
株式会社シノケングループ中長期ビジョン ①
-創業30周年を迎えて-
新ビジョン・ミッション策定
当社グループは、創業から30年間、一般的な会社員層が抱える、将来への経済的な不安を解消する資産づくりのサポートを中心に実績を築いてまいりました。
「超長寿社会」の到来を見据え、創業より構築してきた、お客様の生涯を通して寄り添う当社グループ独自の「ライフサポートシステム」を、今後は国内だけでなく、世界中の人々へ、国境を超え、世代を超えてお届けしていきたいと決意を新たにし、創業以来大切にしてきた価値観である経営理念をバリューと位置づけ、新たなビジョン・ミッションを定義いたしました。

このビジョン・ミッション・バリューを推進することで、当社グループは、社会的企業として時代とともに変化し、進化し、成長し続けてまいります。
創業の原点:会社員層の将来不安を解消したい
創業当時、個人が土地の有効活用でアパートやビルを建設することや、土地から購入してアパート経営などをするのは、一部の地主や富裕層だけ、という固定観念があり、多くの会社員の人々は「自分がアパート経営などできるはずがない」と最初から諦めていた時代でした。
60歳で定年を迎えた後、安心して、より楽しく、ゆとりのある老後生活を送りたいと考えていた創業者は、自身がまだ会社員であった時代に、土地から購入してアパート経営を成功させたいとの思いを抱き、自らが挑戦し、それを成し遂げました。
その過程で、創業者自身が直面した様々な課題やリスクについて、様々な角度から検証し、一つひとつ改善策を講じて克服してきたことが、「会社員にもできる、会社員目線でのアパート経営」を行うにあたってのソリューションとなり、当社グループが提供する「アパート経営による資産づくり」=「ライフサポートシステム」の根幹となりました。
そして、「定年まで日本の社会を支えてきた多くの会社員層こそ、自分の将来のために資産づくりを目的としたアパート経営ができるようにしたい」との思いから、それをビジネスとして具現化するために試行錯誤を重ね、当社グループの創業に至りました。
この不動産流通革新ともいえる新たなアパートメント経営モデルは、単に投資という世界観にとどまらず、グループの総合力を活かしたオーナー様の経営サポート、高齢化が進む社会において不可欠となる介護領域もカバーし、お客様の生涯を通した独自のライフサポートシステムとして創業以来30年をかけて構築したものであり、近年、世界でも他に類を見ないビジネスモデルとして海外機関投資家等からも高く評価されております。
土地がなくても、自己資金が少なくても、アパート経営はできる!
~創業者の成功体験に基づくビジネスモデル
先に述べた通り、当社グループのライフサポートシステムは、創業者自身の経験に基づき、構築されました。会社員時代に、老後必要な資産を得るために目標を立て、その実行のために金融機関に事業計画書を直接持ち込んで交渉し、融資を受けるとともに土地を購入し、デザイン性を重視した建物をつくり、アパートメント経営に乗り出しました。設計にも自らの意見を反映させ、入居率を高める方法を模索した結果、アパートメント経営を順調に進めることができました。この成功体験を多くの人にも広めたい、それによって一般的な会社員層の将来の資産づくりのお役に立ちたい、そうした創業者の経験と思いが当社グループのビジネスモデルの原点です。
これを体現する言葉が、創業当時のキャッチフレーズの一つである「資産づくりのスペシャリスト集団」です。当社グループのコンセプトを示すものとして、後述いたします。

