感染拡大でも投資意欲は高め!? 事業用不動産投資の今とこれから

2020.06.18

世界最大の事業用不動産サービス会社の最大手であるCBREグループの日本法人であるシービーアールイー株式会社は5月14日、「ジャパンインベストメントマーケットビュー2020年第1四半期」*1を発表しました。これは、国内における事業用不動産投資市場の最新動向をレポートしたものです。新型コロナウイルス感染症の影響が懸念されている中で、不動産業界にはどのような変化があったのでしょうか? シービーアールイー株式会社(CBRE)の調査レポートをもとに解説します。

*1 出典:「ジャパンインベストメントマーケットビュー 2020年第1四半期」CBRE|2020年5月14日

海外投資家が市場を大きく牽引

日本国内における市場動向の前に、世界の動向を見てみましょう。世界全体での2020年第1四半期事業用不動産投資額は、2,350億米ドル(1ドル=108.97円換算すると日本円で約26兆円)で、前年同期比15%増でした。アメリカ(8%増)や欧州・中東・アフリカ(4.6%増)となっていますが、日本が属するアジア太平洋地域では22%減となっています。

対して日本は、前年同期比41%増となる1兆円。2019年第1四半期が約30%減であったこともあり、同期比では大きく数字を伸ばしました。アジア太平洋地域の投資が落ち込む中で、比較的順調と言うことができるでしょう。

投資主体別投資額割合ではJ-REITが42%で最も大きな割合を占めていますが、この額は前年同期とほとんど変わっていません(4,460億円)。国内投資家による取得額も32%増えていますが(3,359億円)、最も大きな要因は海外投資家です。実に前年同期の5倍近い規模(2,940億円)。特に米国や欧州の機関投資家、韓国投資家などによる大型取引に注目が集まりました。アセットタイプはオフィスや、住宅のポートフォリオ、物流施設、ホテルなどさまざま。安定した収益が期待できる物件と判断されたようです。

また、四半期毎に実施している「不動産に関するアンケート-期待利回り(アレンジャー、レンダー、アセットマネージャーなどを回答者としたもの)」*2でも、堅調の兆しが見られました。「東京のホテル(東京主要5区にあり*3、JR主要駅徒歩5分以内の築5年程度を想定した運営委託型ビジネスホテルを想定)」では金利の表示単位であるbps(Basis Point Spread)が前期から20bps上昇。2期連続の上昇であり、この調査で東京の主要アセット期待利回りが2期連続上昇したのは2009年以来、およそ10年ぶりとなります。

「オフィス」「物流施設」「賃貸マンション・ファミリー」といたアセットタイプはほぼ横ばいだったものの、商業施設(銀座中央通り)、賃貸マンション(ワンルーム)では前期から5bps~10bps上昇。地方都市のオフィス期待利回りは大阪と仙台で前期から低下して最低値を更新していますが、福岡など若干上昇(2bps)した地域もあります。

*2 出典:「不動産投資に関するアンケート – 期待利回り 2020年3月」CBRE|2020年5月14日
*3 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の5区

新型コロナウイルス感染症の影響下でも投資意欲は高め

第2四半期の事業用不動産投資市場については、さすがに新型コロナウイルス感染症の影響が避けられないと予想されています。渡航規制や自粛によって海外投資家が日本の物件視察に訪れることができず、取引を延期する事例が増加しているためです。また、感染拡大の収束が不透明な状況下では売主と買主の価格目線が乖離しやすく、市場の動きも鈍化する傾向にあります。

しかし、「CBRE投資家意識調査2020」によると、投資家の投資意欲自体は高く、感染拡大の影響で「取得額を減らす」と回答した投資家は3月下旬でも2割弱にとどまっています。業績悪化によってノンコアアセット(本業とは直接関連のない不動産資産)の売却や、自社ビル等を売却し、その買い手からリースを受ける「セールス・アンド・リースバック」を検討する会社が増えると予想されますが、不動産投資においては悪い影響ばかりではありません。そうした動きに投資機会を見出す投資家も存在するからです。

事態収束による不動産市場のさらなる活況化に期待

新型コロナウイルス感染症の影響が心配されていた不動産投資市場ですが、2020年第1四半期の時点では投資額にそれほど大きな影響がなく、期待利回りが上昇したのは一部のエリア、アセットタイプに限られた。投資意欲も依然として高いことが分かりました。

利回りの変動リスクが比較的少ないと言われているアパート経営においても、不動産市場動向などの情報収集は欠かせません。シノケンはそうした市場動向を常にリサーチし、価値をより一層高める資産づくりをサポートしています。
 

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最終更新日:2020.06.18

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