
会社に申告は必要?
副業として始める不動産投資の注意点とは
近年、普段は会社員として働きながら、副業として不動産投資をする人が増えています。本業だけの収入(給与所得)では将来的に不安がある、生活により余裕を持ちたい……など、理由はさまざまでしょう。「金融投資ほど日々の変動を気にする必要がなく、本業に影響が出にくい」「リスクが低く、長期的に安定した収入が見込める」といった不動産投資の性質は、忙しく働く会社員にもぴったりです。
しかし、普段会社勤めをしている人にとって、「不動産投資をしていることを会社に報告する必要があるのか」「 不動産所得で発生した納税をどうすべきか」 は気になるところでしょう。今回はそうした初歩的な疑問について解説。会社員を続けながらスマートに不動産投資を行う方法を見つけましょう。
会社への不動産投資申告は必要なのか
最近は多くの企業で、本業に支障をきたさない範囲での副業が認められるようになってきました。不動産投資を会社に申告すべきか否かは、勤めている会社の就業規則によります。就業規則の内容は、副業を全面的に禁止、会社に申告して認められればOK、本業に支障のない範囲ならOK、副業でなく投資ならOK……など、会社によってさまざま。就業規則に違反すると何らかのペナルティを受けてしまう場合があるので、不安な場合は必ず事前に確認しておきましょう。
ただ、たとえ副業を全面的に禁止している会社であっても、不動産投資で得られるインカムゲイン(家賃収入)については、「資産運用」として認められるケースがあります。これを禁止してしまうと、親からアパートやマンションなどの資産を相続することができないためです。
ちなみに、厚生労働省が作成した「モデル就業規則(平成31年3月版)」の「第14章 副業・兼業」では、以下のような文面になっています。
(副業・兼業)
第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
モデル就業規則は、あくまで企業が就業規則を策定する上での一例にすぎませんが、近年は働き方改革の流れもあり、社会全体に副業を認める気運が強まっているのは事実です。
住民税で会社にバレる? トラブル回避のためにやっておくべきこと
不動産投資で所得がある場合は、税務署に確定申告をしてその金額に応じた所得税や住民税(都道府県民税・市町村民税等)を納税する義務*1が発生します。
*1 所得税については、副業による収益が20万円以下の場合、確定申告や納税は必要ありません。住民税は各市区町村の規定に従ってください。
税金を納めること、それ自体は投資が成功している証でもあるので仕方ありませんが、注意すべきポイントがあります。それは、副収入の金額が会社にばれてしまうこと。たとえ不動産投資を認めてくれる会社であっても、無用なトラブルを避けるため等の理由で「どの程度の収益を得ているのか」を隠しておきたい場合は当然あるでしょう。
所得税については、不動産所得の申告、納税は自分自身で行うため、会社に察知されません。しかし、住民税については納税方法を「特別徴収」にしていると、「住民税の決定通知」が会社に届き、その金額から副業による所得額を悟られてしまうことがあるのです。その問題は、不動産所得による住民税の納税方法を「普通徴収」にすることで解決できます。
特別徴収とは、個人にかかる住民税を給与からあらかじめ差し引いて、事業主が納税義務者の代わりにまとめて納税する方法のこと。本業と副業等をあわせた前年度の所得全体に応じた住民税額が給与から天引きされます。一方で普通徴収は、納税義務者自身が住民税を納税する方法のことで、こちらを選択した場合には投資等による所得金額が会社に知られることはありません。
特別徴収の方が確実に税金を徴収できるため、給与による個人住民税は特別徴収が推奨されていますが、副収入によるものは上記いずれかの納税方法から選択することができます。普通徴収にするには、確定申告書類の納付方法欄で「自分で納付」を選ぶだけ。後日、自宅に納付書が送られてくるので、期日までに正しく納付しましょう。
ところで、不動産投資が軌道にのってきたなら、必ずやるべきことことがあります。それは確定申告。確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、不動産所得がある場合には青色申告を選ぶことで以下に挙げるような多くのメリットを受けられます。ちなみに白色申告とは、青色申告の条件に該当しない方が行う申告方法で、手軽に記帳が済む以外にはあまりメリットがありません。
▼青色申告のメリット(事業的規模の場合)
・青色申告特別控除を受けることができる(複式簿記の場合で最大65万円、簡易簿記の場合は10万円)
・家族を従業員にしている場合、支払う給与を必要経費にできる。
・純損失を3年間繰り越すことができるため、赤字が続いても4年目以降に黒字が続いた場合には赤字を相殺して所得税を抑えることができる。
・30万円未満の減価償却資産を一括経費にすることができる。
などさまざま。記帳する帳簿が多いなど複雑な条件がありますが、青色申告は節税効果が高いため、無駄な支出をしないためにも必ず行うべきでしょう。ただし、青色申告最大のメリットである最大65万円の特別控除を受けたり、家族への給与を経費にしたりするためには、税務署に「事業的規模である」と認められる必要があります。
事業的規模と認められるか否かの判断は、一般的に「5棟10室基準」という条件を満たす必要があるといわれています。5棟10室基準とは、「独立した家屋を5棟以上貸している」もしくは「アパートやマンション等の貸室を10室以上貸している」という基準です。ただ、実際には明確な判断基準が存在せず、税務署が実態を調査した上で判断するのが通例。家賃収入の金額が大きければ、基準を満たしていなくても「事業的規模である」と判断されることがあるため、詳しくは管理会社に相談することが良いでしょう。
複雑で面倒な税務処理や登記はプロにお任せ
長期的な収入が見込め、将来的にローンを完済すれば現物資産として保有することもできる不動産投資は、会社員にとっても魅力的な副業であることは間違いありません。しかし、不動産特有の登記や申請作業は複雑で、専門的なスキルを必要とするのも事実。また、税金についても上記に挙げた青色申告以外にさまざまなノウハウがあり、専門家の知識が不可欠です。本業をおろそかにせず、かつ確実な不動産投資を行うには、プロに任せるのが得策でしょう。
アパート経営のシノケンは、信頼できる司法書士事務所や税理士事務所と提携。オーナー様個々の状況に寄り添ったサポート体制を築くことが可能です。確定申告や不動産登記をするのが初めて……という方でも、安心してアパート経営を始められます。