Amazonが住宅分野に本格的参入。不動産業界全体に波及するスマートホーム化の現在

2020.10.08

インターネット販売の最大手であり、AI開発にも力を入れているグローバルIT企業、「Amazon(アマゾン)」。そんなAmazonが開発したAIアシスタント「Alexa(アレクサ)」は誕生から現在まで、約6年で瞬く間に普及しました。

2020年9月3日にAmazonの米国本社から発表された「Alexa for Residential(アレクサ・フォー・レジデンシャル=住居向けアレクサ)」は、Alexaのアシスタント機能を不動産業界へと活用する新たなサービスです。これは、賃貸物件やビル全体などにあらかじめAlexaとそれに対応したデバイス(端末)や家電を組み入れ、統合管理されたスマートホーム化を推進するもの。

今回は、Alexa for Residentialとは、どのようなサービスなのか? 居住者、不動産管理者にとってのメリットは? 不動産業界への影響は? など、気になるポイントを見ていきましょう。

Amazonが提供する「Alexa for Residential」とは

Alexa for Residentialはもともと、Amazonが2017年から始めているAlexa Everywhere構想の一環です。Alexa Everywhere構想とは、Alexaを端末に組み込まれた単なるAIアシスタント機能としてではなく、利用者がいつ、どこにいても使えるサービスにしていこう、というもの。どの部屋にいても、あるいは家の外からでも、音声アシスタントを使ったり、家電製品等をコントロールしたりできるようにすることを目指しています。その機能を実現するために、複数のAlexaが同じ空間内にあっても、音声に反応するのはひとつのデバイスのみにする、複数のAlexaを連携させる……といった機能が実装されました。

今回発表されたAlexa for Residentialは、そうした技術をさらに進化させてパッケージ化し、不動産業界に参入したものと言えます。ソリューションプロバイダーを通じ、アパートやマンション、ビルなど建物全体にAlexa for Residentialを組み入れることで、居住者にも、不動産管理者にもさまざまなメリットがもたらされると言います。具体的には、どのようなサービスなのでしょうか? 特長と代表的な機能を以下にまとめました。

▼Alexa for Residentialの特長

・スマートスピーカーやスマートホーム対応家電があらかじめ部屋にセットされているため、購入やセットアップの知識が必要なく、手間がかからない。最先端のスマートホーム体験を幅広い層に提供できる。
・スマートホーム化された建物をパッケージとして提供するため、不動産管理者自身が物件ごとにスマートホーム化する手間が一切かからない。
・アパートやマンションの集客につながり、不動産管理者の収益を上げる可能性がある。

▼Alexa for Residentialの代表的な機能


【居住者向け】
・新たにAlexa対応デバイスを購入したり、Amazonのアカウントを作成したり、自分でセットアップしたりすることなく、入居したその日からスマートホーム・サービスを利用できる。
・デバイスに触れることなく、音声だけで各部屋の照明やエアコン、ドアのロック、ブラインドなど、さまざまな家電をコントロールできる。もちろん、音楽をかけたり、ECサイトで買い物したり、電話をかけたりすることもできる。
・Alexaによく使う機能などを学習させ、より便利になるようカスタムすることができる。

【不動産管理者向け】
・内見などの際に、スマートホーム機能のデモ、音声対応のセルフガイドツアーを実行できる。
・プロパティマネージャーを通して、建物全体のシステムを管理できる。
・居住者が転居した際、不動産管理者は遠隔からAlexaをリセットできる。

上記はあくまで機能の一部です。9月3日に行われたプレゼンテーションでは、家の中にある電化製品の制御だけに留まらず、「カスタムスキル作成機能を利用して、居住者が家賃の支払いやメンテナンス依頼、アメニティの予約などにAlexa for Residentialを活用することも可能になる」と述べています。

