが、土地購入者、不動産投資家の目線で見ると、一概にそうとも言えません。今回は旗竿地、狭小地、変形地のそれぞれの特徴とメリット・デメリット、活用法を紹介します。

旗竿地・狭小地・変形地のそれぞれの特徴

 変形敷地にはさまざまなタイプが存在しますが、ここでは代表的な「旗竿地」「狭小地」「変形地」の特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。

旗竿地の特徴

 旗竿地とはその名の通り、細長い竿に長方形の旗をつけたような形状をしている土地のことです。どうして土地がこのような不思議な形になるのでしょうか? もともと道路から奥まった場所にある土地に、アクセスするための通路を付け足したという経緯が多いようです。

 旗竿地の場合、建築基準法に適合しているかを注意しなければなりません。建築基準法第43条では、建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならない(都市計画区域および準都市計画区域内にのみ適用)という「接道義務」が規定されているためです。その基準に適合させるべく、接道する通路を2m以上に拡幅している旗竿地も存在します。

■旗竿地のメリット
・価格が安い
 旗竿地などの変形敷地は同じ地域、同じような面積の一般的な土地と比べて価格が安い傾向にあります。初期投資を抑えられることは、不動産投資において決して小さくないメリットです。同予算なら土地が安く手に入る分、建物にコストをかけたり、より広い土地を手に入れることもできるでしょう。

・静かな環境
 道路から離れていることで、走行する自動車などの騒音が建物まで届きにくくなります。また道路を行き交う人の目から触れないことで、プライバシーが守られるメリットもあります。

・通路部分を活用できる
 接道義務を満たすための細長い土地を、庭や駐車場、駐輪場などとして活用することができます。設計次第でプラスアルファの価値をつけることも可能でしょう。

■旗竿地のデメリット
・日当たりや風通しが悪いことも
 四方が他の建物に囲まれている物件の場合は、日当たりや風通しに問題を生じることがあります。ただし、この問題は設計の工夫によって解決できることもあります。

・建築コストが上がってしまうことがある
 道路に面している土地の幅が狭く、建物が奥まっているため、建築の工数、職人の労力が増えコストが高くなってしまうことがあります。土地購入費とのバランスを考える必要が出てくるかもしれません。

・駐車場を確保しにくい
 旗竿地は接道部分の土地幅が接道義務の基準を満たす2mギリギリになっていることが多く、敷地内に普通車が出入りをしたり、駐車したりするのが難しい場合もあります。

狭小地の特徴

 面積が極端に狭い土地のことを一般的に狭小地と呼びます。明確な定義はありませんが、20坪(約66㎡)以下の土地を狭小地と呼ぶことが多いようです。成り立ちはさまざまで、かつて広かった土地を分割し、購入しやすい価格としたなどのケースが考えられます。なお、現在は建築基準法によって最低敷地面積(地域ごとに異なる)が制限されているため、このような事例は減りました。

■狭小地のメリット
・価格が安い
 面積が狭い分、土地の購入価格が下がるのは当然として、固定資産税や都市計画税の土地評価分、またその評価額によって金額が決まる登録免許税額(登記の際に納める税金)なども安くなります。さらに建物が必然的にコンパクトな設計となるため、修繕費などのランニングコストも抑えられることが多いでしょう。

 他にも、駅近などより条件の良い土地をリーズナブルに入手できる可能性もあります。

■狭小地のデメリット
・個人向けのローンを組みにくい
 フラット35などの個人用住宅ローンでは、借り入れの条件として一定の敷地面積以上を設定している場合が多くなっています。

・建築費用が高くなるケースも
 狭い土地でも生活に不便を感じない住宅を設計するには、それなりの工夫が必要です。結果として設計費用がかさむことが考えられます。間口が狭く奥に細長い土地の場合には、建築費用が上がることも考えられるでしょう。

 また床面積を稼ぐために3階建て以上とすれば、面積あたりの建築費用はさらにアップ。3階建て以上の建物では耐火建築物にする必要があるため、資材費用も高くなります。

変形地の特徴

 変形地とは、一般的な長方形ではなく、三角形や台形、五角形などの変則的な形をしている土地のことを指します。旗竿地も変形地の一種といってよいでしょう。また斜面になっている、段差があるなど、平坦ではない土地のこともあります。

■変形地のメリット
・価格が安い
 同じ面積で長方形の土地に比べると、安い価格となることが多いようです。

・土地の形を生かして個性的な物件にできる
 面積が広い変形地の場合には、建物を建てる土地を長方形とし、余った土地を庭にするなどの工夫で個性的な物件にすることができるでしょう。狭い変形地の場合でも、土地の形を生かした建物を建てることができれば、個性となります。

■変形地のデメリット
・有効に使える面積が少ない
 変形地の中に一般的な形の建物を建てようとすると、どうしても余りの土地が生じてしまい、建物の床面積が狭くなってしまいます。

・設計・建築費用が高くなる
 土地の形を生かした建物を建てようとすると、設計費用や建築費用が高くなりがちです。

旗竿地・狭小地・変形地を生かした事例も

 これら狭小地、変形した土地は一見するとデメリットが多いように見えますが、設計の工夫次第で弱点をカバーし、メリットに変えることもできます。例えば狭小地の場合は、建物の天井を高くしたり、吹き抜けの構造にしたりすることで床面積以上の開放感を演出できます。変形地の場合も、建物の形を多角形にすることで窓の数を増やすことが可能です。余白となる部分の土地を、庭やリビングバルコニーとするのも一案でしょう。段差や傾斜がついた土地の場合は、スキップフロアを採用することで床面積を稼げます。

地形を最大限に活用したアパート経営を

 周辺の土地よりも安い価格で手に入れやすいのが、狭小地や変形地における最大のメリットです。工夫次第で条件の良い土地を比較的低い価格で入手できたり、収益性の高い物件にできたりするケースがあります。

 そうした土地の価値を最大限に生かすには、変形地のメリット・デメリットを熟知したプロの知見が必須となるでしょう。これからアパート経営を始めようと考えている人は、まずはプロに相談してみてはいかがでしょうか。

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最終更新日:2021.03.04

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