
所有からシェアへ。新時代の賢い住宅の買い方とは?
日本ではこれまで、30〜40代で「持ち家を買う」ことを目指すのが当たり前のように思われてきました。事実、国土交通省「平成29年度 住宅市場動向調査報告書」によると、新築注文住宅を購入した世帯主の平均年齢は41.0歳、分譲マンションでは44.1歳となっています。ですが、果たしてこれからの時代もその認識が正しいと言い切れるのでしょうか?
例えば、41歳で30年の住宅ローンを組めば、支払いが終わるのは71歳です。定年が65歳に延びるとはいえ、70歳を過ぎてもローンが残っているのはやはり不安でしょう。そこで知っておきたいのが、時代にマッチした住宅の買い方です。
今のうちにアップデートしておきたい、持ち家に対する新たな考え方とは一体どのようなものでしょうか? 「住宅宿泊事業法(民泊新法)」や総務省「平成29年版 情報通信白書」から社会の変化を探り、新時代の賢い住宅の買い方について考えてみましょう。
マイホーム、普通に買えばただの負債! 資産にする方法は?
日本人に長らく定着しているのが、「マイホームは資産」というイメージです。確かにマイホームを買えば、住宅やその土地の所有者として登記され、ローンの支払いが終われば完全に所有物として扱うことができます。
しかし、このローンがくせ者です。日本の住宅ローンは世界的にもトップクラスの低金利で住宅を取得できる素晴らしいシステムですが、実態は借金であることに変わりありません。しかもローンを返済している間も、固定資産税や光熱費、駐車場代、マンションであれば管理費や修繕積立金等のコストがかかり続けるのがマイホームです。
ここで改めて、資産・負債とは何かについて考えてみましょう。かつて日本のビジネスパーソンに衝撃を与え、世界的にもベストセラーとなった、ロバート・キヨサキ氏の著作『金持ち父さん 貧乏父さん』の中では、次のように語られています。
資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく
著:ロバート キヨサキ、訳:白根 美保子『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』筑摩書房(2013年)80頁より
つまり、お金を生み出すものが資産で、お金を奪っていくものが負債、という考え方です。この定義に基づいた時、マイホームは資産と言えるのでしょうか? 少なくとも、ローンの返済中はお金を生み出すことは無いため、負債と言わざるを得ませんよね。

ただし、普通に買えば負債になってしまうはずの「家」を資産に変える方法もあります。それは、投資用物件としてアパートを買うことです。たとえローンを使って購入したとしても、自分や家族が住むためだけのマイホームと違い、アパートを建てて貸し出せば賃料を得られますし、何よりお金を生み出す「資産」とすることができます。
ライフスタイルの変化に対応しやすいスマートな生き方とは?
マイホームを持たずにアパート(投資用物件)を買うというのは、これまでの常識からすると違和感を覚えるかもしれませんが、社会は確実に移り変わっています。シェアリングエコノミーの流行もその一つです。
シェアリングエコノミーとは、自分の資産やスキル等を他人に提供する人と、受けたい人とを直接結びつけることを言い、提供側は対価を受け取ることができます。世界的にシェアリングエコノミーが注目されるきっかけとなったのは、2008年にアメリカで立ち上げられた「Airbnb(エアビーアンドビー)」という、いわゆる「民泊」用の物件情報サイトです。Airbnbは今や世界191ヶ国でサービスを展開するまでに成長しており(2018年7月11日現在)、それを受けて日本国内でも2018年6月15日には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されるなど、Airbnbの影響力は計り知れません。
私たちの生活の中にもシェアリングエコノミーが浸透しつつある中、総務省「平成29年版 情報通信白書」では、国内のシェアリングエコノミー市場は2020年度に600億円規模まで伸びると予測されています。2015年度の約285億円から、わずか5年で2倍以上の伸びです。
実際に現在、シェアリングエコノミーは民泊だけでなくカーシェア、駐車場シェア、ホームシェアなど様々な分野で広がっています。さらに、不要になった物品を個人間で取引する「メルカリ」などのフリマアプリや、物品だけでなく家庭教師やベビーシッターなど自分のスキルや時間を提供して対価を得るサービスも話題です。これらも広義ではシェアリングエコノミーと定義されることも考慮すると、5年で2倍の成長は決して非現実的ではないでしょう。

このように今、タイミングに応じて自分の所有物を他人に貸し出したり、借り受けたりするという新たな消費行動が広がっています。所有物を最小限にすることで無駄を省いてフットワークを軽くし、必要なものはその都度借りる・調達するというのは、変化のスピードが速い現代をスマートに生き抜くための工夫とも言えるのではないでしょうか。
住宅も同じです。アパートを購入して他人に貸し出し、自分は賃貸に暮らすことで家賃収入を得る。こうした暮らし方なら、家族構成やライフスタイルの変化、転職や転勤など人生のターニングポイントにも柔軟に対応することができます。もちろんマイホームを持つことも素晴らしいことですが、その場合はあらかじめ、何のためにマイホームを持ちたいのか、どのような未来を手に入れるためのマイホームなのかを明確にしておく必要があります。そうでなければマイホームを持つことだけがゴールになってしまい、ローンの返済状況や家庭環境に変化が生じた際に対応できず、将来、苦しむことになるかもしれません。もし、住宅購入の目的が安心や幸せのためならば、シェアリングエコノミーの視点からアパートを購入するという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか?