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不動産投資を始めるのに資格は必要?|不動産投資基本の「キ」

2018.08.22

 不動産投資を始めるにあたり、絶対に取得しておかなければならない資格というものはありません。そうした意味では誰にでもチャンスがあると言えますが、堅実に進めていくには不動産の価値を見極める力や契約や税務に関する知識、不動産の管理や運営のノウハウなど、幅広い知識やスキルを身に付けておく必要があります。

 実際に、知識やスキルを効率的に身に付ける手段として、資格取得を目指す不動産投資家もいます。また、資格によっては保有しているとローン審査や契約時、有利に働く物もあることから、事前の資格取得こそが重要だという意見もあります。

 しかし、資格を取得することが本当に不動産投資成功への近道になるのでしょうか? 実情を見ていきましょう。

不動産投資に役立つ7資格

 不動産投資に関連する資格は、直接的なものだけでなく税務や経営などに関わるものまで含めると数十にもおよびます。その中でも、不動産投資の現場で役に立つことの多い資格は以下の7つです。

1)宅地建物取引士
 通称「宅建」と呼ばれる国家資格です。宅建は宅地建物取引業法や建築基準法、借地借家法など不動産に関連する法律はもちろん、その周辺の民法や税法まで学びます。取得しておけば、不動産投資におけるトラブルを未然に防止し、いざ問題が起こった際も適切に対処するための知識が得られる資格だと言えるでしょう。また、契約内容を適切に判断するための知識も得られるので、状況に応じて売主や不動産会社と交渉するなどの判断力や決断力を養うこともできます。

2)不動産実務検定
 かつて「大家検定」と呼ばれていた民間資格です。不動産投資に必要な法律、経営、管理、税務などについて学べます。合格率も1級は約5割、2級は約6割と高めのため、不動産投資初心者が基礎知識を身につけるための資格として有用です。

3)不動産鑑定士
 その不動産の価格が適正かどうかを判断するのに役立つ国家資格です。弁護士、公認会計士と並び「三大国家資格」に数えられる最難関資格の一つになります。不動産以外にも、民法や経済学、会計学などの知識も必要とされ、狭き門ですが取得できれば不動産の価値を見極めるプロとして独立することも可能です。

4)マンション管理士
 マンション管理組合の運営や維持管理、建物の構造などについての専門知識を持っていることを証明する国家資格です。特にマンション投資を自主管理で行う場合には、その知識が生かされる場面も多いでしょう。

5)管理業務主任者
 こちらも国家資格の一つ。資格勉強をすればマンションの委託契約や管理、設備、修繕などに関して専門的な知識を身に付けることができます。自主管理でマンション投資を行う際に生かせる資格です。

6)ホームインスペクター
 住宅診断のプロに与えられる民間資格です。住宅の欠陥や状況などを適切に判断することができるので、中古物件の購入判断に役立つでしょう。

7)ファイナンシャルプランニング技能士
 不動産や金融資産、税金、保険など、金融について幅広い知識を持つことを証明する国家資格で、一般的には「ファイナンシャルプランナー(FP)」として知られています。不動産そのものの見極めというより、いつ購入していつ売却するのか、どのくらいの利益が見込めるか、など事業計画の方向性を定めるのに有効です。

真面目な人ほど気を付けたい、資格取得の罠

 不動産投資に役立つ資格を紹介しましたが、一つ気を付けたいことがあります。それは「不動産投資を成功させる」という本来の目的を見失ってしまうことです。勉強して目的の資格を取得するのは素晴らしいことですが、資格取得自体が目的になり、不動産投資がおろそかになってしまっては本末転倒。行動を起こさなければ、いくら資格を持っていても「ペーパー不動産投資家」で終わってしまいます。真面目な人や学ぶことが好きな人ほどこのパターンに陥りやすい傾向にあります。

「資格を取ること」が目的になってしまわないよう注意

 加えて、資格試験の中には難易度の高いものも少なくありません。例えば宅地建物取引士や不動産鑑定士、マンション管理士の合格率は数%〜20%程度。合格には半年〜1年の勉強時間が必要とも言われています。資格取得を目指すあまり、本来、不動産投資そのものに使うべき時間やお金をかけては元も子もありません。

 特に、多忙なサラリーマン投資家にとって、時間は何より貴重なもの。やみくもに資格取得を目指す前に、日々本業の仕事をこなしながら勉強に避ける時間はどのくらい確保できるのか、一度計算してみましょう。その上で、本当にかける時間や労力分の元が取れる資格なのかどうか、よくよく考えてみましょう。

 大切なのは資格試験に合格することではなく、資格勉強で学んだ内容を不動産投資に役立てること。確かに、所持することで交渉の場で有利に働く可能性がある宅地建物取引士のような資格もあります。しかし、勉強して身に付けた知識を不動産投資の現場で生かせるのであれば、資格自体を取得できなくても問題はありません。

 何より、最も重要なのは経験です。どんなに多くの本を読んで知識を得ても、自ら行動して獲得した情報やノウハウには到底かないません。行動量に比例して、不動産投資に必要な判断力や交渉力などが磨かれ、人脈も築かれていきます。今回挙げたような資格を全て取得してから不動産投資を始めるよりも、物件を購入して先に経験を積んだ方が、自分に必要な資格や学ぶべきことが分かるものです。

実践で身に付く知識の方が有用な場面も。まずは行動しよう

 今の自分に足りない知識やスキルをあぶり出せたら、それらを持つ専門家、つまり不動産会社などのプロフェッショナルに直接、分からないことや必要な情報を尋ねてみるのも良いでしょう。自分で勉強するのも良いですが、信頼できるプロに頼れば資格取得にかかる時間やコストを削減しながら、スピーディーかつ着実に不動産投資を進めていくことができますよ。

 不動産投資を成功させる上で最も必要なのは「どんな資格を持っているか」よりも、どの教科書にも書かれていない“自らの経験”なのかもしれません。

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最終更新日:2018.08.22

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