
少額で不動産投資が可能な「不動産小口化商品」とは?
不動産投資というと、一般的に思い浮かべるのは、アパートやマンションなど現物の不動産を所有し、その収益を得ることではないでしょうか。現物不動産の所有には「長期的に安定した収益を得やすい」、「レバレッジ効果(※1)を高めやすい」などのメリットがあります。一方で、大都市圏を中心とした利回りの良い不動産の多くは高額で、初期投資に多額の資金が必要になるという側面のほか、物件の管理や運営といった業務も行わなければなりません。
そこで登場するのが「不動産小口化商品」です。不動産投資に興味のある方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、不動産小口化商品は、そうした初期投資の資金繰りや管理・運営といった煩雑な業務負担を軽減する、不動産投資のハードルを下げた投資方法です。
では具体的にどのような特徴があるのか。種類やそれぞれのメリット、REITとの違いなどについて分かりやすく解説していきます。
※1 借入金や社債など他者の資本を利用し、投資することで自己資本の利益率を高めること
小口化することで少ない資金で投資が可能に
不動産小口化商品の大枠の仕組みは、「一つの不動産に対して複数人が出資し、それを事業者が管理・運営して、そこから得た収益を投資額(口数)に応じて出資者に分配する」というものです。
複数人で分割して出資するため、自分一人の資金では手が届かない高額で利回りの良い物件に少ない資金から投資できることが最大の特徴と言えるでしょう。また、物件の選択や管理・運営といった作業を、事業者に完全に任せることができ、手間が掛からないこともハードルの低さにつながっています。
加えて、不動産小口化商品は1994年に定められた不動産特定共同事業法という法律で細かく定義されており、宅建業の免許や資本金、負債額など一定の条件を満たし、許可を得た事業者でなければ商品を取り扱えないことになっています。限られた事業者しか販売できない許可制になっていることは、投資家にとって安心材料の一つです。
3つの不動産小口化商品
不動産小口化商品は契約内容ごとに、以下の3種類に分けることができます。
匿名組合型
事業者と投資家が匿名で組合契約を結び、投資家(=組合員)が“事業者(=組合の代表者)”に対して出資する契約形態の商品です。物件の所有者は事業者となり、管理や運営などを行います。投資家に所有権はなく、登記簿に名前が記載されないことから「匿名」という名称で呼ばれています。不動産の賃貸や売買で得た収益は「雑所得」として投資家に分配されます。
任意組合型
事業者と投資家が組合契約を結び、投資家は“組合”に対して投資を行い、不動産を購入します。匿名組合型との違いは、不動産の所有権が組合員の共有、つまり投資家にある点です。そのため不動産の賃貸や売買で得た収益は、「不動産所得」として投資家に分配されます。また、登記簿にも各組合員の名前が記載されます。
賃貸型
投資家が組合を結成して不動産を購入し、その不動産を事業者に貸し出す契約形態の商品です。不動産の所有権が投資家にある点は任意組合型と変わらず、収益が「不動産所得」となる点も一緒ですが、賃貸料が収益となるため不動産の売買による収益がない点に注意しましょう。
匿名組合型は、不動産小口化商品の中でも比較的安全性が高く、かつ少額での投資が可能です。短期の投資にも向いていることから高い人気があります。一方、任意組合型は現物出資となり、不動産に関する税制が活用できることから、通常の不動産所有により近い投資方法といえるでしょう。
同じ不動産小口化商品と言っても、種類によって性質が全く異なることが分かります。実際にはさらに細かな違いやメリット・デメリットが多数ありますので、購入を検討している方は専門家に相談するとよいでしょう。
注目を集めるREITとの違いとは?
REITは、投資家が実際に不動産を購入することなく、投資信託の証券を購入する投資方法です。不動産投資信託とも呼ばれ、投資家から集めた資金を資産運用のプロが不動産に投資し、運用。売買差益から管理費や経費を差し引いた収益が投資家のもとに分配されるという仕組みになっています。
複数の投資家から集めた資金を不動産に出資し、収益を投資家に分配するという点では、REITも不動産小口化商品も同じように見えますが、REITはあくまで金融商品を購入することによる投資、不動産小口化商品は組合への出資であるという点で大きく異なります。
不動産投資の入門として
今回ご紹介したように、不動産小口化商品は初期投資を抑えながら、管理・運営を事業者に任せ、売買差益や賃貸料を収益として得ることができる、不動産投資の入門のような位置付けです。直接的な不動産投資をしてみたいけれど資金がまだ少ない方や、不動産投資に興味はあるけれどいきなり経営は難しいという方には、比較的投資しやすい方法かもしれません。