「資産づくりのスペシャリスト集団」のこだわり
当社グループが提供する「ライフサポートシステム」を具現化するには、各事業領域におけるスペシャリストが必須であり、単なる「売って終わり」のビジネスではなく、お客様の人生を長くサポートし、「資産づくり」を実現するための、様々な取り組みが必要です。
「アパートメント経営による資産づくり」と耳にしたとき、誰もが思い浮かべるリスクは「入居率」です。入居率を高め、お客様にとってのリスクを低減するための、当社グループの取り組みについて、ご紹介いたします。
■永遠のテーマ「入居率100%」
当社グループの賃貸管理戸数は38,000戸超、入居率実績は99%超*1です。
一般論として、入居率99%超を実現していれば高い入居率と評されますが、管理戸数38,000戸の1%の場合、380戸の空室を意味し、一人ひとりのオーナー様の立場で考えると、この1%の空室はとても大きく重要な数字と言えます。当社グループは、この1%を埋めることに集中し、あくまでも入居率100%を永遠のテーマとして追い続けてまいります。
■3つのコンセプト
永遠のテーマである入居率100%に少しでも近づけるため、当社グループで企画開発を行う物件のコンセプトは、以下の3点としております。これまでの30年、これらを現場で実践し、追求し続けることで、創業から30年以上が経過した今も、入居率99%超の実績となっております。
①厳選した立地での展開駅徒歩10分以内・ターミナル駅から30分以内
単身者の多い都市に限定し、5エリア・6都市のみ
【東京、関西(大阪・京都)、名古屋、福岡、仙台】
②マーケットに見合った無理のない家賃設定
30年培ったノウハウ・データをベースに、実勢相場を加味しつつ、長期間の安定入居を前提とした家賃査定
③入居ニーズを捉え、デザイン・仕様に反映
既存の入居者様に対して、随時アンケートを実施し、ニーズを把握。デザイン、仕様に反映することで、高稼働の物件づくりに繋げる
■安定的な入居のための取り組み
上記のコンセプトに加え、社会構造の変化に対応し、以下の3点に取り組んでおります。
①単身高齢者の入居が可能な独自サービス「寿らいふプラン」(グッドデザイン賞2013年受賞)
②外国人入居者向けサポート、多言語コールセンター導入
③スマートロック・各種IoTセンサー・スマートフォンによる室内遠隔操作などを可能にした「インテリジェントアパート」を標準仕様化
今後も時代の変化に合わせ、ライフサポートシステムを社会インフラの一つとして提供するため、「資産づくりのスペシャリスト集団」がお客様の成功のために全力を尽くします。
新時代のミッション「REaaS」
REaaSは、RealEstateasaServiceの略で「不動産のサービス化」を意味し、ビジネスモデルの革新とテクノロジーの融合により、より多くの人々にとって、手軽に安全に少額からの不動産取引をしやすくする、という概念を意味します。これを推進することで、多くの方に対し、将来に向けた資産づくりの機会をご提供し、将来の経済的不安だけでなく、様々な社会課題を解決し、あらゆる人々のライフサポートを実現していくという、新ビジョン「世界中のあらゆる世代のライフサポートカンパニー」を追及していくうえで欠かせない世界観です。
かつては一部の地主や富裕層だけのものだったアパートメント経営による資産づくりを、当社グループが計画の立案やローンの斡旋、賃貸管理サービス、保険・保証サービスなど、各種サービスとの組み合わせによって、一般的な会社員層にも取り組み可能としたビジネスモデルによる変革を「不動産流通革新1.0」と位置づけるならば、現在世界的に巻き起こっているいわゆる不動産テックの隆盛により、アナログ中心だった不動産取引のデジタル化が進み、アプリ一つでより簡単に行えるようなってきた現在の潮流は「不動産流通革新2.0」と位置付けることができるかもしれません。
REaaSは当社グループが創業当時から体現してきた世界観であることを再認識し、これを一時的な成功や流行に終わらせるのではなく、次世代に続く不変のミッションと位置付けました。次世代においても、当社グループはREaaSの世界観の実現のために、先進技術との融合、不動産サービスの国際化、金融サービスや公的サービスおよびモビリティサービスとの融合など、革新的なビジネスを創出してまいります。詳細につきましては、今後の成長戦略②「REaaSの展開」にてご説明いたします。

事業構成
創業30年となる2020年、当社グループは連結子会社31社および持分法適用関連会社2社からなり、不動産セールス事業・不動産サービス事業・ゼネコン事業・エネルギー事業・ライフケア事業および、その他事業(海外事業含む)を展開しております。

