アパート経営のノウハウ

アパート経営の好調さを示す「個人事業税」ってなに?

2021.02.12

不動産投資の収入が増えると「世の中にはこんなに多くの税金があったのか」と驚かされるもの。会社からもらう給与等の収入においては、税金は天引き(=源泉徴収)されるのが一般的であるのに対し、給与以外の所得では自分自身で申告、納税しなくてはならないためです。

不動産取得税、固定資産税、所得税はその代表格。さらに不動産投資が軌道に乗り、規模が大きくなると個人にも「事業税」が課せられます。

この記事では個人事業税とはどんな税金なのか、どんな人が対象なのか、税率の計算方法などを詳しく解説していきます。


個人事業税とは?

「事業税」というと法人だけにかかるものと誤解している人もいますが、不動産賃貸などの業種では、特定の条件下で個人にも課せられます。事業税は事業を営む人に課せられる地方税で、所得税など国(地方税務署)に納める税金とは異なり、都道府県に申告、納税します。

先ほど「個人事業税」と書きましたが、税法上は単に「事業税」となっており、個人と法人は課税対象となる基準や税率で区別されているのみ。法人はより細かく税率が分かれており、全て解説すると膨大になってしまうので、この記事内では個人の場合のみを解説します。


個人事業税の課税対象は?

個人で給与以外の収入を得ていても、すべての人が事業税を納めなくてはならないわけではありません。事業税の課税対象となるのは、以下の条件を満たす人です。

・法定業種を営んでいて、前年度の事業所得が290万円を超える人

法定業種とは、法律で定められた70種類の業種のことで、ほとんどの事業が当てはまります。アパート・マンション経営や駐車場経営も例外ではなく、「不動産貸付業」「駐車場業」として第1種事業に該当します。

ただし、「不動産貸付業」と「駐車場業」については例外的で、「事業的規模である」と認定されなければ、課税対象にはなりません。事業的規模であるかどうかの認定基準は都道府県によって異なります。

例えば東京都の場合、一戸建ての住宅なら10棟以上、一戸建て以外の住宅(アパート等)なら10室以上であることが認定基準。土地は契約件数が10以上または貸付総面積が2,000㎡以上だと課税対象になります。共有物件の場合は、持分にかかわりなく、共有物件全体の貸付状況により認定されます。青色申告の認定基準とは異なるので注意が必要です。


事業所得の基準となる290万円は、青色申告特別控除を差し引く前の金額です。所得が290万円以下の場合は、全額控除となるため課税対象になりません。


個人事業税の計算方法は?

「不動産貸付業」「駐車場業」など第1種事業の個人事業税率は5%です。計算方法は比較的単純で、下記の通りです。

(不動産(事業)所得+所得税の事業専従者給与(控除)額-個人の事業税の事業専従者給与(控除)額+青色申告特別控除額-各種控除額(事業主控除290万円を含む))×税率(5%)=税額

要するに、自分への給与と青色申告特別控除を差し引く前の所得金額(総収入から必要経費等を引いた金額)から、事業専従者への給与(青色申告の場合は全額、白色申告で配偶者の場合は86万円まで、その他の場合は50万円/人が限度)を引いた金額に5%をかけた金額が税額となります。

青色申告していても特別控除は適用されませんが、所得が赤字の場合は3年間の繰越控除ができます。また、災害によって資産の損失があるとき(3年間)、資産譲渡による損失があるとき(白色申告は当該年のみ、青色申告は3年間)も、その金額を控除することができます。

例えば300万円の不動産所得があり、自分以外には給与を払っていない場合、(300万円―290万円)×5%の5,000円が個人事業税額です。

実際には申告書に記載した必要事項に応じて地方自治体が計算し、納税書が送られてくるので、事業主自身が計算する必要はありません。ただ、不動産経営における計画を立てる上では、計算式を知っておいて損はないでしょう。

なお、個人事業税は損金計上できるのもポイント。固定資産税等と同様、事業を営む上での必要経費と見なされるのです。一方で所得税や住民税等は個人に対して課せられる税金であるため、必要経費になりません。そうした点で、同じく所得に対して課税される税金でありながら、所得税と個人事業税は性質が異なることを理解しておきましょう。

個人事業税の申告・納税方法

個人事業税は、毎年3月15日までに前年分の申告を都道府県税事務所に申告することになっています。ただし、所得税の確定申告や住民税の申告をしている場合は、事業税の申告を個別にする必要はありません。それぞれの申告書にある「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入するだけでOKです。

申告すると、その記載内容に基づいた納税通知書が送られてきます。納税通知書の送付時期は原則的に8月と11月の年2回。納付期限は各月末です。


法人化でトクになるケースも

所得金額等の条件によっては、個人事業主よりも法人化した方が個人事業税を低く抑えられることがあります。法人事業税の税率は資本金1億円以下の普通法人の場合、400万円以下の金額に対して3.5%(令和元年10月1日以後に開始する事業年度の場合)と、個人事業税の税率よりも低くなっているためです。

ただし、法人化すると個人事業主控除の290万円は適用されず、条件によっては超過税率が適用されることもあります。また法人として新たに登記するには少なくとも数十万円の費用が必要になり、さらに法人税、法人住民税等の法人だけにかかる税金も発生するため、必ずしも節税できるとは限りません。法人化を検討する際は綿密にシミュレーションした上で判断しましょう。

一方で、個人事業主のままであっても、白色申告より青色申告の方が、「赤字や資産の売却損を3年間にわたって繰越控除できる」「事業専従者の給与を全額控除できる」という点で圧倒的に有利です。白色申告の方は、法人化よりも先に青色申告に切り替えることを検討すべきでしょう。


安定したアパート経営のために

個人事業税をはじめ、正しく、賢く、節税をするためには専門的な知識が求められます。また不動産経営全般においても、各種申告や申請等は煩雑で、思いのほか手間がかかるもの。経営に集中するためにも、もともと知識のあるプロに任せてしまった方が賢明でしょう。シノケンは信頼できる税理士事務所や司法書士事務所と連携しているので、初めての方でも安心してアパート経営を始められます。
 


 

Editor:
最終更新日:2021.02.12

おすすめ記事