
不動産投資に好調の兆し!? 海外マネーの参入で変わる日本の経済事情とは
2020年1月、アメリカの投資ファンド会社、ブラックストーン・グループが日本の賃貸マンション群約220棟を約3,000億円で購入することが明らかになりました(※)。これは国内の一括取引として、過去最大規模の不動産売買です。
海外投資家による不動産売買は以前にも増して盛んになっており、今なお日本の不動産市場が魅力的であることを示しています。背景にあるのは、日本銀行の異次元的金融緩和政策(以下、異次元緩和)の影響による低金利の資金調達と都市圏を中心とした不動産の利回りの良さです。海外投資家の動きとともに、不動産市場の現状を見ていきましょう。
※日本経済新聞2020年1月29日付記事より
海外勢の投資が国内不動産をますます活況に
ブラックストーンが、運営するファンドを通じて今回購入するのは、東京や大阪など大都市圏を中心とした賃貸マンション約220棟。中国・安邦保険集団からの一括購入です。
実はブラックストーンは2014年にも、この物件の大半を米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人から推定約2,000億円で購入した経験があります。2017年に一部追加した上で、安邦保険へ約2,600億円で一旦、売却。今回の売買では、当時と別のファンドが約3,000億円で買い戻します。市況を見ながら売買を繰り返すことで、利益を最大化しようとする狙いでしょう。
今回の一件以外でも、海外勢が日本国内の不動産に本格参入する動きが相次いでいます。2019年末、中国系の投資会社ブライトルビーがウェスティンホテル東京を約1,000億円で実質的に買収。また、ドイツの保険大手アリアンツも昨年、日本で賃貸マンション約80棟を購入しました。
海外企業による不動産購入額は、日銀が異次元緩和を始めた2013年から拡大し続け、2017年には年間1兆円超と全体取引額の26%に。2019年9月までの累計額では約5兆円にまで達しています。主に自己資金で取引する日本の不動産開発会社と違い、海外では投資家から資金を集める「ファンド」が不動産取引の主体のため、金融環境の影響をより受けやすいと言うことができます。
利回りと調達金利の差分が日本の魅力
都市圏の不動産価格は近年、上昇傾向にあります。利回りは、物件から得られる収益から税金や維持費などの経費分を除いた金額を、投資額(購入額)で割った数字で決まるもの。物件の購入額が上昇すると、たとえ以前と同じ収益が得られたとしても、利回り自体は下がってしまいます。
しかし、頻繁な売買を前提とする海外の企業や投資家が重視するのは、利回りと調達金利の差分です。前述したように日本では低金利が続いており、単純な利回りだけで比較すると同程度の物件だったとしても、より多くの収益を得られる可能性が高くなります。
ちなみに東京の主要オフィスビルに投資した場合の実質的な不動産利回りは、2019年9月時点で2.8%。ニューヨーク(2.3%)や上海(2.3%)、シンガポール(1.8%)など世界の主要都市と比べて高い水準にあります。
また、先に紹介したウェスティンホテル東京の例でも、もともと海外勢によって転売されてきた経緯がありました。2004年に米モルガン・スタンレーが約500億円で買収し、4年後の2008年にはシンガポール政府系ファンド(GIC)が約770億円で購入。今回の取引では約1,000億円と、15年で実に2倍の価格になっています。それでもブライトルビーが買収した背景には、日本特有の借入金利の低さと、今後さらなる価格上昇への期待があると見て良いでしょう。
続く金融緩和策、不動産価値の上昇にも期待
国土交通省が算出したオフィスビルや賃貸マンションなど商業用不動産の価格指数は、三大都市圏で2010年時点に比べて約3割上昇。海外勢による積極的な不動産投資が少なからず影響を及ぼしています。その一方で、日銀は2020年1月、短期政策金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現在の金融緩和策を据え置く方向を決めました。
一部ではオリンピック後の不動産価値の低下を心配する声がありますが、低金利がしばらく続く現状を考えると急激な下降は考えにくく、特に都市圏ではこれまで通りの継続的な価値上昇に期待する声も高まっています。そうした影響は大規模な投資だけでなく、アパート・マンションへの投資にも広く波及していくのではないでしょうか。不動産投資を始めるには、今が好機かもしれません。
- 関連リンクアパート経営のシノケン