ビジネストランスフォーメーション
当社グループは、現在、いかなる経済環境の変化にも柔軟に対応できる経営基盤および一時的な好況や逆風に左右されない事業の構築を目指し、以下のように①拠点展開、②事業構造の転換、③ライフサポートの拡充という3つの取り組みによる成長余地の拡大、ストック収入の拡充により、オーナー様並びに入居者様、そしてそのご家族を含め、お客様の生涯を通したライフタイムバリュー(LTV)を創出する「ライフサポートカンパニー」へと進化するための「ビジネストランスフォーメーション」を推進しております。

今後の成長戦略 ① 海外事業
「土地の購入から始めるアパートメント経営による資産づくり」のビジネスモデルが成長を遂げる過程で、当社グループは地域の不動産業者と信頼関係を築き、駅近の土地情報を得て厳選した上で仕入れ、土地の条件に合わせた建物を設計・施工し、入居率100%を目指す賃貸管理を行い、不動産仲介業者、金融機関、そして不動産投資を行ったオーナー様という、不動産投資に関する利害関係者との「人と人のリアルな信頼関係」を体系的かつ長期的に蓄積してまいりました。結果として、一般的な会社員層の資産づくりに寄与する「ライフサポート」を実現する当社グループの競争優位性を高めてまいりました。
福岡で創業し、作り上げた成功モデルは今から20年前には、東京では通用しないと言われておりましたが、東京での成功に続き、大阪、名古屋、仙台、札幌でも結果を残し、「再現性のある」成功モデルであることを証明しました。当社グループは、単身者向けを中心とした収益不動産の開発・販売に強みを持ち、これまでの実績と独自のビジネスモデルを評価され、進出した地域の不動産業者や金融機関との間で「人と人のリアルな信頼関係」を構築しております。事業環境が異なっても再現できる特徴と優位性を発揮し、各地域で事業を軌道に乗せることができました。この再現性が海外でも適用されうることをインドネシアでも実証し、今後一層の海外展開の可能性を拡げてまいります。
海外市場に目を転じてみると、新興国においては不動産そのものの魅力だけでなく、経済発展は日本と同じような巨大な中間所得層を生み、退職後・老後の不安からライフサポートを必要とする需要が生じます。そこに当社グループが今まで日本で培ったライフサポートシステムを輸出・展開していく計画です。用地の取得~建設~入居管理・運営管理~出口戦略を自社グループ内で一気通貫により実現するのは海外マーケットにおいては容易ではなく、当社グループが世界のオンリーワン企業としてプレゼンスを発揮できるものと確信しております。
当社グループにとっては、世界中でこのライフサポートシステムを必要としている方々、少なくとも数億人の潜在市場がターゲットです。進出した国の制度・法規に合わせカスタマイズして輸出・横展開する当社グループのグローバル戦略はシンプルで明快です。具体的な計画としては、インドネシアで自社資本による垂直統合によって用地仕入から開発し、運営しているサービスアパートメント「桜テラス」の拡大(現在2棟目と3棟目を着工し、4棟目の着工も計画)です。桜テラス(シリーズ)の展開により賃貸事業収益の拡大が見込まれる他、当社グループであるシノケンアセットマネジメントインドネシア(以下、「SAMI」といいます。)が外資系でインドネシア初となるREITライセンスを取得したことで、SAMIが資産運用業務を受託するREITに売却する、という出口シナリオを戦略オプションとして持ち得るようになりました。この新たなバリューチェーン上のスパイラルを回すことで、次々と物件開発しながら最終的にはREITという安全・安定的な出口を持てることになり、当社グループのバリューチェーンは独自性をさらに増すこととなります。
また、SAMIによるインドネシアREITは、インドネシアに既に進出している海外企業とこれから進出したい企業双方の、インドネシアにて不動産開発を安定的に行いたい、という関心や引き合いが非常に高く、当社グループによる開発物件以外で数百億円~数千億円規模のREIT組成の需要が見えてきております。組成後にはアセットマネジメントフィーの積み上げにより、日本と同様、ストックビジネスの成長も期待できるモデルと体制が整いました。引き続き、インドネシアにおける独自のバリューチェーンの強みを発揮し、圧倒的な競争優位を確立してまいります。
中国、シンガポール、インドネシアと進出し、次なる進出地としては、やはり人口が多く、将来成長を見込める国の優先順位が上がります。当社グループのライフサポートシステムを必要としていることは調査済みで、あとは国の法制度に合わせたモデルのカスタマイズをすべく先行調査を開始しているところです。

