
土地活用の幅を拡げる「第一種住居地域」と「第二種住居地域」の違いとは?
アパートやマンションを建てる上で、その土地がどのような用途地域に指定されているかはとても重要です。用途地域とは都市計画法で建物の用途が定められた地域のことで、主な用途を住居用とした地域と、商業用の地域、工業用の地域に大別でき、2020年現在、13の区分に分かれています。それぞれ建物の種類や建ぺい率、容積率などの規定が建築基準法で詳細に定められており、用途地域の区分は概ね5年に一度、全国一斉に見直され、各地方自治体が販売する都市計画図などで確認することができます。今回はその中でも土地活用の自由度が比較的高い用途地域「第一種住居地域」と「第二種住居地域」にスポットを当ててみましょう。
「第一種住居地域」と「第二種住居地域」の違いと特徴
都市計画法の中で第一種および第二種住居地域は「住居の環境を保護するための地域」と位置付けられていますが、必ずしも住居専用ではなく、生活する上での利便性を高めてくれる商業施設や小規模な工場などを建設することもできます。13の区分のうち、住居のほかに大学やコンビニといった小規模な用途に限定した「住居専用地域」と異なり、より自由度の高い用途が認められている地域です。
建物の高さ制限や日影規制については、住居専用地域では低層と中高層に分けられ、それぞれに細かな規定がありますが、住居地域の場合にはそういった規定が厳しくありません。
例えば第一種低層住居専用地域は、建ぺい率の限度が30~60%、高さが10mまたは12mまでに制限されている「絶対高さ制限」があるのに対し、第一種および第二種住居地域は、建ぺい率の限度が50~80%、絶対高さ制限はありません。ただし日影規制においては道路斜線や隣地斜線の制限が設けられているため、その土地の周辺環境によっては実質的に高さに制限があると覚えておきましょう。
第一種および第二種住居地域で建築可能な床面積は、前者が3,000㎡以下、後者が10,000㎡以下となっており、前述の商業施設や工場以外に、ホテルや旅館などの宿泊施設、遊戯施設を建てられることも住居地域における大きな特徴の一つです。宿泊施設やボウリング場、スケート場など公共性の高い遊技場については第一種住居地域が床面積3,000㎡以下、第二種住居地域は制限がありません。また、第二種住居地域ではパチンコ店や麻雀店といった遊技場も床面積10,000㎡以下の範囲で建てることができます。
第一種住居地域と第二種住居地域の区分をさらに細かく見ていくと、倉庫の建築基準にも違いがあります。業者向けの「倉庫業倉庫」については両者とも不可ですが、「自家用倉庫」については認められており、第一種住居地域は床面積3,000㎡以下、第二種住居地域は制限がありません。トランクルームやレンタル収納などの貸倉庫業を新たに始めようと思っている方は、用途地域の違いに注意が必要です。
用途地域の特性を理解し、効果的な不動産投資を
まとめると、第一種住居地域は住居のほか、床面積3,000m²までの小規模な商業施設や工場、ホテルなどが建てられる地域。第二種住居地域はそれらに加え、10,000m²までの商業施設や事務所、さらにパチンコ店やカラオケボックスなどの遊技場も建てられる地域、ということになります。第一種住居地域と第二種住居地域は、基本的な規定は同じで、規模による制限が設けられている以外に大きな違いはありません。
こうした用途地域の違いは普段あまり意識しませんが、街の景観や賑わいにはっきりと表れています。閑静な住環境を守る、という意味では住居専用地域が適していますが、住居の近くに商業施設や遊戯施設がある、という生活の利便性や娯楽性においては第一種および第二種住居地域の方が優れている面もあります。長期にわたって暮らす住まいを探しているファミリー向けには住居専用地域、利便性を求める若い人向けには住居地域といった具合に、暮らす人の属性によって最適な地域は違ってきます。
投資目的の土地や建物を購入する際は用途地域の特性をしっかり確認し、将来的な資産価値を見定めて判断するとよいでしょう。