
税理士からみた不動産投資のメリットとリスク
金融資産投資との比較による不動産投資のメリット
1)勝ちパターンがわかりやすい
金融商品の相場の変動は、個人ではまったくコントロールが効かず上げ下げの読みを誤りやすいが、不動産投資の場合は、入り口の目線さえ間違えなければ、その後のリスクはかなり低減できる。空室対策、リフォーム、入居促進、民泊使用など、自身の努力によるテコ入れ策を行うことも可能。
2)レバレッジ効果
自己資金が少なくローン中心に投資をすることが可能。金融資産の場合は、証拠金を拠出することにより信用取引などが可能であるものの、不動産投資ほどの倍率ではなく、金融商品の値下がりが起きた場合は「追証」「ロスカット」などの措置も発生する。
3)時間の制約がない
金融商品の売り買いの判断は、一瞬のミスが命取りになりかねず、特にデイトレーダーの場合は常に板に貼りついていなければならないが、不動産の売り買いの判断は、比較的時間をかけて検討することができるので、副業向きである。
4)インフレヘッジ、デフレヘッジ
インフレが発生した場合、不動産の資産価値は上がるが、ローンの金額は変わらないので、インフレヘッジになる。また、デフレが発生した場合、賃貸料は価格硬直性が高く、極端な下げはないので、デフレヘッジになる。
5)生命保険代わりになる
団信に加入していれば、所有者本人が死亡した場合、ローンがなくなって配偶者や子供に相続することができる。
不動産投資のリスク(注意点)
1)空室リスク
駅との距離、都心か地方かなどの利便性に注意する必要がある。
2)家賃下落リスク
築古になるほど、家賃を下げなければいけない可能性がある。
3)金利上昇リスク
変動金利の場合、金利負担が増える可能性がある。
4)災害・事件リスク
地震、台風、シロアリ、入居者の死亡などにより破損・事故物件となる恐れがある。
5)修繕リスク
築古になるほど、設備の交換や修繕が嵩む。
6)換金性が悪い
金融資産に比較して、すぐに現金化できない。
7)入居者リスク
滞納や騒音を起こす入居者が発生する可能性がある。
不動産投資を行った際の節税策(個人所有の場合)
1)経営規模が5棟10室基準を超えた場合、青色申告控除が10万円から55万円or 65万円に増え、不動産所得(黒字)をその金額だけ圧縮できる。
2)経営規模が5棟10室基準を超え、かつ配偶者など生計を一にする親族に収入がない場合、その親族に青色専従者給与を支給することにより、不動産所得(黒字)をその金額だけ圧縮できる。
→ 所得が1000万円以上で、配偶者に収入がないにもかかわらず配偶者控除が使えなくなった高所得者は、5棟10室基準を超える不動産投資を行うことにより、配偶者に収入がない状況を再活用することが可能となる。
【年収2000万円のサラリーマンが5棟10室基準を超える不動産投資を行った場合の上記の節税効果】
不動産所得の圧縮効果:青色申告特別控除65万円+専従者給与8万円×12ヵ月=161万円
∴161万円×税率=約70万円の節税効果
法人による不動産所有のメリット(所得税の圧縮効果)
●所得税による累進課税の回避
⇒ 個人所得税の累進課税よりは、法人税の軽減税率の方が安い場合が多い。
他の親族にも役員報酬(給与)を支給すれば、さらに累進課税の回避効果が高くなる。
●法人から役員報酬の形で受け取ることにより「給与所得控除」のメリットを享受
⇒ 令和2年以降、給与収入850万円以上で、上限195万円の所得控除
●土地利子の損金不算入
⇒ 個人はあるが法人にはない。個人の場合、切り捨てられる分がもったいない。
●税制上の融通
⇒ 個人は繰越欠損金が3年間で切り捨て。法人は9年間利用可能。
また個人は減価償却費を強制的に計上。法人の場合は毎年任意に選択可能。
●中小機構の制度を利用
⇒ 倒産防止共済(法人の節税)、小規模企業共済(個人の節税)
●退職金支給により法人から個人へ資金移動をすることが可能
⇒ 退職所得は、(退職金ー控除額)×1/2(5年以上勤務の場合)で計算される。
●経費の認められやすさ
⇒ 個人:不動産収入を得るために「直接必要な費用」→購入に至らなかった視察諸経費は×
法人:事業目的で不動産事業を掲げておけば、購入に至らなかった視察諸経費でも○
【参考】所得税の累進課税の仕組み
日本の所得税は累進課税の制度を取っています。平成27年から平成49年までの復興所得税を含む税率は以下のとおりです。

さらに住民税が10%加算されますので、最高税率は55.945%にまで到達します。
また、所得が増えるほど、「国民健康保険料」「社会保険料」も増大します。不動産所得が年間290万円以上になると、超えた部分に5%の「個人事業税」が課せられます。
【参考】法人税率と所得税率の比較

法人のメリット(相続対策効果)