一方で、プライバシーに関しても重視されており、居住者が自身のAmazonアカウントとAlexaをリンクさせていても、建物全体を管理するシステム「プロパティマネージャー」や不動産管理者が顧客データにアクセスすることはできません。また居住者自身がプライバシー設定を制御でき、音声録音データは毎日自動的に削除されるそうです。こうした配慮は以前、AmazonがAlexaの音声録音データを収集し、顧客データと紐付けていたことが問題視されたことへの対応でしょう。

誰もがスマートホームの利便性を手軽に体感できる

PCやスマホなどの携帯端末だけでなく、家具家電、ウェアラブルデバイスまで生活の中にあるあらゆるモノをインターネットにつなぐ概念「モノのインターネット化=IoT」という言葉が生まれてから、早20年。音声入力の制度の向上や音声サービスが増えたこともあり、スマートスピーカーが急速に普及し、スマートホーム化が一挙に加速しました。スマートホーム対応家電も初期の頃は限られていましたが、現在では照明、テレビ、ネットワークカメラや掃除機、加湿器まで、多くのラインナップが揃っています。

ただ、実際に住まい全体をスマートホーム化しようとすると、起点となるスマートスピーカーに対応した製品を新たに購入せねばならず、セットアップも複雑。さらにカスタムして使いこなすには、相当のデジタルスキルが要求される実態がありました。

Alexa for Residentialはそうした障壁を取り除き、誰でも入居当日からスマートホームの恩恵を受けられることが最大の魅力です。また、サポート体制が充実しているのも特長で、これまで運用の難しさからスマートホーム化をためらっていた不動産管理業者にもアプローチできます。

アメリカでは今秋にもIOTAS、STRATIS IoT、Sentient Property Servicesなどのスマートホーム事業者と提携し、Alexa for Residentialを導入した新たなスマートアパートメント・レジデンスがオープンする予定。Amazonは、Alexa for Residentialが全米中に拡がる日が楽しみだ、とコメントしています。成功を収めれば、近い将来、日本にもAlexa for Residentialがやって来ることは間違いありません。

スマートホームが当たり前になる未来

これまでにもAmazonは特定の企業と組んで、Alexaを住宅に導入する取り組みを行って来ましたが、住宅と一体型のサービスとして本格的にAlexaを展開するのは今回が初めて。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字)の一つにも数えられる、IT業界の巨頭Amazonがこの分野に進出してきたことは、不動産業界にとってビッグニュースです。

日本におけるスマートホーム化はまだ始まったばかりですが、アメリカのthe National Apartment Associationが行った調査によると「賃貸物件居住者全体の84%がスマートホーム設備を備えたアパートを望んでおり、そのうち61%が音声アシスタントの月額料金を支払う」と答えているそうです。今後、スマートホーム化を望むニーズはますます高まり、先進的なテクノロジーを求める層以外にも拡がっていくと予想されます。いずれはキッチン、バス、トイレなどと同様に、“備え付けられているのが当たり前”の設備になるのかもしれません。

シノケンではこうしたIoTへの需要をいち早くキャッチし、2003年の段階からテレビや家電を集中制御できる専用端末や無料のインターネット環境、住まいの異常を感知して入居者に知らせ、警備会社に通報するサービス等を導入した「シノケンインテリジェントアパート」を実用化してきました。

現在はその機能をさらに進化させ、エアコン、TV、照明、スマートロック、空気清浄機、お掃除ロボ、電動カーテンなどの家電を居住者のスマートフォンで一元管理でき、温度・湿度等の情報を把握できるシステムを構築しています。IoTは今なお変化し続けている分野だけに製品を限定せず、高い拡張性をもたせているのが特長。Alexa for Residential同様の先進的スマートホーム体験を幅広い層のユーザーに提供し、物件の訴求力を高めます。利便性を追求しながらもオーナーの初期投資、ランニングコストを極力低く抑え、コスト面でもスマートさを実現しました。

日本でも今後、ますますニーズの高まりが予想されるスマートホーム。時代を先読みしたアパート経営をシノケンで始めてみませんか?

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最終更新日:2020.10.08

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