再開発・インバウンドに沸く「次世代の国際都市」大阪府

2018.07.27

 近畿地方の中心部に位置し、面積は1,905.14平方キロメートルと、香川県に次いで47都道府県中2番目に小さい大阪府。南西部が大阪湾に面する地の利を生かして整備されてきた航路によって、古くから物資流通の要所として発展してきました。

 江戸時代には「天下の台所」と呼ばれるほどに栄えた大阪は、現在も関西国際空港や新大阪駅など、全国・全世界から多くの人や物が出入りする、西日本最大の経済都市です。面積は控えめながらも県庁所在地の大阪市、そして堺市という2つの政令指定都市を抱えており、東京都・神奈川県に次いで全国第3位となる883万9,469人の人口(2015年10月時点。総務省「平成27年国税調査 人口等基本集計結果」より)と、東京都に次いで2番目に高い人口密度を誇ります。

 また、2012年以降に大阪府で開設された事業所数が4万6,191事業所と、こちらも東京都に次いで全国第2位(総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査(確報)産業横断的集計 結果の概要」より)。野村総合研究所が発表した、国内100都市を対象とした成長可能性のランキングにおいても「総合ランキングでみた成長可能性の高い都市」にて、東京都特別区部福岡県福岡市・京都府京都市に続いて大阪府大阪市が第4位にランクインするなど、現在も将来性の高い都市として多くの注目を集めています。

 

 ただし、注目されているエリアとはいえ、住宅事情に目を向ければ場所によって明暗が分かれる側面も。府内でも、供給過多になってしまっている地域が存在するのです。現在この問題を解消しようと、官民一丸となって中古住宅流通・リフォーム市場の活性化や、環境整備を進める計画が打ち出されています。具体的には、子育て世代などを対象として、移住・定住を促すべく各市町村と府が様々な施策を行っている最中です。

 また、大阪府HPによれば平成25年時点で府内には約68万戸の空家が存在しており、これが問題視される向きもあります。不動の人気エリアだからこそ、大阪府での不動産投資を考える際は、本当に需要がある場所、利便性の高い駅や発展が見込める地域を慎重に見極めていく必要がありそうです。

活況が続く「住みたい街ランキング」上位地域

 リクルート住まいカンパニーが調査・集計した「住みたい街ランキング2018 関西版」内の「住みたい自治体ランキング」では、総合ランキング2位に大阪市北区、5位に大阪市中央区、6位が大阪府吹田市、7位に大阪市天王寺区、9位に大阪府豊中市と、10位までに大阪府の5自治体が選ばれました。

 さらに世代別に絞って見ると、20代のランキング2位が大阪市北区。4位に大阪市天王寺区、5位に吹田市、6位に大阪市中央区、7位に大阪市福島区、8位に大阪市都島区、10位に豊中市と、7つもの自治体がランクインしており、大阪府自体が特に若い世代から高く評価されていることが分かります。

 なお、この中でも都島区は特に顕著で、全体ランキングでは16位ながら、20代ランキングで8位。30代では18位、40代で26位と、20代からの支持が圧倒的という結果になりました。大阪府の中でも、特に都島区は若者の賃貸需要が高い地域だと言えそうです。また、世代別ランキングにおいていずれも府内トップの支持を集める大阪市北区では、大阪の中心地のひとつである梅田駅の北側を対象とした再開発プロジェクト「うめきたプロジェクト」が進められています。先行開発は既に完了し、梅田駅の隣にある大阪駅北西側を再開発する2期区域の計画が進行中。開発方針が2018年7月12日に決定しました。

 人口増加率にも着目してみましょう。2015年の国勢調査によれば、近畿2府4県にある人口10万人以上の市町村を対象に10年調査比の伸び率を比較すると、1位は5.3%の吹田市でした。さらに、3位には大阪府箕面市、4位に大阪府茨木市と、互いに隣接する3市が居住エリアとして人気を集めていることが分かります。この3市は大阪市の北部に位置する好立地から、大阪市内への通勤・通学を目的とした世帯の転入が活発になっています。

