アパート経営のノウハウ

収益を最大化するために。知っておきたい計上できる・できない「諸経費」

2020.11.12

不動産投資の収益を最大化するためには経費のコントロールが重要です。「節税対策にも繋がる!? アパート経営に関わる三大経費とは」では、経費の中でも特に重視すべき「減価償却費」「税金」「金利」を3つの経費を紹介しましたが、修繕費や保険料といった「諸経費」の管理も大切になります。しかし、不動産投資の諸経費は多岐にわたるため、何が計上できて、何が計上できないのかは悩むところでしょう。今回は、そんな三大経費以外の諸経費について、詳しく解説していきます。

不動産投資で計上できる経費には何がある?

先述の通り、不動産投資の収益を最大化するためには、経費のコントロールが重要。では三大経費以外にどのような費用が経費計上できるのでしょうか。

▼保険料

不動産所得を得るために必要な保険料は全て経費計上することができます。生命保険の代わりにもなる「団体信用保険」や天災による建物・設備の破損を補償する「地震保険」「火災保険」、災害や事故などによって賃貸住宅を貸し出すことができなくなった状態の際に、復旧までの家賃収入を補償してくれる「家賃補償保険」、建物の不備や欠陥によって対人・対物事故が発生した際、被保険者に課せられる法律上の損害賠償責任を補償してくれる「施設賠償責任保険」などがあります。

▼管理費

建物の資産価値を維持するためには、各戸のみならず共用部の清掃や各種設備の点検・保守が重要です。この管理にかかる費用のことを「管理費」と呼びます。建物管理はその内容が多岐にわたり、専門的な知識が必要とされるため管理会社に委託することが一般的です。後述の「管理会社への委託料」と併せて管理費を支払っているケースもあります。

▼管理会社への委託料

入居者募集やクレーム対応、家賃回収、税務関連の手続きの準備など建物以外の管理を委託する場合の費用です。管理会社によっては、建物の管理費と併せて委託料を支払う場合も多いため、管理費と管理会社への委託料はほぼ同義として捉えておいておおむね問題ありません。

▼修繕費

建物はどうしても経年劣化するため、共用部のライトや各戸の建具の消耗・破損、給水・消防設備の故障、外観の塗装剥げやひび割れなど、さまざまな問題が発生します。また、住人の入退去時には壁紙の張替えや居室のクリーニングといった原状回復も必要です。その際にかかる費用は修繕費として経費計上が可能なのですが、注意しなくてはならないポイントがあります。

経費と認められるのは、機能の向上を目的としない原状回復や維持・管理に限られ、修繕によって建物の耐久性や機能が向上する場合には修繕費ではなく「資本的支出*1」として減価償却しなくてはなりません。例えば、居室のキッチンをクリーニングの際に、ニーズの高いシステムキッチンに改修した場合は修繕費ではなく資本的支出として減価償却することになります。

ただしこれにも例外があり、青色申告をしていれば金額が30万円以下までなら「少額減価償却資産」という制度が利用でき、一括で経費計上することができます。金額や用途によって修繕費か資本的支出かが分かれるため、修繕の際は管理会社や専門家に相談してみるとよいでしょう。

*1 資本的支出:建物の修繕などの支出のうち、耐用年数の延長や資産価値の向上を目的としたものを指す

▼仲介手数料や広告宣伝費

入居希望者の賃貸契約を担う仲介会社への手数料や、管理会社への入居者募集のための広告・宣伝の費用は経費として計上が可能です。仲介手数料は入居者が決まる度に発生しますが、満室になってしまえば当面手数料が発生することはありません。また、広告・宣伝は必須ではありませんが、空室リスクを避けるためにも実施することをおすすめします。

▼士業への報酬

不動産投資は税務・法務周りの書類作成など、煩わしい業務が多いため、税理士や司法書士といった専門家に業務を依頼することが一般的で、この際の報酬金は経費として計上ができます。不動産投資を円滑に進めていくためにも、確定申告や不動産登記の作成、経費・節税についてのアドバイスなど、知見やノウハウを持った専門家に相談するとよいでしょう。