●役員報酬による資産の分散
⇒ 相続人(子)に役員報酬を支給することにより被相続人(親)に相続財産が蓄積されるのを予防する。法人の役員報酬は、個人の不動産所得による専従者給与よりも否認されるリスクは低い。
●相続時の評価(所有型法人の場合)
⇒ 個人所有の場合はダイレクトに不動産の評価額が相続財産の価額になる。法人所有の場合、法人株式の評価額が相続財産の価額となる。通常の場合、法人株式の方が低めに評価される。
●相続財産の一部自動移転(所有型法人の場合)
⇒ 法人を設立する際に配偶者や子供も株主に入れておけば、将来の相続財産は自分の所有株式分のみとなり、相続税を減らせる。子供を株主にするのに年齢制限はない。
●相続財産の譲渡、贈与
⇒ 被相続人から相続人へ、個人間で譲渡する場合、不動産の場合は登記費用や不動産取得税などのコストがかかる。ただし、法人が不動産を所有しておけば、株式の譲渡手続きのみで、すべての不動産を譲渡できる。
●会社で生命保険に加入
⇒ 相続人が死亡時には、死亡退職金を支給して納税資金に充てる。退職金はみなし相続財産となるが、各相続人ごとに500万円までは相続税の課税が免除される。
法人化の際に留意すべき事項
●設立費用、維持費がかかる
⇒ 設立費用が15万円~35万円ほどかかる。
法人住民税均等割が年7万円かかる。
税務申告のコストもかかる。
●法律上は社会保険に加入しなければならない
●個人から法人への貸付は、相続財産になってしまう
⇒ 相続発生前に可能な限り個人の貸付金は圧縮しておくこと。
●土地を法人所有にした場合、小規模宅地の特例は適用されなくなる
⇒ 個人所有の場合、相続発生時に収益アパートの貸付地について200㎡まで評価額の50%減額が認められる。
そのため、土地は個人所有、建物は法人所有というパターンが多い。
●原則、団信が適用されなくなる
⇒ 本人が死亡してもローンは消えない。
なお、法人所有でも団信が付けられるケースがあるが、その場合本人が死亡すると法人に「債務免除益」が計上 されてしまうことに注意。
初心者が参入しやすい収益不動産のタイプ①
● オフィスビル
(長所)
一等地であれば常に満室。
テナントの業種や立地によって高収益をあげられる可能性あり。
機能性さえあれば内装や間取りの流行遅れで空室になるということはない。
(短所)
一度退去があると、空室が長期化する可能性あり。
事業法人が貸出先なので法外な値引きやフリーレントを要求される場合がある。
● レジデンス(住居)
(長所)
立地と管理が標準的なレベルであればある程度の稼働率が見込める。
空室対策のイメージが持ちやすい。
賃料の大幅な値引きやフリーレントの要求はあまりない。
(短所)
事故物件はしばらくテナントが付きにくくなる。
敷金や礼金は取りづらくなっている。
内装や間取りが流行遅れになると空室率が上がる。
⇒ 初心者は、オフィスビルよりもレジデンスの方が参入しやすい。
初心者が参入しやすい収益不動産のタイプ②
● 中古のRC
⇒ 耐用年数が長い(47年)ため、中古でも残存耐用年数が確保でき、ローン期間を長めに設定可能。
建物が堅牢なので金融機関としても担保評価額を出しやすい。
規模が大きいので一棟当たりの不動産収入は大きい。
間取り変更やインフラの修繕が難しい。修繕費・解体費用が巨額。
巨額な物件は、将来的に売り手を見つけにくい。
● 新築木造
⇒ 耐用年数が短い(22年)ため、新築でなければほぼローンが付かない。
規模は小さいので分散投資が可能。
間取り変更やインフラの修繕が容易。修繕費・解体費用が安い。
新築の場合、家賃収入が2廻り目以降は下落する傾向がある。
● 区分所有マンション
⇒ 修繕積立金及び管理料以外の経費はほぼ掛からず、安定的。
利回りは低く、インカム・ゲインはあまり期待できない。
一等地の高層マンションであればキャピタル・ゲイン投資の対象となり得る。
金融機関は投資ローンと判断する傾向がある。
自分がシノケン社を選択した理由
不動産業界は、高額な投資商品を買わせることにより、営業担当者にマージンが入る仕組みなので、決して倫理観の高い業界ではない。
新築アパートの分野でいえば、新築時の想定家賃を高く設定し、利回りが良いように見せかけ、実際は2周り目から家賃を下げないと入居者が付かないようなケースも多い。その点、シノケン社は、最初から無理気味な家賃設定はしていない傾向にある。社員の倫理観も高い。
木造アパートの場合、法定耐用年数が短いため、RCに比較して長期間のローンが組みづらい傾向がある。しかしシノケン社のアパートは、一定の金融機関と提携関係があり、比較的長期のローンを組むことができる。
年数が経過するほど修繕費や消耗品費が発生しやすいが、壁紙の張替えやエアコンの交換料は、一定の条件に無償にしている。