吹田市・箕面市・茨木市、豊中市は高級住宅地としても人気の「北摂」地域に属する

 特に1位の吹田市では、豊中市にまたがる「千里ニュータウン」の再開発で住民が増加。今後も施設の建替えなどが続く予定です。3位になった箕面市でも、2020年に北大阪急行線千里中央駅から延伸する新駅が2駅完成予定。駅前に大阪大学のキャンパスが移転する計画があり、新たな街づくりが進められています。4位の茨木市でも、JR茨木駅と阪急茨木市駅、双方の駅前の再開発が計画されており、3市とも今後さらなる転入の加速が見込まれます。他エリア住民からの人気や人口増加率の上昇を踏まえると、大阪市北部とその近隣市の人気の高さが伺えます。

外国人旅行者数1,000万人以上! 高まるインバウンド需要

 2017年、大阪府を訪れた外国人旅行者は約1,100万人で、統計開始後初めて1,000万人を上回りました。これは合計約2,870万人の訪日外国人旅行者のうち、3人に1人が大阪を訪れたことになります。大阪観光局の発表によれば消費額も1兆円を超えており、インバウンドの拡大を狙う政府の方針もあって、今後の推移に大きな期待がかかります。大阪府としても、外国人旅行者のリピーターを増やすべく、公衆Wi-Fiのアクセスポイントの拡充や、外国人向け医療機関を案内するコールセンターの設置など、旅行者が滞在時に満足感を覚えるような都市づくりを目指し、様々な取り組みを行なっています。

 実際、米MasterCardが2017年9月26日に発表した海外旅行の行き先都市についての調査結果によると、大阪の外国人訪問者数は2009~2016年の間で24.0%増加しています。これは世界132都市中1位の増加率で、大阪府が世界的に見ても成長著しい都市であることの裏付けにもなるでしょう。また同調査によれば、大阪を訪れる外国人旅行者のうち40%以上の人々が、旅行中は買い物に最も多くのお金を費やしています。この点から見ても、インバウンド需要はショッピング・観光目的と考えられます。そのため、外国人をターゲットとした小売店やサービス業は今後さらに増加・発展していくでしょう。

 加えて今、大阪府は2025年の万博開催を目指して誘致活動を行なっている真っ最中。今年11月には開催地決定投票を控えているため、国内外へ向けてのアピールにも熱が入ります。誘致が成功すれば、外国人訪問者数増加の後押しとなることは間違いありません。さらに今後も増え続けるインバウンドなどを考慮し、関西国際空港と新大阪駅のアクセス向上を図るため、建設中の「北梅田駅」と難波付近を結ぶ「なにわ筋線」の計画も発表されています。

 大阪市の北部に位置する市では、再開発で住環境が向上。利便性やアクセスの良さを求めて子育て世代をはじめとした若い世代が流入し、かつてのベッドタウンが再び盛り上がってきています。都市部でも、年々増加していく外国人旅行者と、その需要を求める動きから次々に新規事業が立ち上がり、にぎわいを見せています。

 西日本の“顔”であり国内屈指の大都市は、絶え間ない再開発やインフラ整備を経て、国際都市へと変貌を遂げています。国境を越えてさまざまな人が集まり発展していく街は、今後さらなる不動産需要の拡大が期待されます。

 先に挙げた通り、大阪府内ならどこにでも賃貸需要があるわけではありません。むしろ、世界中から注目される都市であるからこそ、エリア精査はより慎重に行なう必要があります。とはいえ、既に供給が飽和しているエリアを避け、安定した需要のある地域を選ぶことができれば、ハイリターンを得られる可能性は高いでしょう。大阪での土地選定や確保は、確かな目を持つ専門家に相談するのも一考かもしれませんね。

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最終更新日:2018.07.27

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