▼旅費、交通費、自動車関連費

不動産を購入・管理するための現地訪問、契約や価格交渉のために不動産会社訪問といった不動産投資に関わりのある旅費や交通費、自動車のガソリン代、車検費用などは、経費計上が可能です。なお、自家用車を使用する場合には、家事按分*2を行い、不動産投資に関連する部分のみを計算して経費計上することができます。ただし、交通違反してしまった際の罰金・反則金などは経費には認められないので注意しましょう。

*2 家事按分:事業用と自家用で共用している車両費や通信費などを、自家用で使用している部分を省き、事業用として使用している分を経費として計上すること。使用時間や日数、走行距離などを計算して算出する。

▼通信費

不動産市場の情報収集や管理会社との連絡、データ管理の際には携帯電話(スマートフォン)やパソコン、タブレットなどを使いますが、これも経費計上が可能です。本体代金だけでなく、通信料やアプリ・ソフトウェアの購入代金も経費に認められます。こちらも「旅費、交通費、自動車関連費」と同じく、私用と兼用する場合には家事按分を行って計上することもできます。

▼情報収集や勉強のための費用

不動産に関連のある書籍や新聞、セミナーといった代金は、不動産投資を円滑に進めるための情報収集・勉強のための費用とみなされ、経費計上することができます。無関係な雑誌(ファッションやグルメ etc.)や趣味のための書籍などは経費として認められません。

▼交際費

不動産会社をはじめとする関係者との打ち合わせや接待で支払った飲食費は交際費として経費計上が可能です。しっかりと領収書を保管しておきましょう。当然ですが、プライベートの飲食費は経費にはなりませんので注意しましょう。

経費計上できない経費とは

▼スーツやビジネスバッグといった服飾代

不動産投資をしていると管理会社との打ち合わせなどでスーツを着用することがあるかと思います。交際費などの考えから不動産投資に関連のある代金かと思われがちですが、スーツや時計、バッグといった服飾代は一般的には「ファッション」に該当するとされ、経費計上ができません。

▼資格取得費用

情報収集や勉強のための費用は経費計上が可能ですが、「不動産投資には資格が必要? 押さえておきたい賃貸経営の基本」の記事でもご紹介した宅地建物取引士(宅建士)をはじめとする各種の資格取得費用は、「個人の資質を高めるもの」に該当するため経費としては計上できません。間違えやすい費用のため、違いをしっかりと押さえておきましょう。

▼所得税や住民税といった個人にかかる税金

所得税や住民税は事業に関係なく国民全員に納税義務のある税金のため、経費計上することはできません。ただ、不動産所得以外の給与所得がある場合は、この2つを合算して所得税を算出するため「損益通算」が可能になり、節税効果に期待ができます。例えば、給与所得が500万円、不動産所得が100万円の赤字だった場合、合算した400万分にだけ課税されるということです。住民税は所得金額によって変動するため、損益通算を行えばこちらも節税効果が見込めます。その他の税金については「この税金はどんな意味? 押さえておきたい不動産投資に関わる税金の種類」をご覧ください。

収益の最大化を目指して

三大経費の記事でもお伝えした通り、不動産投資ないしアパート経営を円滑に進めるには、徹底したお金の管理が大切です。なかでも経費は収益の増減を左右する重要な項目であり、唯一コントロールできる支出のため、今後、棟数を増やして事業拡大を視野に入れている人は経費と収益の関係性を正しく理解することが必要です。

しかし、なかには専門的なものもあり、不動産投資を始めたての人には難しいかもしれません。わからないまま進めていては、経営が上手くいかないなんてことも……。そうならないためにも、不動産投資は信頼できるプロに相談し、アドバイスを受けながら賃貸経営を行っていくことが重要でしょう。
 

Editor:
最終更新日:2020.11.12

おすすめ記事