知ることから始める老後準備。あなたに必要な老後資金はいくら?

2018.08.29

 日本は世界屈指の長寿国として知られていますが、今後も平均寿命は伸びていくと見込まれています。それにより新たに注目されている言葉が「人生100年時代」の到来です。100歳まで生きるとなると、健康の維持はもちろんのこと、楽しく快適な暮らしを継続するための将来設計が必要になります。

 中でも早めに蓄えておきたいのが、定年後の生活を支える要となる老後資金。総務省統計局の家計調査結果(平成28年版)によれば、一般的な老後夫婦世帯(夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の月の消費支出は237,691円。一方、公的年金などの手取り収入(可処分所得)は182,980円。つまり、毎月約55,000円の赤字となります。そのためこのモデル世帯の場合、定年を迎える65歳から100歳まで生きるとなると、定年までに約2,300万円(55,000円×12ヵ月×35年)準備をしておかなければならない計算になります。さらに家のリフォーム費用や医療費などが発生する可能性を加味すると、よく老後資金の目安として目にする「3,000万円」が根拠ある金額だということが分かると思います。

 3,000万円というと、そうやすやすと貯められる金額ではありません。ただ、こうした試算がある一方で、高齢者世帯の2/3が金融資産額2,500万円に達していないというデータもあります(総務省統計局HP『家計調査年報(貯蓄・負債編)平成28年(2016年)』より)。加えて、約15%の高齢者世帯は貯蓄額300万円未満と聞くと、「何千万も貯めル必要はなさそうかな?」と思ってしまうかもしれませんが、油断は禁物。それだけ「貯め辛い」状況だということです。現役世代も、今のうちから計画的に貯蓄していかないと、老後の資金繰りに苦労することになってしまいかねません。

 誰しも、老後は経済的な不安なく、日々楽しく過ごしていきたいですよね。そのためには、今のうちから「自分が老後に必要な資金総額」を把握しておくことが大切です。それを踏まえた上で、目標額を確保できるよう計画的に貯金していくことが、今日からでもできる老後対策ではないでしょうか。まずはを己を知ることから、快適な老後生活への第一歩を踏み出してみましょう。

「今の自分」の状況を知れば、老後への道筋が見えてくる

 今のうちから老後資金を貯めておくのは大事なことですが、だからと言ってやみくもに貯金を始めても続きませんし、無為に現在の暮らしを圧迫することにもなりかねません。「今の生活」と「老後生活のための準備」を両立するために、まずは現在の働き方や貯蓄状況から、老後までにあといくら貯める必要があるのか、そしてそのためには月々いくらずつ貯金する必要があるのかシミューレションしてみましょう。

 先に挙げた「3,000万円」を貯蓄目標の目安にするのも良いですが、ここではもう少し細かく見ていきましょう。例えば次のようなモデルケースの人が、今から老後に向けて貯金を始めようとした場合、毎月必要となる貯蓄額の目安は下記の通り。

 それぞれ老後(60~82歳)に必要となる生活費(※)の総額は、ケース1の場合で3,804万円、ケース2の場合は7,419万円(公益財団法人 生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」より算出)となります。60歳までにその金額を貯めるには、上図の金額を貯蓄していく必要があるわけですね。

 もしかすると、モデルケースの例を見て青ざめた方もいるかもしれません。しかし、今現実と向き合っておくことにこそ意味があるのです。そうでなければリタイア後、深く後悔することにもなりかねません。まずは現状を「知る」ことで、豊かな老後生活へのスタートを切りましょう

※老後支給される厚生年金想定額を差し引いた不足額。

推奨金額を貯蓄するために必要となる、無駄を省く工夫

 そうは言っても「今は目の前の生活で手一杯」、「貯金するだけの余裕がない」という方もいるでしょう。その場合はどうすればいいのでしょうか? 当たり前ですが、まずは早急に「家計の改善」に取り掛かりましょう。

 家計の支出項目はさまざまですが、大まかに分けると食費や娯楽費などの月ごとに支出額が変動する「変動費」と、住居費や通信費などの支出額がほぼ変動しない「固定費」のどちらかに分類できます。固定費は、一度メスを入れれば継続して一定額を浮かすことができます。電気を小まめに消す、水道を流しっぱなしにしないといった「ちりも積もれば」系の節約術も無意味ではありませんが、最優先ではありません。月々数十円単位でなく数千、数万単位のお金を浮かせたいのなら、より節約効果の高い固定費削減を第一に検討すべきです。上手く無駄を省くことができれば、毎月決まった額を無理なく継続して貯めていけるようになりますよ。