今後の成長戦略 ② REaaSの展開
当社グループは、REaaSの実現と高度化により社会課題を解決する「世界中のあらゆる世代のライフサポートカンパニー」へと進化することが次なる成長段階であると考えております。創業当時からビジネスモデルの変革により、土地から購入するアパートメント経営という一部の富裕層のものだった不動産取引の世界を一般的な会社員層にも解放し、より多くの人々がより手軽に安全に不動産取引しやすくなる、というREaaSの世界観を体現してまいりました。現在では、不動産テックの世界的な隆盛によりREaaSが新たな段階に差し掛かっています。当社が30年来培ってきた「人と人のリアルな信頼関係」をベースに、ここにテクノロジーの要素を加え、REaaSをさらに高度化し、推進いたします。
REaaSを実現するにあたり、単なるDXによる効率化に留まらず、不動産取引を真の意味で電子化するには不可欠な要素である「トラストDX」の推進を踏まえ、DXをAIやIoTのSaaS/ASPで支援する株式会社スカラ(代表者:梛野憲克)と不動産取引およびライフサポートサービスに関して、デジタル上のデータ流通の信頼性向上を推進する「トラストDX」に関して共同研究および共同開発を行うことで合意いたしました。
不動産業界におけるDXは、①効率化:アナログ中心だった不動産取引をデジタル化、②高付加価値化:AI, IoT, VR等を用いて、デジタル化した取引および商品・サービスそのものの付加価値向上、③データ流通の信頼性確保:顧客、企業、自治体など事業に関連する利害関係者の間で、正当性、改ざん防止、完全性を担保した信頼性のある自由データ流通インフラの整備、の3段階があります。トラストDXは③にフォーカスした取り組みです。
トラストDXは、データの正当性(人、組織、IoT機器、デジタル取引)、データの改ざん防止(暗号化技術、ブロックチェーン技術)、データの完全性などを組み合わせた「トラストサービス」を軸に築き上げていくものです。この「不動産のトラストDXプラットフォームを構築する」という構想に、トラストDXにおいて世界最先端をいく国、エストニアでの事業経験を有するxID株式会社(代表者:日下光)が賛同し協働することとなりました。
今後日本において本格化していくトラストサービスの領域において、当社グループは、「不動産のトラストDX」で世界最先端のプラットフォームの構築を目指してまいります。

今後の成長戦略 ③ M&A
当社グループは、長期的なシナジーを創出することを目的としたM&Aを、戦略的かつ継続的に行い、競争優位なバリューチェーンを構築し、グループの総合力を高め、事業拡大の推進力としております。
不動産セールス事業における主力事業の一つ、投資用マンション販売がその代表例です。セグメントでいえば、ゼネコン事業、エネルギー事業、ライフケア事業のすべてがM&Aによりスタートしたものです。M&Aによってグループ入りした事業会社は、個々の力を発揮し、各事業領域でさらに成長を遂げ、それぞれがグループを支える柱の一つとなっております。
2020年9月末時点では、M&Aによって取得してきた事業による業績貢献度は、グループ全体の売上の約45%を占め、利益については約50%を占めるに至っております。
今後もM&Aは当社グループの成長にとって、重要な戦略的手段であると考えております。社会的ニーズが高まるライフケア領域、DX領域や、海外におけるM&Aなど、これまでと同様にグループシナジーの創出を基本方針とし、積極的に取り組んでまいります。
計画的に目標を定め、財務体質を強化してきた結果、2020年9月末時点において、自己資本比率が過去最高の45%を超えるとともに、ネットキャッシュもプラスとなり、実質無借金経営を実現しました。
今後は、REITへ毎期200億円程度の物件を供給することや、上述の積極的なM&Aおよび新規事業開発などを考慮すると、自己資本比率は40%前後となることも想定されますが、持続的に成長するために必要なことと判断しております。引き続き、収益基盤を拡大するための「攻め」、財務基盤をより強固にするための「守り」、時代に合わせてバランスをとりながら、グループ全体をさらなる成長軌道に乗せてまいります。