 固定費の中で、まず着目したいのは住居費。持ち家で住宅ローンがある場合は、より金利の低い金融機関に借り換えられないかどうか検討してみましょう。賃貸の場合は、現状より家賃の低い物件に引っ越す、もしくは大家さんに家賃交渉をしてみるのも一つの手です。もしも今、生活が苦しい上に手取り月収の30%以上を家賃に使っているのだとしたら、引っ越しを視野に入れることで、ぐっと楽になれるかもしれません。一度しっかり見直すことをおすすめします。

 生命保険や自動車保険などの保険料にも無駄が潜んでいる可能性が。契約者のライフステージに応じて必要となる保障内容が変動するため、「入会してから入りっぱなし」という方は特に注意。今の自分には不要な保障に、少なくない保険料を支払っている可能性も。定期的に加入している保険をリストアップし、本当に適正なプランを選択できているかかどうか考えてみることをおすすめします。

 またスマートフォンの普及により、通信費も高額になる傾向にあります。こちらもまずは料金プランの見直しをしてみましょう。毎月、実際に使用しているデータ通信量を把握していますか? 例えば毎月、本来使用できるデータ量の半分も使っていない場合、無駄な料金を支払っていることになります。今すぐ契約プランを見直しましょう。また、契約時に付けられた不要なオプションサービスを解除したり、自宅ではWi-Fiに接続したり、格安SIMを活用したりすることでも、一定の節約効果が期待できます。

 光熱費についても、電力の自由化による低価格電力会社の参入により、より安く利用できる可能性があります。さらにエアコンや冷蔵庫など、古い家電を最新機種に買い替えるのも効果的です。電気代が気になるという方は、一度家電量販店で話を聞いてくるのも良いかもしれませんね。

貯金と一緒に考えたい、資産を「運用する」方法

 固定費を見直して、月々の貯金額を殖やすことに成功! 必要な老後資金を貯められる目途が立ったとします。一安心ではありますが、ゆとりある老後のためにも、資産は多いに越したことはありません。そこで、節約や貯金からもう一歩進んで、資産を「運用する」ことに目を向けてみてはいかがでしょうか?

 資産運用の代表例としてよく挙げられるのが「株式投資」。最もイメージしやすい投資かと思いますが、実は初心者が安定して利益を出し続けるのは簡単ではありません。自分の好きな会社の銘柄を少しだけ買ってみるのも良いですが、全くの初心者なら、まずは各金融機関やファイナンシャルプランナーが主催する資産運用セミナーに参加する等して、知識を身に付けた方が良いでしょう。

 ただし今回のように「老後資金を殖やすこと」を目的とする場合、株やFXのようににハイリスクな投資に手を出すのは得策ではありません。残念ながら「ローリスク・ハイリターン」な投資は存在しません。「ハイリスク・ローリターン」な投資を避けるのはもちろんですが、今後の人生を賭けるような「ハイリスク・ハイリターン」な投資も避けましょう。無理のない「ミドルリスク・ミドルリターン」な投資を選び、堅実かつ現実的な資産形成を目指すのがおすすめです。

リスクとリターンのバランスが取れる投資とは?

 リスクとリターンのバランスが良い「ミドルリスク・ミドルリターン」な投資として挙げられるのが「不動産投資」です。中でもおすすめなのが、比較的「ローリスク」なアパート経営家賃収入という安定した副収入を得られる上に、土地や建物という固定資産も手に入ります。事業計画を綿密に立ててから取り組めば、大きな失敗もなく、長期にわたって安定した資産運用をすることができるかもしれません。「一攫千金」を狙うのは難しいかもしれませんが、将来を見据えた資産形成といった目的にはぴったりな投資方法です。

 老後は誰にでも必ず訪れるもの。そして今や「人生100年時代」と言われる時代です。多くの人にとって、定年後の時間は現役時代と比べても短いものではないでしょう。せっかくの長い時間を楽しく充実した物にするためにも、備えは早く始めるに越したことはありません。しかし頭では分かっていても、日々の生活に追われ、老後のライフプランを考えることが後回しになってしまっている人が多いのもまた事実です。まずは自分の資産状況を調べることをファーストステップにしてみてはいかがでしょうか?

 

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最終更新日:2018.08.29

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